第128話 とある戦士の謀
7万ラル……。
そんな大金今すぐ用意できる訳がないだろう。
あの守銭奴のオヤジめ。
それにあの一緒にいた男だ。
これ見よがしにあんな大金を。
20万ラルだぞ、20万ラル。
「戻ったぞ」
「フィーラリア様、支部長がお呼びです。至急、執務室に来るようにとのことです」
なにかトラブルか？
くそ、今日は面倒事が続くな。
「ラオケ支部長」
「フィーラリアか。入れ」
「失礼します。ラオケ支部長、至急とのことですがなにかありましたか？」
「こいつを見てみろ」
書類？
「な！？」
なんだこれは！？
損害賠償として10万ラルだと？
「あの守銭奴オヤジが協会に払えとよ。フィーラリア、お前何をした？」
あのオヤジ！！
私に大金を請求しながら、協会にも！
「フィーラリア、これはどういうことだと聞いている」
「工場街にて魔獣を発見、討伐しようと試みましたが返り討ちにあいました。その際にネルバ商会の倉庫を倒壊させました」
「なるほどな。ガウンティの街中での武力行使は、国から許可を受けた協会としての行動だからな」
「それは」
「協会の魔獣部門の一員としての行動なのだから、所属する協会が賠償する案件で間違っちゃいない」
「ですが！ 奴はその魔獣と魔獣の飼い主と商談していたのですよ」
「どういうことだ？」
「言葉のままです。その魔獣は言葉を理解し会話が可能で、その魔獣と飼い主と思われる男とネルバ商会の会頭は談笑しなが商談をしていたのです」
「ふむ、ちなみにその飼い主の方には請求していなかったのか？」
「3万ラルの請求を出していました」
「そいつはどうしてた？」
「20万ラルをその場で支払っていました」
「20万だと！？ それをその場でか！」
「はい」
「ということはあの守銭奴の手元には20万の金があるということか。それにその支払った男もまだまだ持っていそうだな」
「ラオケ支部長？」
何を考えている？
「フィーラリア、その魔獣とやらはまだあの守銭奴と一緒にいるのか？」
「飼い主の男と一緒に立ち去りましたので、もしかするとまだ一緒かもしません」
「ふむ。状況によるが、もしあの守銭奴がその魔獣とやらと一緒にいるようなら、奴らを潰すぞ」
「潰す？」
「ああ、なんせ奴らは協会の対魔獣部門の戦士を、返り討ちにするほどの魔獣を匿っているんだ。そんなことが許される訳がなかろう？」
なるほど。
考えようによっては危険以外のなにものでもないな。
あの守銭奴オヤジを潰すための大義名分はあるということか。
「おっしゃる通りです」
「あの守銭奴には今までも何度か煮え湯を飲まされてるんだ、ここらできっちりやり返してやらんとな」
請求に関しても、守銭奴オヤジさえ消えてしまえばなんとでもなるしな。
それに、先ほどの20万にやつ自信やあの男の持っているものも含めれば、請求された金額をはるかに越える金が手に入るかもしれん。
「ですがあの魔獣の強さは本物です。どうされるつもりですか？」
「ならばこちらも本気で討伐に向かうまでだ」
「まさか」
「魔動機兵を出す」
「街中で、ですか？」
「協会本部には緊急事態という事で許可をとる。王国の方にもな」
魔動機兵まで出てきては、あの魔獣も一溜まりもあるまい。
宣言通り、ただでは済まなくなりそうだな。
「何を笑っている、フィーラリア」
「いえ、先刻私が奴らに宣言した通りになりそうでしたので」
「何はともあれ、奴らの状況を確認してからだがな」
「あの魔獣が一緒にいるとわかれば？」
「直ぐに動くさ、機会を逃す訳にはいかんからな」
今日は幸運な一日になりそうだ。
待っていろ、守銭奴オヤジに魔獣共。
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