第79話

「女王? 私はここの司令官ですよ」


「司令官ですか……それにしては現場の緊張感が普通ではないような」


 なんで正体を隠したがるかね。

 身分隠して後で驚かすってか?

 印籠ばーん、刺青ばーん、お白州ばーん、みたいなことやりたいのかね?

 時代劇かよ。


「ここは最前線。緊張感があるのはいつものことですよ」


 正体隠したいならきちんとやれよ。

 そこの机に決定的証拠が転がってるんだよ。

 新聞? の紙面に写真と名前がでかでかと載ってるんだよ。


「な!」


 あ、気付いた。


「こ、これは」


 うん、まあ、恥ずかしいよね

 国のトップとしては無謀だが、側に誰も置いてなくて良かったな。

 多少の時間がかかってもいいから、早く立ち直って下さい。


「うむ」


 お、立ち直ったか。


「私はこのガウンティ王国の女王、ノーナ・ガウンティ」


 そこからかー。

 まあいいや。


「私はサシチ・ヒダリ。最近こちらの世界にきた地球の住人です」


「なるほど、ではあの変わった馬車のような乗り物はチキュウのものなのか?」


 ん?


「教えてくれ、あれはチキュウの乗り物なのか?」


「地球の乗り物を元に作ったものですね」


「なるほど。車輪に帯のようなものが巻かれているのは何故だ?」


 何故かといわれると俺もよくわからんな。

 というかこのノリはあれだ。

 深入りすると不味いやつだな。


「女王、申し訳ありません。私はあれについてあまり詳しく説明することができないのです」


「むむ、そうか。誰かほかに詳しい者がいるのか?」


 食い下がってくるなよ。


「いえ、一国の女王にお話するようなことではありませんので」


「ならば今の私はただのノーナだ」


 勘弁してくれ女王様。


「話が無理なら見るだけでもなんとかならないか?」


 混ぜるな危険……。


「中まで見せろなんて言わない。ちょっと外側を見せてもらうだけ、それだけならどうだ?」


 ……


「ちょっと見るだけだ。減るもんでもないだろ? な? な?」


 お前はどこの変態さんだよ。


「司令官失礼します」


 ナイスノック。

 危うく女王様ぶん殴るとこだったよ。


「何事だ! こちらは大切な交渉中だ、後にしろ」


 うるさいよ変態。

 仮にも女王様なんだろ。

 仕事優先しろよ。


「ですが……」


 なんかあったみたいだな。


「申し訳ない、ちょっと席を外させていただいても?」


「どうぞ、どうぞ」


 なんで恨めしそうな顔するんだよ。

 止めねーよ。

 部下が困ってんだろ?

 早く行ってやれよ。


「司令官」


「むむ」


 むむ、じゃねーよ。

 ホントに女王なのか?

 政務優先しろよ。

 国民に怒られるぞ。


「司令官」


「わかった今いく」


 やっと行ったか。


「なんだと!? それは本当か?」


 なんかトラブルか?

 お、戻ってきた。


「申し訳ない、かなり大きな問題が発生したようだ」


 そんな感じだな。

 さっきまでの変態の面影がまるっきりなくなってる。


「あなたの仲間にも危険が及ぶ可能性がある。一度戻られた方が良い」


「わかりました」


「こちらから呼びつけておいて申し訳ない、事は急を要するようなので」


「いえ、気にしないで下さい」


「仲間の元まで案内させよう」


「ありがとうございます」

 

 普段はこんな感じなのかね。

 これなら確かに女王様だ。


「問題が片付いたら先ほどの話、よろしく頼めないか?」

 

 ブレないねぇ。

 ある意味大物だわ。


「あれを作った者達に話を聞いてみます」


「感謝する」


 しかし、大問題か。


「いったい何が起きているんですか?」


「なんでも竜が暴れているそうだ」


 申し訳ない、トラブルの原因はうちの妻のようです。

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