群像

@siojake

第1話 ガラス越し

「また新しい生き物が入ってる」

そんなに騒ぐことじゃない。これまで何回も繰り返しているのに、彼女は何度も驚く。

「なんかセダカヤッコみたいな色だ。ヒラヒラしてる。なんて名前なのだろう」

僕は面倒くさいので生返事をする。

「さあね、知らない。それをきみが知ったところでどうなるんだ。どうでもいいことだろう」

彼女は水槽のガラス越しに見える新参者に興味津々なようで、僕の素っ気ない態度を気にもせず話しかける。

「ずいぶん、繊細そうだね。まぁどうせすぐ死んじゃうんだろうけど」

陽気そうに笑う。

その生き物はひどく弱そうに見えた。

「ここに入った時点で運が悪いんだ。もうどうなるかは決まってる」

「あなたって薄情なのね。のろまな亀、大ざっぱ、がさつ」

僕を傷つけようとしているようだ。

「あ、あの生き物が海老みたいな色になったわ」

「そうだね」

「あなたはもう少し物事に興味を持つべきだと思う」

なんにも興味が無いわけじゃない。関心を持つこともある。

最近だと、甲羅に苔が付きすぎてるからそろそろ洗って貰いたいと考える。

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