第168話
次はなんだ?
社会保険でも作るか?
「次は孤児院についてなのですが」
孤児院?
「夫婦で探索者というのがそれなりの数がいるのですが……なにぶん命の危険が伴う仕事です、両親が共に帰らなかったり、帰って来ても怪我の為に働けなくなったりといったことが少なからずあるのです」
なるほどね。
それに伴って身寄りのない子ども達が出てくるってことか。
だが、それこそ協会が運営してるんじゃないのか?
「協会が運営していたりはしないのですか?」
「協会が運営しているものがあるにはあるのですが、正直あまりよい環境ではありません。毎日の食事が十分に行き渡らないこともありますし、健康状態もお世辞にも良いとはいえません。孤児院を出た後の進路等もほとんど無い状況でして」
あまり良い環境ではなさそうだな。
子どもに金をかけるのは、俺個人としては有りだと思うんだがな。
というか孤児院もいいんだが、保育所みたいなところはあるのかね?
「すいません、ザーバレナさん教えていただきたいのですが。両親が探索者の子どもを両親が仕事で不在の間、一時的に預かるような施設はあるのでしょうか?」
「そういったものは協会では運営していませんでしたね」
「では両親が仕事の際に、子ども達はどうしていたのですか?」
「お金のある探索者であれば、ある程度大きくなるまでどちらかが休むことで対応したり、誰か人を雇ってみてもらっていたようです」
「お金のあまり無い探索者は?」
「複数でお金を出しあって人を雇い、宿の一室等を借りてみてもらっていたようです」
なるほどね。
複数人で出資して一時的な保育所みたいなことはしていたのか。
てことは一定金額の負担が発生しても保育所の需要は有りそうだな。
「ザーバレナさん、孤児院と一緒に両親が仕事で不在の時に子どもを預かる事業も一緒にやりましょう」
「子どもを預かる事業?」
「はい、今のザーバレナさんのお話を聞く限り、探索者の方々は子どもを預けるためにお金を出すことに抵抗はないようですし、それならばこちらで運営してしまっても良いのかと」
「なるほど、確かに部屋を借りたり人を雇う金額を考えると、それよりも低い金額に設定してしまえば、利用する者達はいそうですね」
「孤児院の収入源にもなりうるかと思います。後はあまり良いことではないのですが、普段から孤児院に通っていれば、いざ両親がなくなられた際にも、施設にも職員にも慣れていればその後の生活も多少なりともしやすくなるかと」
「そうですね……」
あとは……
そうだな、子どもといえば急な病気だな。
となると子ども専用の医療機関も併設したいところだな。
「ザーバレナさん、治療施設も作ってしまいましょうか」
「治療施設?」
「ええ、それも子ども向けの治療施設です」
「なぜ子ども向けなのですか?」
「一つは併設している施設の性格上ですね。子どもを預かる施設なのですから、もしもの時にそれに対応できる施設があるというのは、預ける側も安心できるはずです」
「なるほど」
「そして二つ目。子ども向けにすることで、大人からの被害を防ぐことができるかなと」
「どういう意味でしょうか?」
「例えば、大人だと軽い症状の病気があったとします。ですがその病気は子どもにも感染する上、子どもがかかると重症化する病気でしたというようなことを防ぐ為です。後は色々と見苦しい大人を近付けないためですかね」
「確かに」
どちらも否定されないか。
こっちの世界でも同じようなことがあるんだろうな。
「ただ村長殿。素晴らしいお話なのですが、そこまで施設を充実させるとなると費用の面が……」
「ああ、この孤児院関係についての費用面は気にしないで下さい」
「は?」
「孤児院関係の費用は私の方で別枠で用意しますので」
「それは嬉しいお話ですが、なぜそこまで?」
「簡単ですよ。子どもへの投資は、この村の発展につながる未来への投資だからですよ。村の発展に必要な作業の知識を持たせることで、将来の優秀な働き手を確保できるのですから」
「なるほど。確かに必要な教育を施すことで、必要な職種に適正のある子どもを早期に見つけるというのは利にかなうものではありますね」
本音を言えば子どものうちくらいは、食う寝る遊ぶに心配なんぞしてほしくないってだけなんだけどな。
その上で子ども達が何を選ぶかなんざ好きにすりゃいいさ。
ただ選ぶ所くらいまでは力を貸したって問題ないだろ。
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