第95話

 地球の人たちの集落ねぇ。

 こっちの話は聞かずに、いざとなれば暴力。

 どう考えても怪しい団体だろ。


 普通に街でもつくってるならいいんだが。

 なんとなく駄目なやつな気がするわ。



「せんせーい」


 先生呼びはもう治らないんだろうな。

 別に嫌な訳じゃない。

 だが本物の先生が大勢いるところで呼ぶのは勘弁してくれ。

 視線が痛いんだよ。


「おう、久しぶりだな」


「領地候補の方はどうでしたか?」


「悪くない場所だったぞ。今は村作りに必要なものを集めてるところだ」


「苗や農具なんかですか?」


 最初に出てくるのが苗と農具か。

 そういえば天気や季節なんかの授業を持っていたよな。

 もしかするとタフィナスさんは当たりかもしれないな。


「それもあるが、あとは人材だな」


「人材ですか」


「ただでさえ領主ってものの知識が少ない上に、俺はこの世界そのものの知識も少ないからな。その辺を補助してもらえる人材が必要なんだよ」


 お、興味有りって顔だな。


「例えば農業とかだな」


「農業もですか!」


 食いついた。


「どんな農作物を育てるつもりなのですか?」


「そこも含めてだ。資金と土地と水は多分問題ないんだが、なにをどう植えればいいのか。何が必要なのか。本当にゼロからはじめるところなんだよ」


「場所は? 場所はどの辺たりですか?」


 ぐいぐいくるな。

 目が若干怖ええよ。

 地学か農学のどちらかと思ったがやはり農学だったか。


「領地のか? 何処になるんだろうな? 近くでもないがガウンティ王国という国がある所だ」


「ガウンティ王国、南方の海を越えた先。ここよりも温暖? いえ、でも季節の変わり目を観測してからでないと確実なことは……」


 当たりすぎたか?


「実験施設や観測施設等は?」


「必要なら作ればいいんじゃないか?」


「予算はどのくらいですか?」


「どのくらいだろうな? 他との兼ね合いがあるたろうからな。一億は難しいが一千万くらいか?」


「一千万!? 先生、村を作るんですよね?」


「少ないか?」


「いえ、十分過ぎます。予算も潤沢、土地も水もあってゼロからの開発……」


 食いついてる食いついてる。


「タフィナスさん、やってみるか?」


「いいんですか!?」


「レイラさんやナディとの面談を終えてからになるが、それでよければ」


「あ、あのやっぱりやめておきます。凄く魅力的なお話ですが私には無理そうです」


 ん?

 どうした?


「レイラさんはもちろんだが、ナディもそこまで怖くはないぞ」


 ビジュアル面でも性格面でも、もっとヤバイのは他にいるからな。


「いえ、あのお二方がどうかという事ではなくですね、私自身の問題です」


 問題ね。

 そういや以前も何かありそうな話ぶりだったな。

 雰囲気的に火急の問題でもなさそうだし、少し様子を見るか。


「わかった。しばらくはこの街に滞在している、もし気が変わったら声をかけてくれ」


「わかりました。先生、誘ってくれてありがとうございます」


 考え直してもう一度って雰囲気ではないな。

 反応を見るとかなり興味はあるようなんだが。


「それじゃあな」


「はい、それでは」


 隠してるつもりなのだろうが、そんな悲しそうな顔されるとなぁ。

 レイラさんに相談してみるか。

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