第113話

「では、今度から私のことはキョウジュと呼んでください」


 博士はどこに行ったんだよ。


「私のことをハカセと呼ぶように」


 どっから出てきたんだよ、レトラントさん。


「教授に博士の説明をしていたところ、レトラント様も合流されまして」


「私がハカセを気に入ったからな、パーシーには遠慮してもらったのさ」


「ですので別の呼び方を提案させていただきました」


 いや、普通にパーシーさんで良くない?

 なんで別の呼び名も紹介しちゃったの?


「ということで」


 どういうこだよ?


「村長殿、私になにか御用があったのでは?」


 いや、ちょっと、え?

 教授と博士の話、おしまい?

 え、今度からそれで呼ぶの?


「どうした村長さん」


「いや、なんでもない。レトラントさん」


「村長さん、私はハカセだよ」


「村長殿私はキョウジュだ」


 ……。


「教授、演算装置のことで相談が」


「今度は村長殿が取り込まれてみますか?」


 やらないよ。

 何でそうなるんだよ。


「遠慮しますよ。その取り込むことへの質問なのですが」


「何でしょう?」


「教授達を取り込んだことで能力が拡張されていたのは速度の部分でしょうか?」


「速度と後は知識ですね。それがなにか?」


 知識はデータベースの充実のため抽出して、残りの部分は演算の為の燃料か?

 108号うまくやれば使えるか?


「教授、知識の部分は今は空っぽで構わない。速度の部分は別の手で目処が立つと言ったら108号は生体を取り込まなくても機能しますか?」


「若干の改良は必要かもしれませんが、機能はしますよ」


「次です。先ほどの知識の部分ですが取り込むのではなく、外から送られてくる情報を溜め込むということはできますか?」


「溜め込む? ふむ、可能だと思います。ですがそれだと溜め込まれた情報を知識として使うのは難しいかもしれませんね」


「というと?」


「取り込まれた知識。例えば水ですが、水を水と知っている人を取り込めば水を水と認識できます。ですが水というものの情報だけを蓄積したとして、その情報を水と意味付けできなければ水という知識として利用することができません」


「なるほど、であれば意味付けができる存在がいればどうですか?」

 

「それならば蓄積される情報に外部から意味付けできるようにすれば問題はないでしょう。ですが膨大な情報に対して、外部から一つずつ意味付けするにはあまりにも時間がかかります」


「時間に関しては視覚情報や音など優先的に意味付けするものを決めるのと、作業の場所を時間の流れが異なる場所にすることである程度解決できるかと」


「なるほど、面白いかもしれませんね。作業場所はガンドラル様のいた空間を利用すると言うことですね」


「そうです」


「村長殿、あの空間内の時間はどのくらいの早さですか?」


「だいたいこちらの100倍程度ですね」


「作業については誰に?」


「あそこの主にお願いしようかと」


「ガンドラル様に?」


 教授はやはり爺さんを知っている。

 ということはあの時代の生き残りか?


「多分、爺さんの方はなんとかなると思います」


「であれば、後は先ほどの話が108号で実現できるかですね」


「面白い、村長さんちなみに情報はどうやって集めるつもりだ?」


「昨日試作した魔法を使って集めようかと思っています」


「どんな魔法だ?」


 男が魔法を使うことに特に反応しないか。

 やはりこの二人はあの時代の生き残りか。


「こんな感じですね」


「式の隠蔽が巧すぎてさっぱりわからん。何とかできないか?」


 しかも魔法にも造詣があるか。


「これでどうですか?」


「ほう、見たことがない式だな。複雑過ぎるし、なにより属性が異なる私には再現できそうもない」


 博士は時空属性じゃないのか。


「私も属性は問題ありませんが、再現は無理ですね」


 教授は時空属性か。


「とにかくこれが情報を集める魔法だと思ってもらえれば」


「なんとなくは理解できるのですが、実際に見てみないことには」


「ならば実際にやってみるしかないだろう。なあ村長さん」


 百聞は一見にしかずだな。


「108号は使えますか?」


「問題ありません、生体を取り込むことを覚える前の状態になっていますし、危険もないと思います」


「ならば108号に情報を送る通路を構築しますので、108号に入り口を作ってもらえませんか?」


「わかりました、とりあえず108号の元に行きましょう」

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