第19話 ルドの見たこれから

 

 私は今信じられない状況を目にしている。

 ガンドラルの戦力総出でも全く相手にならず、8柱の女神達ですら手も足もでないまま蹂躙され圧倒的な武力と魔力で世界を破壊し尽くし、創世の神でありながら最悪の邪神としてガンドラル最凶の災厄といわれる我が主。

 その主が地に倒れ伏している。


 たったの一撃で!


 しかもその相手は我が弟子、サシチ。

 まあ、本人には伝えていないのですが弟子といっても差し支えないでしょう。


 サシチは優秀でとんでもない弟子でした。

 まず最初の出会いからとんでもなかった。

 彼は私たちの住む屋敷に、門を破壊して入ってきたのです。

 あの時の衝撃は忘れられません。


 彼は看板が読めず、しょうがなく門を破壊したと。

 まあ、読めないしわからないからとりあえず壊す、というのは誉められる行為ではありません。

 ですが私とレーブが驚いたのはそこではありません。

 あの門を破壊したという事実に驚愕したのです。


 あの門はレーブが長い時間、本当に気が遠くなるほどの長い時間をかけて作り出した

 時空鉄でできていました。


 時空鉄というのは、空間と時間が固定されて物質になっているという言葉の説明では分かりにくい物質です。

 ようは空間と時間が固まっている、動かない状態。

 時間の流れない空間によってできていて、レーブがあのありえない力で数十年打ち続けやっと変形させられるほどの強度。それをなんの苦もなく破壊し侵入してきたのです。


 なんでも何らかのスキルのおかげだそうで、スキルの詳細は教えてもらえませんでしたがランガーやリシャルと戦闘しているうちに使えるようになったそうです。


 そして魔法の習得。

 これもすばらしかった。

 最初の一歩、初めて魔法を使うところまではたいそう苦労していましたが、一度魔法を使えるようになるとそこからは凄まじい速度で習得していき、今では私も知らない魔法まで使えるようです。


 これも彼のスキルが関わっているとサシチは言いますが、私はスキルだけではないと思っています。

 そう彼も私と同じように魔法に魅せられているのです!

 魔法は広く奥深く、調べれば調べるほど様々な発見があり、新しい世界を私たちに見せてくれます。

 そう魔法とは至高の存在なのです!


 おっと軽く脱線しているうちに、我が主、ガンドラルが虫の息になっています。

 我が主を拳3発であそこまで追い込むとは彼の強さはいかほどなのでしょうかね?


 お、主が枷をはずすようですね。

 そう、我が主は大きな枷をつけているのです。

 この空間の中で私たちに加齢がなく、どんな重症をおってももとに戻ります。


 死すらありません。

 たとえ死に至った場合でも1日もすれば元に戻ります。

 その上時間の流れは、外よりも遥かに早い。

 そんな状態を閉鎖されているとはいえ、これだけの広大な空間に展開するとなれば大量の魔力を常時使用します。


 その常時使用を止めて、我が主が全力を出さざるを得ないほどですか。

 ここまでの力を1生物として身に付けるとは。


 しかし、彼らの種族からそこまでの強さを持つ者がいるなんて話は女神達からも聞いたことがありません。

 突然変異ですかね?


 いや、もしかすると彼らの種族には時間が足りなかったのかもしれませんね。

 彼らの寿命は長くて100年程度。

 しかも身体能力のピーク時期はもっと短い。

 今のサシチのように300年近くの間、死と隣り合わせの極限状態で肉体的にも精神的にも鍛え続けられた生物は、いなかったのかもしれませんね。


 お、信じられませんね。

 我が主に拳が突き刺さっていますね。

 全力を出した我が主でも無理ですか。


 彼がガンドラルに放たれる。

 世界はどうなるんでしょうね?

 楽しみでしかたありません。


 そして彼こそがこれからの『世界最強』なんでしょう。

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