カーストルーム ~君のためなら僕は全生徒を敵に回す~
結城佑真
第1話 いつもの一日
1
僕は学校というものが嫌いだ。狭い箱の中に閉じこめられ、教員の指導に従い、団体行動をよぎなくされる。そんな学校のシステムが昔から気に食わなかった。自分から友達を作るタイプではなく、あの事件を起こしてから、クラスメイトも距離を置くようになった。
授業終了まであと数分、退屈しのぎにノートの隅に教員の似顔絵を描くが、自分の絵の才能のなさに落胆し、目と口を描いた段階でシャーペンを机に置いた。
待ち望んだチャイムが鳴り授業が終わると、今まで教員の声だけが響いていた空間が、一気にクラスメイトの甲高い声に満たされる。その声たちの中に僕の声は当然ない。
帰りのホームルームを終えると、僕はすぐさま教室の扉に手をかけ、スライド式のドアを開け教室を離れる。
上履きを自分の下駄箱にしまい、白を基調に黒のラインが入ったスニーカーを手に取ったところで誰かが僕に話しかけた。
「相変わらず教室出ていくスピードは学年トップだな、
笑顔で話しかける彼は、
「僕にかまってる時間なんてあるのか? 野球部の練習あるんだろ」
「そうつれないこと言うなよ。俺とお前の仲だろ」
大地とは幼稚園からの付き合いだ。幼稚園から高校までずっと同じ学校を通っている。これだけ付き合いが長いと、野球部の練習前の忙しい時間に話しかけた理由は容易に想像がつく。僕もこれから向かう場所がある。お互いのために早くことを済まそう。
僕はスクールバックのチャックを開け、文庫本を取り出す。
「お目当てはこれだろ?」文庫本を差し出す。
「さすが陽斗! わかってるな!」
渡した文庫本は、お互いが好きなミステリー作家の新作だ。僕と大地はミステリーを好んでいる。僕が発売当日に必ず購入することを大地は知っている。購入した日から読み終わるペースを計算して、今日話しかけたのだろう。
「じゃあ、貸したんだから学食一回おごれよ」
「おう、まかせとけ!」といつもの契約を交わし、大地は野球部の練習に向かった。僕も早く向かおう。待たせてしまってはいけない。履き慣れたスニーカーを履き、いつもの待ち合わせ場所へと向かう。
2
校門を出て東に向かい、5分ほど歩くとコンビニが見えてくる。待ち合わせ場所はいつもここだ。
時間を確認しようとスマホを開くと同時に、メールが届いた。メールの差出人は彼女からだった。僕はメールを開いた。
『ごめん! 先生に頼まれごと受けちゃって、今日は一緒に帰れない。ほんとごめんね!!』
衝撃のあまり、危うくスマホを落としかけた。学校生活で唯一の癒しがなくなり、気持ちがどんよりと沈み込む。僕は暗い気持ちのまま、『わかった』と返信し、僕は家路へと向かった。
彼女はまじめな性格で、生徒や教師から信頼を受けている。そのため、頼まれごとをされることはめずらしいことではなかった。
僕が嫌いな学校に来る理由は、彼女に合うためにほかならない。とても大切な存在だ。だからこそ、何時間だろうと待つべきだった。待って話を聞くべきだったのだ……
次の日、彼女は頭から血を流して倒れていた。
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