第16話 学園都市2




入店から1時間。

メイの目の前には幾重にも重ねられた料理の山。

幸い奥の方の席であるし、回転率も高い事から他の客に注目されてはいないが、かなりの量を平らげている。

成人男性の10倍は下らないだろう。

値段の方もこの店の平均価格からして、金貨3枚もあれば全然足りる。

それでも一般人はそんなに食べないが。




「お客様お帰りでーす!」



「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」




精算を終えたお姉さんの声に呼応して、店内から声が湧き上がる。

入店と同じ様に音を鳴らして外へ出た。


なんだか来る前よりも日差しを強く感じる。

相変わらずこの学園都市は賑やかだ。


メイの目的は宿探し。

なるべく試験会場からも近い方が良い。

万が一、遅刻ギリギリになっても困る。

そう思い、アンソロポジー魔術学園方面へ向かう。


近づくに連れ、学生の数が目に見えて多くなる。

時々注目されているのか、ヒソヒソと小声で喋りながらこちらを見てくる者もいた。


注目されたくはないとはいえ、メイは珍しい金髪碧眼であるし、ハンター被れの皮の鎧を装着中。

そして身長も140に届かない。

学生からしたら、異色にしか見えないだろう。

やれやれと呆れながらホルスターの中のペットを弄り歩いた。





到着したのは校門前。

そこに宿屋があった。


が、メイが見ているのはその向かい側。


『武器屋 フォリアム・アンクロウ』


現代社会ではアニメが好きだった。

しかし、ゲームも好きだ。

特に芽衣はFPSが好きだった。

少し年季の入った武器マニアなのである。

だからそれっぽい『拳銃』を使って居たが、それはもう棄ててしまった。

今やペットルームである。


使うとしたら、愛銃である『エスペランサー』しかない。

しかし、いちいち空間魔法を使っていたら注目の的であろう。

メイはホルスターを新調しようと考え、この店の扉を潜ったのだ。


店内は雑然としているが、それは多種多様の武器が織り成す雑然さであり、陳列棚は綺麗だ。


『拳銃』を始めとして、『長剣』『戦闘斧』『槌』『盾』『鉤爪』『弓矢』『ボウガン』等々の様々な武器が綺麗に鎮座している。


ゲーム好きにはたまらなかった。


勿論、防具も沢山陳列されている。

最安値の合金製から白金製まで、各種取り揃えられていた。

が、丈夫さならば白金よりも上がある。

ダイヤ、アダマンタイト、ミスリル、ヒヒイロカネ、オリハルコンだ。

この世界の5歳の知識でも習っている金属の種類。


恐らく白金までしかないのは量産出来る最高級の物質という事と、主に学生を対象としているからであろう。


そんな事はさておき、メイの目当てである装備品コーナーへと歩を進める。


「お、あったあった!」


拳銃のホルスター。

素人目にはどれも同じに見えるだろうが、こういう物に限って拘り始めると中々止まらないのだ。


『エスペランサー』は紺地に金の装飾銃である。

ホルスターの色もそれに合わせて決める。


「うーむむむむむむむ...。」


メイはかなり悩んでいた。

色合い、材質、貫通型か非貫通型か、ボタンで留めるかどうか、柄付きにするかどうか、グリップまで覆うタイプなのかどうか。


「よし、これに決めたっ!」


選んだホルスターは黒色。

グリップまで覆うタイプで非貫通型。

金色のボタンで蓋を留めるタイプであり、材質は牛皮だ。


早速宿に部屋を取って装着してみよう。

善は急げだ。

店主に金貨を1枚渡し、颯爽と退店した。


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