第98話
「レイラさん、もし問題がなければ教えてほしいんだが」
「なんでしょうか?」
「タフィナスさんのことなんだが」
表情が固くなった。
あまり聞いて良い話ではなさそうだ。
「申し訳ありません。なにかがあるのはわかるのですが具体的に何がというところまでは」
?
なら今の表情は?
「レイラさん。申し訳ない、レイラさんの話を信じていないわけではないんだが、今の答えとレイラさんの表情がうまく結びつかない」
なんでちょっと嬉しそうな顔になるんだ?
「きちんと私を見てくれているのですね」
「当たり前だろ」
「当たり前ですか」
ちょっと持とうかレイラさん。
嬉しいのはわかった。
わかったからその妖艶な空気を引っ込めてくれ。
「1ラル」
カシュタンテ、どこから出てくるんだよ。
いつもとなんか動きが違うぞ。
なんでそんなに胸を押し付けるんだ。
「サシチ様〜、お話が。サシチ様?」
セフィ、そのタイミングはないだろ。
どっかに隠れて見てたのか?
そしてすぐに空気にのまれるなよ。
『サシチ』
「佐七さ〜ん」
はい、もう逃げ道なくなったぁ。
もうこうなったら、やることやってから話の続きだ!
夕飯の時間になってしまった。
「村長は三大欲求を満喫しまくってるな」
「うるさいよ」
やることやってると腹が減るんだよ。
「それでレイラさん、なにかあるんだろ?」
「そうですね。直接関係するかわかりませんが」
「それでかまわない」
「彼女にはヘレナという姉がいました」
いました……か。
「ヘレナも優秀な女性で、ケイトのように学生の身でありながら、デルバレバの講師も兼任していました。色々と研究等もしていて、端から見ても充実した学生生活を送っていました」
そういえばタフィナスさんから姉の話を聞いたことがないな。
「そんな彼女がある呼び出しがあったという事で、一度故郷に帰ることになりました」
故郷や家族の話も全く聞いたことがない。
「そしてヘレナはそのまま帰って来ませんでした」
「どういうことだ?」
「言葉の通りです、故郷に戻った彼女はここには戻らなかった。彼女の故郷からはもう戻る予定はないとの連絡だけがありました」
出入りが自由な学園とはいええらく一方的な通達だな。
しかも当人からではなくて、故郷からか。
「ただ当時進めていた調査や研究などはやりかけのまま置いてあって、本人は帰って来るつもりだったようなのです」
レイラさんの表情の原因はそこか。
「故郷で何らかの事態に巻き込まれたのではないかと」
「タフィナスさんは?」
「特に何も。それどころか彼女からヘレナの話をされたこともありません」
帰る気があったであろう女性が故郷から戻らず、その妹は戻ってこない姉についても一切触れないか。
そこまでいったら何かあるって言っているようなものだな。
「なるほどね」
お、動いた。
やはりあそこでこっちを見ていたのは、偶然じゃなかったか。
色々教えてくれる相手だと助かるんだがな。
「レイラさん、ありがとう。あとは詳しく知ってそうなやつに聞いてみるよ」
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