第141話

 大激戦だった。

 あれだな、ジジ凄いな。

 天真爛漫に挑んで来るからな。

 みんながそれに触発されるし。


「おはようございます、村長」


「おはようございます、ニノンさん」


 ジジも若干見た目が幼いがニノンさんはその上を行くよな。

 やっぱりサベロー、アウトだな。

 まあ、ジジもニノンさんも見た目に反して年齢は三桁なんだけどな。


「この土地にはなれましたか?」


「おかげさまで。夫や娘と楽しく生活させていただいています」


「それは良かった。なにか困ったことがあれば遠慮なく教えて下さい」


「ではお言葉に甘えさせてもらって」


 なんというか見た目に反して中身はしっかり者というかな抜け目がないというか、結構な曲者なんだよな。

 たぶんサベローじゃ相手にならんだろうな……。

 そういう意味じゃ年齢差どうりの姉さん女房って感じなんだよな。


「なにか?」


 っと、まずいまずい。


「いえ、それでなにかご要望が?」


「はい、申し訳ないのですが、できれば糸や毛糸を栽培したいなと」


 ……。

 糸や毛糸って栽培するもんなのか。

 まあ、綿とかは植物だったし一緒っちゃ一緒なのか。


「ニノンさん、私はその糸や毛糸に関して知識がないので、今すぐに返事返事ができません」


「そうですか」


 おおう、えらい落ち込みようだな。

 ……なんだこれ、とてつもない罪悪感が。


「ああ、認めないとか検討しないというわけではなくですね、とりあえずわかるものに相談してみますので。前向きにとらえていると思ってもらって結構ですよ」


「本当ですか!」


 うん、あれだな。

 この嬉しそうな顔は卑怯だな。

 これにあの曲者な性格か。

 サベロー、手も足も出ないんじゃないのか?


「村長、よろしくお願いいたしますね」


「わかりました、これから丁度商人のところへ行くので今の話もしてみますよ」


「ありがとうございます!」


 うーむ、パポール達ポタ族とはまた違う方向の可愛さだな。


「そろそらこの辺で失礼させていただきます。サベローシラさんやナノンさんにもよろしくお伝えください」


「はい、村長もお仕事頑張ってくださいね」


「ありがとうございます、それでは」


 なんか色々頑張れよサベロー。



 エチゴラさんの屋敷に来たのはいいが、誰もいないか。

 前半分の壁がほとんどない屋敷だしな、ここで寝泊まりは難しいよな。

 エチゴラさん申し訳ない、屋敷の壁は必ず弁償します。


 ?

 誰かいるな。

 ナセルリナさんともう一人は誰だ?


「お前が美人だって? 冗談にも程があるだろ。はっ、そんなお世辞を真に受けるなんてな」


 うーむ、ナセルリナさんは十分美人だぞ。

 というかあの男はなにもんだ?


「お世辞じゃなきゃ、頭と目がおかしいんじゃねぇのか?」


 うるせーよ。

 人の好みに文句つけんじゃねーよ。


「お前みたいな男みたいな格好の大女、美人なわけねーだろ!」


「う、うん。ごめんねドラヤナン」


 ……。

 この男、子どもかよ。


「言葉で貶め縛り付けて、振り向かせようとするのはどうかと思いますよ」


「誰だ!?」


「ヒダリさま?」


 ただの痴話喧嘩ならほっといたんだけどな。

 親しき仲にも礼儀ありだろ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る