付き合ってる先輩が留年して同級生になろうとしてくる
人口雀
先輩が留年して同級生になろうとしてくる
「ねえユージ!ラブホ行こうラブホ!」
「ラブ……ゴホッゴホッ。え?」
唐突に止めてくれ。
「なんでまた急に。」
「ユージ、まだ十七歳でしょ?」
「そうですが。」
「私は十八。」
「そうですね。先輩は三年生なので。」
「つまり犯罪。」
「ええ……そうなんですか?高校生ですよ?実感湧きませんが。」
「一応法律上は。」
「はあ。」
「そしてラブホは十八歳未満立ち入り禁止!」
「そうですね。」
「つまり私は逮捕されて処分を受け、卒業取り消し!来年はユージも進級して同じ高校三年生!」
「全国模試百番台の先輩の脳みそのどこからそんな発想が出てくるのか、凡人の僕には分かりかねますね。」
「そんなことよりラブホ行こ。」
「行って何するんですか?」
「もちろん逮捕されるんだよ。」
さいですか。そういうプレイじゃないことは分かりますよ。キスもしたこと無いですしね僕ら。
「お巡りさんもそんな暇じゃないでしょうし、仮に逮捕されたとして僕ももう一回二年生じゃないですか?」
「それは私が無理やり連れ込んだことにすれば。」
いや、さすがに馬鹿でしょ。
「普通に卒業してくださいよ。来年は僕も先輩と同じ大学に入学するんですから言うこと聞いてください。」
「えー、もしユージが受験に落ちたらどうするの?あ、そうだ。私も退学して一緒に予備校通おう。」
「止めてくださいいや辞めないでください。それにうちは予備校行けるほど裕福な家庭じゃないです。」
「じゃあ私が家庭教師してあげよっか?一日中ユージの部屋で。あ、それなら結婚しちゃえばいいね。ユージが十八になったら結婚できるし。」
「それなら大学生になって放課後僕の勉強見てください。たぶん泣いて喜びます。」
「えー昼間会えないじゃん。」
「それは高校生なので仕方ないです。」
「退学して大検取ってヨ。」
「可愛く言っても無駄です。それに高校楽しいので退学はありえません。」
「そうそれ!楽しい高校生活!それをユージと一緒に送りたいの。」
「もう十分先輩のおかげでいい思い出ばかりですよ。」
「私は足りないのー。」
この人は、同じ吹奏楽部の一年上の先輩だ。僕が二年で先輩が三年生の夏休みに僕から告白したのだが、第一志望だった大学から志望先を変更し、僕が何となく進学しようかなとあいまいに考えている大学を首席で合格した。
「馬鹿と天才は紙一重って、よく言ったもんですよね。」
「私は秀才だし、将来より今を優先させるのは賢い選択だと思うけどなー。」
「先輩もともとT大学の理学部志望だったんですよね?それがこんなランク落として僕と同じ経済学部とか。」
「愛の成せる業だよ。」
「"わざ"というより"ごう"ですよねそれも僕の。」
「お、代わりに背負ってくれるかい?」
「それくらいは良いですが、その上高校留年なんて今日日聞きませんよ。そこまでは僕も責任とれません。」
「責任とって結婚しろーとか迫ったら困る?」
「いや、それはむしろ喜んで責任取りたいですが。」
「ならいいじゃん。」
いいんですかねえ?
「でももし僕が他の女の子を好きになったりしたらどうするんです?高校留年して目も当てられないじゃないですか。」
「そうならない為に留年するのだよ。ユージ君は単純接触の法則と言うものを知っているかい?」
「毎日会ってる人を好きになるとかってやつですよね。」
僕が心配していることだ。
大学で僕より運動ができて頭が回って顔も良くて筋肉も付いていて女性の扱いにも長けている男が何人も現れたら、先輩は年下の頼りない後輩の事を見捨てはしないだろうか。
「そうそう。私が留年すれば万事解決ではないかね?」
「いや、ダメでしょ。」
「ケチだねえ。」
僕としてはもっと先輩と一緒に過ごしたり、学校帰りに制服デートとかをしたいが、好きだからこそ先輩の人生を悪くする原因にはなりたくない。
「ラブホがダメならお酒は!?私が買ってきてユージに無理やり飲ませるの!」
「いや、それ多分留年どころか退学になりませんか?それに先輩がさっきから提案してるの、僕が警察に申告しなければ捕まりませんし、僕は先輩を卒業させますよ?」
「んーじゃあ病院送りになるくらいまで飲ませる?」
「それ冗談じゃなく死にますって。真面目に止めてください。」
「んーじゃあどうしよっかなー。他に何か良い悪いことないかなー。」
「良いのか悪いのかどっちかにしてください。先輩の頭のことですかそれ。」
「お、なかなか鋭いツッコミだねえ。じゃあ悪いこと考える。」
「どっちかじゃなく良いことにしてください。」
「良いことねえ。高校を卒業出来なくなるような良いこと……やっぱりラブホでイイコトする?」
「まずラブホから離れましょうスケベな先輩。」
「じゃあ私の胸から目を離しましょうスケベな後輩。」
……っ!慌てて視線を外す。
「別にそんなつもりは無いですよ。先輩の顔の近くにあるから自然に目が行くだけです。」
「まあいいよいいよスケベな後輩。私の胸で良ければいくらでも見なよ。」
「い、言っておきますけど、僕が見てるのは先輩の顔であって胸は偶然目に入ってるだけですからね。」
「はいはいそういうことにしておいてあげる。でも私が留年すれば毎日見放題だよ?」
「……先輩。」
「どうしたの?遂に私の留年に賛成する気になった?」
「これは最終手段なのであまり使いたくは無かった、と言うか先輩とこうして話しているのが楽しいから後回しにしていた手段なんですが。」
「え、私にエッチな乱暴する気?」
「違います!」
「ごめんごめん。なに?」
「先輩と話してるのは楽しいんですが、正直に言うと僕は先輩の受かった大学でさえ、先生からは志望校を変えるように言われているくらい絶望的な成績なので、こんなお遊びに付き合ってる暇はありません。」
「おや?これは空気が変わってきたぞ。」
「茶化さないでください。……先輩、覚悟してよーく聞いてください。」
「てれれれん。ドックン…ドックン…ドックン…。」
「先輩のそういうところ、すごく可愛くて大好きですが、先輩理系クラスじゃないですか?僕文系志望なんでクラスは百パーセント別々ですし、体育とかでも一緒の授業には絶対にならないんですよ。」
「な、なんだってー。」
「何ですかその気持ちの籠っていないリアクションは。」
「い、いやちょっとショックで。」
「やっぱり先輩、馬鹿ですよね。」
「ちょっとくらいおバカな方が女の子は可愛いでしょ?」
「先輩はもともと可愛いですが、と・に・か・く!そういう事なんで、大学の事とか……色々教えてください。先輩から楽しそうな話を聞いたら、多分僕も勉強頑張れると思うので……。」
―――このあと滅茶苦茶勉強した。
付き合ってる先輩が留年して同級生になろうとしてくる 人口雀 @suenotouki
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