第16話 学園都市2
入店から1時間。
メイの目の前には幾重にも重ねられた料理の山。
幸い奥の方の席であるし、回転率も高い事から他の客に注目されてはいないが、かなりの量を平らげている。
成人男性の10倍は下らないだろう。
値段の方もこの店の平均価格からして、金貨3枚もあれば全然足りる。
それでも一般人はそんなに食べないが。
「お客様お帰りでーす!」
「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」
精算を終えたお姉さんの声に呼応して、店内から声が湧き上がる。
入店と同じ様に音を鳴らして外へ出た。
なんだか来る前よりも日差しを強く感じる。
相変わらずこの学園都市は賑やかだ。
メイの目的は宿探し。
なるべく試験会場からも近い方が良い。
万が一、遅刻ギリギリになっても困る。
そう思い、アンソロポジー魔術学園方面へ向かう。
近づくに連れ、学生の数が目に見えて多くなる。
時々注目されているのか、ヒソヒソと小声で喋りながらこちらを見てくる者もいた。
注目されたくはないとはいえ、メイは珍しい金髪碧眼であるし、ハンター被れの皮の鎧を装着中。
そして身長も140に届かない。
学生からしたら、異色にしか見えないだろう。
やれやれと呆れながらホルスターの中のペットを弄り歩いた。
*
到着したのは校門前。
そこに宿屋があった。
が、メイが見ているのはその向かい側。
『武器屋 フォリアム・アンクロウ』
現代社会ではアニメが好きだった。
しかし、ゲームも好きだ。
特に芽衣はFPSが好きだった。
少し年季の入った武器マニアなのである。
だからそれっぽい『拳銃』を使って居たが、それはもう棄ててしまった。
今やペットルームである。
使うとしたら、愛銃である『エスペランサー』しかない。
しかし、いちいち空間魔法を使っていたら注目の的であろう。
メイはホルスターを新調しようと考え、この店の扉を潜ったのだ。
店内は雑然としているが、それは多種多様の武器が織り成す雑然さであり、陳列棚は綺麗だ。
『拳銃』を始めとして、『長剣』『戦闘斧』『槌』『盾』『鉤爪』『弓矢』『ボウガン』等々の様々な武器が綺麗に鎮座している。
ゲーム好きにはたまらなかった。
勿論、防具も沢山陳列されている。
最安値の合金製から白金製まで、各種取り揃えられていた。
が、丈夫さならば白金よりも上がある。
ダイヤ、アダマンタイト、ミスリル、ヒヒイロカネ、オリハルコンだ。
この世界の5歳の知識でも習っている金属の種類。
恐らく白金までしかないのは量産出来る最高級の物質という事と、主に学生を対象としているからであろう。
そんな事はさておき、メイの目当てである装備品コーナーへと歩を進める。
「お、あったあった!」
拳銃のホルスター。
素人目にはどれも同じに見えるだろうが、こういう物に限って拘り始めると中々止まらないのだ。
『エスペランサー』は紺地に金の装飾銃である。
ホルスターの色もそれに合わせて決める。
「うーむむむむむむむ...。」
メイはかなり悩んでいた。
色合い、材質、貫通型か非貫通型か、ボタンで留めるかどうか、柄付きにするかどうか、グリップまで覆うタイプなのかどうか。
「よし、これに決めたっ!」
選んだホルスターは黒色。
グリップまで覆うタイプで非貫通型。
金色のボタンで蓋を留めるタイプであり、材質は牛皮だ。
早速宿に部屋を取って装着してみよう。
善は急げだ。
店主に金貨を1枚渡し、颯爽と退店した。
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