第134話 エチゴラ衝撃の一日 その4
「エチゴラさん、大丈夫ですか?」
「え、ええ、な、んと……か」
海越えも山越えも一瞬でしたね。
本当に一瞬でした……。
私の中の移動という概念が、ひっくり返ってしまいそうですね。
「あそこに見えているのが協会本部でしょうか?」
「そうですね」
というかなぜ私は空の上で止まっているのでしょうか?
浮いている感じは一切ないのですが。
まるで空中に立っているような感じですね。
まあ、私は今首から上しかありませんので、感覚がおかしいだけなのかもしれませんが。
「ちなみに、あの街全てが協会本部になります」
「なるほど。ではあの街の責任者はどなたでしょうか?」
「運営は理事会による合意のもと、行われていると聞いています。現場に関しては、統括本部長のザーバレナ様という方が取り仕切っているそうです」
「その理事の方々と統括本部長にはどこに?」
「申し訳ありません、私もこの街は二〜三回取引で来たことがあるだけで。上層部の方々にお目にかかる機会はありませんでした」
「わかりました。では正面から行きましょう」
「止まれ!」
比喩でもなんでもなく、本当に正面から向かわれるのですね。
「止まれと言っている!」
「あなたがこの街の責任者でしょうか?」
ヒダリ様、流石にそれはないと思いますが……。
最高責任者が門番という場所はあまりないのでは?
「貴様何を言っている!」
「違うのであれば、この街の責任者の元へ案内していただけませんか?」
「そんな事できる訳がないだろ!」
「では、あなたがここに呼んできていただけるのですか?」
「貴様は一体何を言っているのだ?」
まあ、そうですよね。
何を言っているのかわからないですよね。
私も混乱していますし。
「しかもその手に抱えているものはなっ、ひ、人の頭だと!?」
驚きますよね、普通。
私もたぶん同じ状況なら驚いています。
「どうも、おさわがせしております」
「は、話すだと!? 生きているのか?」
「特に問題なく。門番様、難しいかと思いますが、私のことはお気になさらないでください」
「な、なんなのだ貴様ら。この街に何の用だ!」
「失礼、ご挨拶が遅れました。私はガンドラル村の村長、サシチ・ヒダリと申します。本日はこちらの協会支部の横暴を訴えに参りました」
目の色が変わりましたね。
ですがその選択は最悪でございます。
「門番様、今すぐ武器を引いてください」
「黙れ! この不届き者が!」
不届き者ですか。
まあ、いきなり責任者をだせ、ですからね。
その判断も間違いではないのでしょうが。
「何がガンドラル村だ。そんな聞いたことも無いような村の村長だと? 貴様のような怪しい、ぼべっ」
ヒダリ様相手の時には致命傷になりますよ。
あなただけではなく、この街全体のですがね……。
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