第1話D「怪異とは?」



 〜夕方〜

 ピンポーン。

 インターフォンの音がする。画面を見ると、昨日助けたあの子。

「例の彼女かい?」

「ええ」

「しかし、いいのかい?本当に教えても?」

「警告はしたわ。その上で彼女が選んだのなら、私は彼女の選択を尊重するわ」

「そうかい。ならいいけど」

「じゃ、行ってくる」

「ああ」

 side out


 〜私side〜

 私は、昨日渡された住所のところに来ていた。随分わかりにくいところだったが、どうにか見つけることができた。インターフォンがあったので押してみる。

「はーい!」

 扉から聞き覚えのある声。やはりここであっていたのだろう。

 ガチャリ。

 ドアが開く。

「こんにちは!そしていらっしゃい!」

 そこには、昨日の少年が立っていた。


「ささ、どうぞこちらへ」

「はい・・・」

 案内されるままに席に座る。気付くと、もう一人、男なのか女なのかわからない中性的な人物が座っていた。

「さて、まず自己紹介しましょうか。私は如月 綾と言います。以後、よろしくお願いしまーす!」

「僕は小泉 紫。よろしく」

「私は、楠木 椛と言います。よろしくお願いします・・・」

「楠木さんね、よろしく!それで、昨日のアレについて聞きたいんだよね?」

 頷く。しかし如月さんの態度がどこかフランクだ。どういうことなのだろうか?

「昨日のアレは『怪異』と私たちが便宜的に呼んでいる化物だね」

「怪異?」

「都市伝説、ってあるでしょ?都市伝説の大半は虚構のものなんだけど・・・中には真実があるんだ。『怪異』とはそういう真実のことを指すの」

「つまり、昨日のアレも都市伝説にあると・・・?でも私はそんな都市伝説、聞いたことがないですよ?」

「ああ、ごめんごめん。都市伝説に含まれてるのだけじゃなくて、含まれないのもひっくるめて怪異って呼ぶんだ。だって、放置してたらいずれ都市伝説になるでしょ?」

「なるほど・・・。では、あなたは何者なんですか?昨日の怪異?も撃退してましたよね」

「私達は・・・そうだね、ゴーストバスターって言えばいいかな?怪異に対抗する者だよ」

「ゴースト、バスター?」

 ゴーストバスター。そんなものが実在しているのか?いやしかし、昨日のアレを撃退?した以上そうなのだろうと信じることにする」

「まあどうやって退治するかは・・・今見せるよ」

 え?

「やっぱり私の予想通り。紫、行くよ」

「ああ」

「え?どういうことですか?」

「実はね、昨日のアレは倒せてないんだ。まだ君を狙っている。私も家に帰ってから気づいたんだけどね。だから、ここで迎え撃つことにした」

 え?つまり、この近くにいるということだろうか。辺りを見回してみるけど、何かがいるような気配は感じられない。ーーーいや。感じる。ドアの方から何か、得体のしれない何かがいる感覚がする。それは紛れもなく。昨日背中に感じていた、気配だつた。

「見たいなら止めないよ。おすすめはしないけど」

 そう如月さんが言う。

「綾、何やってるんだ、早く来い」

 小泉さんが如月さんを急かす。

「はいはい。じゃ、また後で」

 見るべきか、残るべきか、悩んだ結果。私は如月さんの退治方を見ることに決めた。

 side out



 綾side

 さて、やりますか。目の前には昨日の「何か」がいる。

「行くよ、紫」

「ああ」

 お互い知れた仲だ。何も言わずにそれぞれドライバーを装着する。

『『ゲーンドライバー!』』

『『セット!』』

『『トランスジェニック!』』

「Die Verwandlung!」

「Evolution」

 瞬間。私と紫の身体から衝撃波が発生。そして、私達の身体は、化物となっていた。赤い化物と、青い化物。二匹の化物が、そこに立っていた。

「お前を収集する」

 青い化物ーーー紫がヤツにそう宣告する。

 悔しいが、ここは譲ろう。

「じゃあ、打ち合わせ通り、鎖を使うよ!」

「了解」

 私と紫は獣と鎖が描かれた注射器を取り出し、ドライバーに刺す。

『『セット!』』

『『トランスジェニック!』』

『『グレイプニル!』』

 再度衝撃波が発生。私達の身体には、背中を中心に鎖が沢山生えていた。

 グレイプニル。北欧神話にてフェンリルを縛ったとされるもの。実際には鎖じゃなくて紐だけど、出てきたのが明らかに鎖なので私も紫も鎖として使っている。

「ハッ!」

 鎖でヤツを縛ろうと鎖を投げる。しかし絡まらない。やはりあの状態では効果が無いようだ。

「ま、予想通りだね。縛られてくれたら、楽だったんだけど。じゃあ紫、縛るのは任せた!」

「りょーかい」

「フェイルノート」の注射器を「グレイプニル」の代わりにドライバーに刺す。

『セット!』

『トランスジェニック!』

『フェイルノート!』

 鎖が消失。代わりに腕が弓となる。

「さあさあ、昨日のように退治してやろう!」

 弓を掻き鳴らすように撃つ。

「Gya?Gyaaaa!」

 やはりこちらの思った通りの中身になるようだ。つまり、効いてる。

「お前みたいなヤツはカタチをとらせて、弱らせてから捕まえるに限る。じゃあ、そろそろ決めるよ。タイミング、合わせてね?」

「そっちこそ」

『『セット!』』

『『ブレイク!』』

『フェイルノート・エンド!』『グレイプニル・エンド!』

 腕が奏でる荘厳な音楽と共に、無数の矢がヤツに突き刺さる。

「GYAAAAAaaaa・・・・!」

 ヤツは悲鳴をあげながらも爆散して、逃走しようとしているようだ。

「させないよ」

 だがそうはいかない。紫のグレイプニルの如き無数の鎖がヤツを雁字搦めに捕縛する。

「Gya?Gyagya!?」

「さあ、お前を収容してあげよう」

 紫が取り出した匣が開く。匣の中には、虚無が広がっていた。そして鎖ごとヤツが吸い込まれていく。

「Gyaaaa!?」

「そいつはお前みたいなのを閉じ込める為に作った匣だ。いくら逃げようとしても無駄だよ」

「Gyaaa・・・Gyaaaaa!」

 ヤツが怒り狂ったかのように紫を狙おうとするがもう遅い。紫に捕らえられた時点でもう詰みだ。

「Gyaaaaaaa・・・」

 吸い込まれたヤツの声がどんどん小さくなっていく。そして聞こえなくなる。

「これで収集完了、と」

「お疲れ様」

「君もね」

『『セット!』』

『『トランスジェニック!』』

 お互いに元の姿へ戻る。

「さて、これでわかってもらえたかな?」

 近くにいるだろう楠木さんへ向かって話しかける。

「・・・何なんですか、貴方達は」

 予想通り、近くの茂みにいた楠木さんが、驚いた表情かおをしながら私達に尋ねてきた。

 side out



 楠木椛 side

 私は、混乱していた。如月さんと小泉さんについて行って、近くの茂みで隠れて見ていた時、私は自分の目がおかしくなったんじゃないかと思った。

 そこには、たしかに昨日の何かがいた。そして、奇妙な装置を構えてる二人がいた。

『『ゲーンドライバー!』』

『セット!』』

『トランスジェニック!』』

「Die Verwandlung!」

「Evolution」

 二人が装置に注射器のようなものを刺し、そんな掛け声を発した後、衝撃が私を襲った。私は茂みに隠れていたので無事だったが、二人から熱波のような衝撃波が発生し、衝撃波が消えた跡には、化物としか言いようがない二つの人型がいた。

「お前を収集する」

 青い化物が小泉さんの声でそう語る。

「じゃあ、打ち合わせ通り、いくよ!」

 赤い化物が如月さんの声でそう語る。

『『セット!』』

『『トランスジェニック!』』

『『グレイプニル!』』

 二匹の化物が鎖が描かれた注射器を装置に刺す。すると、化物の背中から、沢山の鎖が生えていた。

 その後、化物達は昨日の「何か」ーーー怪異を攻撃し、最後に青い化物が取り出した匣に「何か」を入れーーー収容した。

 その後、化物達が注射器を刺すと、赤い化物は如月さんに、青い化物は小泉さんになった。私は混乱していた。あの化物は如月さんと小泉さんだつたのか?この二人は何者だ?そもそも人間なのか?色々な疑問が頭の中で渦巻く。

「さて、これでわかってもらえたかな?」

 如月さんが私に向けてそう問いかける。その時、混乱する私の中で口が勝手に動き、

「・・・何なんですか、貴方達は」

 と、尋ねていた。

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