第8話 日常
登校が同時だったというだけで、他に変わったことなど何もない。ただいつものように友達と会話し、青色の手帳を繰る指先を見、1日が終わっていくだけ。それだけだった。
「なあにー?そんな司クンのこと気になる?」
「は?いや、別に。」
「おいおいクロー、おまえ女子にモテないからってな、あいつ男だぞ。」
岩沢まで参戦して来て、適当に誤魔化そうとするうちに昼になり、放課後になり、夜になる。
「ただいまー。」
「お帰りなさい。それにしてもあなた、友達の家に行くときは連絡する約束でしょ?」
「あ、それ本当ごめん。」
不可解なものが、ひそかに世界を濁らせて 、歪ませている。今この瞬間を、どこか遠くの世界の瞬間と入れ替えられて、つなぎ合わされているような不愉快な感覚が、今朝起きた時、司の家にいたことを知ってから続いていた。
「今日はもう寝よう。」
いつもより早く帰って来ていたらしい父の禿頭と、椅子の上で体育坐りしている細い日に焼けた足を見た。彼は丸メガネの底で光る眼を、新聞に注いでいる。
「ああ、寝不足はよくないからね。」
字を追う目を離さずに、後ろにいる八月一日に言った。
それから二階にある自室に鞄を置き、ブレザーをハンガーにかける。その横には無意味に貼られた世界地図があって、なんとなく眺めたあとそれをズタズタに引き裂いて、風呂場へ向かった。
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