第100話 とある見張りの願い事
「サベロー、あんたの国の場所を教えてくれ」
「この街の北方のはるか先だ」
「北方のはるか先か。大雑把過ぎてさっぱりわからん」
目の前に景色を小さくしたような絵が出てきた。
「なんだこれは?」
「地球のフィクションを元にした3Dマップだよ」
こいつは何を言っている?
「細かいことは気にするな。それよりあんたの街はどの方角だ?」
「ここだ、この絵が切れている辺りをさらに進んだ所にある」
「わかった、行くぞ」
行くぞと言われて気がついたら俺が指差した場所の景色が目の前に広がっていた。
「なんだこれは? おい、どういうことだ?」
「全部終わって落ち着いて気が向いたら教えてやるよ」
「おい、待て」
「待ってる時間も惜しいんだよ、どっちの方角だ」
「くそ、訳がわからん」
「いいから早く教えろ」
「そこの道に沿って進めばいいだけだ」
「わかった」
?
いきなり頭を抱えられた。
「おい、なんだこれ? どうなってる? 俺の体は何処にいった?」
「大丈夫だ。あんたの首から下は別空間にある」
「何が大丈夫なのかさっぱりわからん」
「話もできるし、手足も動くだろ。ごちゃごちゃ言うな、舌を噛むぞ」
確かに手足は動く。
だがこれを無事というのだろうか?
「気をしっかり持てよ、速度を上げる」
速度を上げる?
まて、まて、嫌な予感がする。
「ちょっと待ぶぁぁぁぁぁ」
「おい、サベロー。しっかりしろ」
「痛え!」
俺は気絶していたのか?
それにしてももう少し手加減しろよ。
頬が物凄く痛え。
「起きたか。あれがサベローの国か?」
「ああ、そうだ。というか俺の名前を勝手に略すな」
「サベローってなんか語呂がいいだろ。気にするなよ」
「本当に無茶苦茶な奴だな」
「馬鹿野郎! こんな程度で無茶苦茶なんて甘いんだよ。いいか世の中にはな、いきなり全てを消し炭にする奴とか、いきなり相手を粉々に吹き飛ばす奴とか、猫耳やウサギ耳の生えたごついおっさんとかもっと大変な奴が沢山いるんだよ」
「いや、いきなり人の名前を勝手に略して、さらにクビから上だけ残して持ち運ぶやつも十分その枠に入ってるだろ」
「サベロー、細かいことは気にするな」
「気にしろよ、細かくないんだよ」
「はあ、それであの大樹の裏側が目的地か?」
「話聞けよ。そうだよ、よくわかったな」
「あんたが言っていた守護ってやつが見えるからな」
「あれを目視できるのか」
こいつは何者なんだ?
「とりあえずあそこにいるんだな?」
「ああ」
「わかった」
は?
「おい、なにをうおうぁぁぁ」
目的地に一直線かよ!?
「守護はどうするつもりだ?」
「なんとかする」
は?
守護を一瞬で突破した!?
「お、いたいた。間に合ったみたいだ」
駄目だ、全く理解が追い付かない。
あの守護はこれまで一度たりとも侵入者を許したことはない。
それをいとも容易く突破するだと?
「サベロー、あんたの家族もまとめて取り戻すぞ」
もう訳がわからん!
なるようになれだ!
俺の常識の外側にいるこいつなら本当に出来るのかもしれん。
「妻と娘にもう一度会えるならなんでもかまわん。たのむぉぉぉぉぉ」
ケイト様の声が聞こえる。
ああ、そうだよな。
気丈に振る舞っていただけだよな。
俺たちくそったれのせいで、どれだけのものをあんた達に背負わせてきたか。
だがそれもこいつが終わらせてくれる。
俺の力じゃないところは申し訳ない。
だがこいつをここまで連れてきた。
だから多分もう大丈夫だ、ケイト様。
あんたの目の前に立ったのは、五賢老なんてショボくれた化け物じゃない。
正真正銘、俺たちの理解の及ばない化け物だ。
たのむぜケイト様を助けてくれ!
「おうよ、任せとけ」
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