第153話

 今度は農場か。

 案内する度に厄介事が増えてるんだよな。

 ここは大丈夫か?


「ヒダリさま、あの、ダグフェルンが土を耕しているのですが」


「ダグフェルン?」


 誰か知り合いでもいたか?


「あそこにいる二頭の魔獣です」


 ああ、ポヨスケとポヨミのことか。

 あいつらダグフェルンていうのか。


「彼らはダグフェルンという名前だったんですね」


「知らなかったんですか?」


「ええ、この村のに向かう道中で仲間になりまして。力仕事など農場の仕事を手伝ってくれてますよ」


「あの……ダグフェルンがどれ程の魔獣かご存じですか?」


 どれ程といわれてもな。

 さっぱりわからん。

 とりあえず、妻達に忖度できる賢い連中なのは知ってるがな。


「飛竜と同じくらいに危険な魔獣ですよ。並みの魔動機兵が3~4機で対応するくらいの強さです」


 えーと、急にそんな事言われてもな。

 それよりも危ない連中だらけだよ、この村。

 初対面から普通に話してるけど、ジジのほうがよっぽど危ないからな。


「なるほど。ですが彼らは特に危険な事もなく、村の者達と仲良くやっているので特に問題もないですよ」


「ダグフェルンがおとなしくしていると?」


「ええ、むしろ暴走する村の住人を押さえてくれる側ですね」


 さりげなくキョウの料理をダメにしてみたり。

 熱中し過ぎているケイトの邪魔をしてみたり。

 ふらふらしてる爺さん(クリオネ)を捕まえてきたり。

 あいつらこの村の数少ないストッパーだからな。


「ほら、今も」


 パポールとケイトがなにか言い合いをはじめたところに、ポヨスケ、ポヨミが間に入り引き離してそれぞれを落ち着かせている。


「し、信じられない……」


「良くある風景ですよ」


「帰らずの森で最も危険な魔獣の一種と言われるダグフェルンが農作業に喧嘩の仲裁」


 しかし、あの二頭にこだわるね。

 危険度でいったらクリスやジジのほうがよっぽどだろ。

 ポヨスケ、ポヨミは身近な脅威だからか?


「そんなに心配されなくても大丈夫ですよ。もしもの時に動ける存在がこの村には多数おりますので」


「そう……でしたね。竜や飛竜を簡単に退治できる方が何人もいらっしゃるんですよね」


 その何人もに含まれる奴等の方がよっぽど危ないからな。

 なんでも消し炭にするやつとか、世界を崩壊寸前まで追い込んだ奴等とか。


「改めて思うのですが凄い村ですね」


 ある意味凄い村ではあるよな。

 この世界に凄い迷惑をかけた奴が集まってるからな。

 まあ、それでもな。


「凄いと言われるとあまり実感はありませんが、騒がしくも楽しい場所にはなってるとは思っていますよ」


 って感じなんだよな。

 俺としては。

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