日々売る二人
淡々
イントロ
深呼吸をすることすらノイズなんじゃないかと、マイクの前に立つたびに考える。ステージを照らす光がこれから吐き出す予定の酸素まで熱しているみたいで、脳まで血液がうまく回ってくれない。それなのに、今頃客席にいる恋人はキラキラした目でこっちを見てくれていると思うと、自分でも驚くほど冷静になってくる。
うん。今日もちゃんと、好きだ。
「一曲だけ。一曲だけ付き合ってください。うちのバンドのボーカルが作った曲です」
言葉が出なくなっていたところをベースの安住が繋いでくれた。目線でそっと感謝を伝えたあと、ゆっくり前を向く。
よし、いける。見えている景色にそっと雑音をふきかけ、ギターを鳴らす。
大丈夫。大丈夫。
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