第27話 巴の想い その2
「巴! ルル!」
目の前のロボットから何かが飛んできた。
網?
「パポール」
ボクたち三人はなんとか回避できたけど、ポタ族のみんなが網に囚われてしまった。
「パポール、みんな、今助ける」
前方のロボットに複数の矢が飛んでいく。
すぐに場所を移動して2射目を打ち込む。
そして3射目。
相手の注意がこちらに向いた。
今だ!
外れて地面に落ちた矢から闇が立ち上りロボットに絡み付いていく。
さすがのロボットも実体のある闇は初めてなようで、絡み付く闇相手にもがいている。
今のうちにパポール達を!
「パポール大じょう」
ぐっ。
横から!?
「
「巴さん、油断は大怪我のもとだから気を付けてねって何度も言ったじゃないか」
なっ、なんでこの人達が?
「君たちを探しに来たんだよ。急にいなくなるから心配したんだよ」
「ルルちゃん、急にいなくなるとか寂しいじゃん」
「心配させるなよ杏華。さあ帰ろう」
ルル!
杏華!
二人とも頭を押さえつけられ、地面に突っ伏している。
「心配かけたのは申し訳ない。けど、ボクたちはボクたちでやっていくからほっといてって書き置きしたでしょ!」
「そんな事なんで巴さん達で勝手に決めるんだよ!今まで仲良く一緒にやって来たじゃないか。何が気に入らないんだい?」
「全部デスよ。あなた達の嫌らしい視線モ。どさくさにまぎれてカラダに触れてこようとスルのも。自然を装って色々シヨウとしていたのをワタシたちが気づいていないとデモ」
「あのあからさまなプレゼントの押しつけもうんざり!しかも押し付けておいて嬉しいだろ喜べよって。見返り期待してるぞっていうあの顔。そして私達を勝手に自分のものだと思っているあの態度。全部気持ち悪かった」
まずい、まずい。
二人の言葉で三人の目の色が。
ルルも杏華もなんでそんな残酷な真実を。
「うるせえ!」
「静かにしてください」
「おいおい、その三人は無事につれ帰らなくてはならないんだ。あまり手荒に扱わないでくれよ」
ロボットがしゃべった。
「すみません。ちょっと我が儘が過ぎるので、軽いスキンシップですよ」
「ふん、それよりもポタ族のほうはどうなっている?」
「全て生け捕りに」
「狂竜アスクリスの目撃現場への派遣だなんてとんだ貧乏くじかと思ったが、あんたたちのお陰で美味しい仕事になったよ」
「いえいえ、こちらこそ。大切な仲間をつれ戻すことができました」
「アナタたちは一体ナンなのですカ!パポール達に何をするつもりデスカ!がっ」
ルルが再度顔を地面に打ち付けられた。
「うるせえな、彼女達はカシュタンテ王国の機兵隊。いわゆる軍隊ってやつだよ」
「なんでそんなところの軍隊が?」
「なんでも私達地球出身で、女神さまから力を授かった人達を集める学園があるそうで、そこに私達を案内してくれるそうですよ」
「詳しくは知らないけど、女神さまたちから神託があって、それにしたがってこの世界中で僕らのような地球人が集められているそうだよ」
「なら連れていくのはボクたちだけでいいじゃないか」
「ポタ族ってのは高く売れるのさ。王国でも国民でないのなら見つけて捕らえたところで何の問題もない、そしてあんたらはカシュタンテの国民ではないからね」
「そう、そこで僕がポタ族の情報を差し上げる代わりに君たちと対面するお手伝いをしてもらったということさ」
おかしい。
まるでボクたちのことを全て知っていたような口振り。
「なんでボクたちがポタ族と一緒にいるってしっているんだい?」
「僕にだって色々情報網はあるんだよ」
情報網?
「さておしゃべりはおしまい、あ、そうそう下手な抵抗はやめたほうがいいよ。あれだけいるんだ何人かのポタ族に何かあるかもしれないよ」
「ふん、さっさと済ませろよ。こちらもそれなりに危ない橋を渡っているんだ」
ああ、最低だ。
こういう人達だっていうのが透けて見えたから嫌だったんだ。
でもパポール達まで人質にとられたら……。
誰か助けてよ。
誰か、誰か。
会いたいよ左の字。
助けてよ左の字!
「左の字ー、助けてよー」
「おう、よんだか?」
ボクたちを押さえていた三人が吹き飛んでいった。
「久しぶりだな、なんとか間に合ったか」
大好きな背中だ。
大好きな声だ。
大好きな大好きな。
大好きな左の字だ。
あの日から10年以上も想い続けた人が立っている。
嬉しいはずなのな、視界がぼやけてうまく前が見えないや。
「悪いな遅くなった、あとは任せろ」
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