第82話

 あの、クリスさん。

 そろそろ許してあげても良いのでは?

 ほら、正座とかなれてないみたいだし。

 プルプルしてますが。


「お父様、お母様、こちらが私の旦那さま」


 え?

 このまま紹介されるの?


「サシチ・ヒダリと言います。アスクリスさんと婚姻を結ばさせていただきました。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」


 ご両親が正座でプルプル。

 妻がその前に仁王立。

 その横でご両親に結婚の挨拶。

 俺が思っていた結婚の挨拶の絵面と大分違う気がするんだが。


「認めん。こんな男認めんぞ」


 お、なんか結婚の挨拶っぽい。


「お父様、誰が膝をくずしていいと言いましたか」


「はい、すいません」


 やっぱりなんか違うよね。


「あなた、いい加減にしてください」


「はい、すいません」


 父親弱いなおい。

 神代竜って父親の方だよな?


「はじめまして、私はディラグラシア。色々と問題がある娘ですがよろしくお願いしますね」


 なんだろな。

 見た目もそうだか雰囲気もクリスに似てる気がするんだが。


「私達を一撃で気絶させるなんて。なかなか骨のある男性をみつけたわね、クリス」


「申し訳ありません」


 まさか結婚相手の両親を、初対面でぶん殴ることになるとは俺も思ってなかったよ。


「いえいえ、どちらかというと私達が原因ですから」


「完全にお父様とお母様が原因です」


 そうだな。

 もう少し穏やかなのがよかったな。

 いきなり怪獣大決戦だったからな。


「あなた、ご挨拶は」


「私は認めないからな!」


「あ・な・た?」


「ダルダロシュだ、宜しくたのむ」


 ふてくされて挨拶とか子どもか。


「旦那さま、両親がお騒がせして申し訳ありません」


「いや、被害も出てないし、そろそろ許してあげたらどうだ?」


 ディラグラシアさんもダルダロシュさんも限界ぽいし。


「はあ、旦那さまがそう言うなら。お父様、お母様もうよろしいですよ」


「あたた、ありがとうございます、サシチさん。まさかただ座るだけがこんなに辛いとは」


「私はまだ認めないからな!」


「お父様」


「ぎゃあああああああ、クリスやめてくれえ!」


 ああ、うん。

 正座で痺れた足をツンツンされるとキツいよね。


「お父様?」


「あだだだだ、わかった。認める、認めるから」


 なんだろな。

 ふつーのおっさんにしか見えん。

 神代竜ってなんかすごい竜じゃないのかよ。


「我が主、話は終わりましたか?」


「ルドか。ご苦労だったな」


「いえ、あの程度であれば特に苦労もありませんでしたよ」


「な、ルードウル・ル・シュタイン!?」


 あれ?

 知り合い?


「外に出て来ていたのか」


「あなたは相変わらずのようですね。もう少し冷静になることを覚えて下さい」


 昔のルドを知ってるみたいだな。

 てことは千年以上前からあの性格なのか?

 クリスといい、ダルダロシュさんといい竜族もポンコツだらけか。


「あなたも相変わらずのようだな」


「その声はダルダロシュ殿か?」


「ランガー・ボルガナフ。あなたもいるのか」


「拙者以外にもリシャルもレーブもいるぞ」


「なんと。ということは時空神も復活しているのか?」


 ダルダロシュさん、爺さん達とも知り合いか。


「いや、まだ封印されたままだ」


「では何故四人がここにいる」


「拙者達の仕える相手が変わったのだ」


事実は爺さんに騙されて、押し付けられんだけどな。


「お主の目の前に立っている方が、拙者達の今の御屋形様だ」


「な! どう言うことだ!?」


「どうもこうもない。前の御屋形様を今の御屋形様が倒した為、仕える相手が変わったというだけだ」

 

「まさか、嫌、疑う余地などないか」


「お父様?」


「サシチ・ヒダリ様」


 え?

 ダルダロシュさん?


「今までのご無礼、誠に申し訳ありません。あの破壊神を退けるお方だったとは」


 雰囲気が。


「願わくばそのお力を我が妻、我が娘、そして世界の破壊に向けないよう、お願いいたします」


 やっと結婚のご挨拶らしくなってきたかな?


「安心してください。あなたの娘さんを悲しませることは絶対にしないと誓いましょう」


「ありがとうございます。そして娘を宜しくお願いします」


「わかりました」


「旦那さま」


 あれ?

 クリスさん?

 なんか、目が潤んますよ。

 てか、両親の前でその表情はちょっと不味いかな?


「サシチ様」


 セフィいつの間に?


『サシチ』


 なんだこれ?

 なんでみんなこんなになってんの?


 人前だよ。

 自粛しようよ。


「お父様、お母様。旦那さまとちょっとお話があるので、一晩ほどお待ちいただけませんか?」


 は?

 一晩?


「あらあら」


 ちょ、え?


「行く、いますぐ」


 カシュタンテさん?


「ご主人さま、頑張ってね〜」

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