トナカイの角が折れた

我々の知る冬は来ない

遠ざかるサイレンの音が、ぐゎんと、頭を撲付けてくる


腹部が膨張し、ごぽ、と、人には聞こえない音を立てて、下へ下へと向かっていく

夜だから寒い

かかとがかゆくて苛々する


布団に潜り込む

外の音

何キロか先の海の音か? あの丘の森の木々たちが波打っている音か?


この音が嫌いだ

気にしなければなんともないのに

気にしてしまうと泣きそうなくらいに怖いのだ

どこかに連れていかれそうな恐怖がある


家族がトイレに向かう音

水の音

扉を閉めているのにめちゃめちゃ聞こえてくる

風で揺れた窓がじゃんと振動を伝える

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