第20話

そうこうしてから早2週間がたった、様々なことを準備して、やっと終わった今この頃…。


「よしっ!次寝たら行こう、ここは便利だけど時刻が分からないからな」

「ついに行っちゃうんだね…創太、久しぶりにすごく、凄く楽しかったよ」

「ああそうか、アル…所で、少しプレゼントがあるんだけど」


などと創太がほのめかした瞬間

「えっ、何々?プレゼントっ!なにっ!食べ物!家具!えっ?何々っ!」

「ちょちょちょ、待て待て、説明するからっ、…その前に一つ聞きたいことがある」






 「アルは外の世界に―――――地上に出たいか?」


と言った瞬間、アルの顔が最大限に曇った。




「うん…そうだね。出たいよ、僕は…僕はね。かれこれずーーっと、約5000年ぐらいかな。ここにいる。でもね創太、僕は一度も地上の事を忘れた事は無かった。あの空気を目いっぱい吸い、青い空を見たい、あの海を見たい、街に行って、人々の声を聞きたい。おいしい物をあの地上で食べたい、そんな思いを5000年…ずっと出られるか探してきた、けど出られなかった…でももし出られるなら…1日でも出られるのなら、僕はどんな犠牲でも支払おう。分かった?創太。僕は出たいよ…5000年前からずーーっと、それでたとえ、神を殺せと言われても」


その眼はアルという者の願いと、覚悟の眼、だからこそ創太は深くうなずき、この一言をアルに向かって繰り出した。


「わかった、じゃあ出してやろう、それがプレゼントだ。おめでとうアル、君は自由だ」


あまりにもあっけなく創太は言い放つが、それでもアルは




「えっ。ちょ、えっ?僕、出られるの?本当に・・創太 ねえ、ウソじゃ……ないよね?」

「ああ 本当だ 出してやる、ちょっと待ってろ、少し時間がかかる」

「やっと…やっと、ついに……僕、涙が出そうだよ・・ありがとう創太。キミを選んで間違いはなかった、キミで本当に良かった」


と言って創太は初めてアルの涙を見た。


「ちょっと待ってろ、おい聞こえるか一雫」

「えっ、誰かいるの?」

「紹介しよう。一雫だ、よろしく」

「こんにちは一雫です、初めまして、創無神アル様」

「創太、誰これ?」

「ああ、初めてだったな。一雫、俺の秘書みたいな扱いだ。いま抜け出せるスキルなどを製作してもらっていた、それとシャネルもあそこから引きずり出すぞ、できたらな」

「えっそうなの、というか、できるのそんな事」

「ああ、できるかもしれない。じゃあざっとアルを閉じ込めている結界について説明しようか、大まかには2つある、1つ目は創無神としての結界。これはまあすぐに解決するとして2つ目、これはアルス本人にかけられた結界。これは少し骨が折れる、じゃあ始めて行こうか、まず一つ目の結界だが・・・・アルス、手を出してくれ」


「ああ うん分かったよ、創太」

とアルスが手を出し、創太がそこに丸の紋章を写す。


「はい。これで結界解除っっと」

「えっ。創太、終わり?これで終わり?」


この原理は使徒化することによりアルの生物としての進化を促したため、2つ目の結界が解かれる。さらに創無神としてはアルは使徒となったため、創無神にはアルには当てはまらない。つまり結界が解かれたわけだ、この原理は少しあいまいだが、解けた物は解けたのでそういうことにしておこう。

少し無理があるかもしれないが、それ以上追及すると創太の100%魔力弾で結界の能力を壊したとしか言いようが無くなってしまうため、これ以上は口が裂けても言えなかった。


そしてもう一つ、創太が創無神になったためその結界が創太に発動しないか?という点だが、発動はしているが創太の膨大な魔力で打ち消している。ちなみにアルの魔力でも打ち消せないほどの結界だ、創太のチート過ぎる魔力にはもう脱帽だ。


「うん、終わりだ、もう外に出られるぞ、アル」

「うんっ!うん、ありがとう創太、キミのおかげで僕はっ……僕はっ!」

「その言葉の続きは地上に出てからだ、ああ、あとシャネルもこっちに来てもらおう」


そうやってあの言葉を唱え、シャネルの待つ世界へ入った。




「おい、シャネルー?」

「はい、なんですか創太」


「お前さあ…こっちに来ない?」


「えっと、それはつまり・・」

「ここから出ないか、と言っているんだ」


「……それはプロポーズですか、創太?」

「違うが――お前、ずっとここにいるだろ?出たくないのかなって」

「…出たいですよ、ですがプリムが許しません。あの人は・・・絶対に許しません」


シャネルは戦々恐々としながら言い放つ。


「そうだよなあ、だからここにいて、俺たちの旅を見ることが出来る。そんな道具をプレゼントしようと思う」


創太は、赤い箱に黄色いリボンで結んでいる箱を取り出し 


「シャネル、これは俺を助けてもらったお礼だ、ありがとう」

「はい…ありがとう創太。では開けさせていただきますね」


といって、リボンの結びを外し、箱を開ける。すると入っていたのはメガネの様な道具だった。



道具  ランク?????

神の遠隔起動装置

神がどこでも見えるようにと作ったもの

この装置をつけている間は、10桁まで裏のチャンネルに自分の目となる精霊を動かすことが出来る。精霊は装備した者の命令を聞き、指定した場所に行ける。限界は無い、そしてその精霊の五感を自分も体感することが出来る。精霊には細かな命令も出すことが可能。


さらに生物にマーカーをつけることでリアルタイムでその人の五感が体験でき、

さらにその生物に精霊が触れていた場合 相手は触れている精霊を視認できるようになり

会話などもできる。

マーカーは3桁までなら付けられるが、体感できるのは一度に一人のみ。


*精霊会話 解放

精霊に自分が存在する魔力のおよそ5倍の魔力を渡すことで、その精霊と自分の間での音声がリンクする。




「ありがとうございます創太、こんなものをくれて」

「本当は出したいんだが他の神と揉めてしまうのは少しきつい。だから今はそれで我慢してくれ」

「はい、ありがとうございます…創太。本当に、本当に有難うございます」


こうしてシャネルは、精いっぱいの笑顔を創太に向けてくれた。

創ってよかった。そうやって創太の心が思うくらいに無邪気な、そして可愛いい笑顔だった。






シャネルに遠隔装置メガネもどきを渡して、戻ってくるとアルがすごく深刻そうな顔をしていた。

「どうした。アル、そんな深刻そうな顔して」

「うん 創太実はね…」


長くなるので、要約するとこうだ。

現在アルは創無神ではない、がこの迷宮は創無神の力で動いているのでアルが迷宮をコントロールできなくなってしまった。だが一応アルの迷宮にはAI・・人工知能もどきがいるらしく、アルがゴロゴロして居たりしている間はそのAIが迷宮を管理していたらしい。そのAIと通信を取ってみようとしたのだがつながらず 現在困っているという状況だ。そしてコントロールができないということはアルのこの迷宮内での転移 干渉ができないということになる。つまり 転移での迷宮脱出は不可能になってしまったわけだ、そのAIが動いている居場所とは、現在の創神の塔の真の迷宮。85層にAIの作業部屋があるらしい。

「どうしよう、創太??」

とアルが申し訳なさそうに聞いてくるが、創太は内心ワクワクしていた。


(そうか、やっとか……この力を使っての実践経験)


「ああ、別にいいよアル、俺もこの力を使ってみたかった。良い訓練相手になりそうだ、だから気にするなよ」

「早速だけど行こうか、ここから迷宮内部への道は無いのかい?」

「ああ、案内するよ創太」


こうやってアルと創太は創神の塔脱出を試みたが、創太達はまだ知らない、ここからの創太の蹂躙劇を……。

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