第十二話 盗賊、というより漫才師?
ここは?
周りを見ると辺り一面火の海だった。
「お前が生まれてきたせいだ!」
一人の少年が言ってきた。
「お前は奇跡なんかじゃない!悪魔だ!」
(やめて)
次々と子供が現れてくる。
「てめえがここにいるから俺の家族が殺されたんだ!」
(違う!それは僕のせいじゃない!)
知らないはずなのに知っている気がする。そしてその言葉一つ一つが刺さってくる。
「どっかいけ!お前の居場所はここにはない!お前がここにいるとまたあいつらが来るんだよ!」
(僕は関係ない!というかあいつらって?)
あいつらとは誰の事だろうか?なにか大切なことを忘れているような気がする。
「君はこの世界にいるべきじゃないんだ、“松……平”」
誰に言っているんだ?
僕…………なのか?
~~~
あれ?ここは……そうか、転生したのか。なんか久しぶりに嫌な夢を見た気がする。でも夢の内容が思い出せない。
「優、起きてる~?」
夢のことを考えているとマシュが起こしに来てくれた。
「うん、起きてるよ~。着替えたら行くから先に外で待ってて~」
「わかった~」
さて、今日は何をしよう。といっても旅人は旅人らしく色んな町を巡っていくか。せっかく転生したんだから楽しみたいよね。
今日することを考えてるうちに着替えが終わり部屋を出た。
着替えといっても前日に来ていた前の世界の学校の制服なのだが……。
(そろそろ新しい服買ったほうがいいかなぁ?)
「優、おはよう!」
「ああ、おはよう」
挨拶をされてそれを返す。前の世界ではそれを気軽にできるような友達が一人しかいなかったからかすごく新鮮に感じる。
「今日はなにするの?」
「僕が決めるの?」
「だって優はこのパーティのリーダーじゃない」
いつの間に僕はリーダーにされていたんだ?というか
「パーティって2人しかいないじゃないか」
「細かいことは気にしないの!」
あっはい
「そうだな~、まあ旅人は旅人らしく色んな町を巡っていくよ」
なにをするかはさっきまで考えていたことなので考えていたことをそのまま口にする
「そう、ここから近い町ならボックの町ね」
「ボックの町っていったら図書館があるところだったっけ」
魔法の洞窟で読んだ研究記録に書いてあった町のひとつだ。書いてあったこと以外はなにも知らないが。
「そう!大きな図書館があって魔導書とかもたくさんあるの!」
「なるほど、旅に役立つ本とかも欲しいな」
この世界の事も詳しく調べられるかも。情報屋でも大雑把にしかこの世界の事は聞けてないからね。
「そうとなれば出発よ!」
「そうだね」
(あれ?リーダー僕って言ってたのにマシュが仕切ってる?……まぁいっか)
僕達は町をあとにした。
「そういえばボックの町って図書館以外にはなにがあるの?」
次の町に向かう道中ボックの町について聞くことにした。
「そうね~、ボックの町っていえば図書館が一番有名なんだけどその図書館の本は世界の色んなところから仕入れてきてるから情報もたくさん集まるし、なんといってもあそこは大魔導士ブラン・マーシェントが生まれたとされる町なのよ!」
「大魔導士ね~、そういえばマシュも魔法使いだよね、やっぱりそうゆう人に憧れてたりするの?」
「うん、憧れてる。私の親も凄い魔法使いだったっておばあちゃんが言ってたんだけどわたし昔の記憶がないの。お母さんはリリィっていう名前らしいんだけどお父さんの名前は知らないしずっとおばあちゃんに育ててもらったから。でも、お父さんやお母さんにも、大魔導士ブランにも負けない魔法使いになりたいの。まあ、魔法使えないんだけどね」
少し悲しい表情を浮かべているような気がした。
「ごめん、嫌なこと言わせちゃったかな」
「ううん、全然。わたしが旅に出た理由の半分はわたしの親のことを知りたかったからだもん、おばあちゃんはわたしの親のこと話してくれなかったしわたしがどこで産まれたとかもわからないからそんな疑問はわたしの親のことを知れば全部わかる気がするの」
「そっか」
一言で説明すれば自分の親のことを知るために旅をしているということだね。
よく考えれば親が凄い魔法使いだったのにその子孫がまったく魔法の才能がないなんてことはないと思う。つまりなにかしらマシュの親のことは隠蔽されていると考えたほうがいいのかもしれない。もしかしたら親のことじゃなくてマシュが産まれた場所が隠蔽されているなんていう可能性もあるだろう。
……考えすぎかな?
「わかった、僕も協力するよ」
「ありがとう!じつは一人だと心細かったりするからほんとにうれしい!」
「それは良かった」
やっぱり、一人で心細かったんだね
「おい!そこのやつら!」
「はい?」
しばらく歩いていると二人組の男が話しかけてきた
「ここから先に行きたかったら金目のものを置いていってもらおうか」
「そうだ~痛い目にあいたくなかったら金目のものを置いていけ~」
なんだ、ただの盗賊か。というか片方すごい棒読みなんだけど。
「えっと、どちら様?」
「よくぞ聞いてくれた!俺こそ世界一の大盗賊ワンダ様だ!」
「そして僕がこのばか親分の子分(仮)のフールです」
二人合わせてワンダフルというわけですか
「誰がばか親分だ誰が!」
「おっとつい本心が」
「お前は毎回心で思ってることを正直に言ってんじゃねぇって言ってるだろうが、あと(仮)ってなんだよ!」
「だって僕親分についていくとは言いましたけど子分になるとは言ってないですよ~」
「意味は同じだろうが!」
「上下関係があるかないかで比べれば大きく違いますよ」
「俺がリーダーなんだから細かいことは気にしないでいいんだよ!」
ギャーギャーワイワイ
いつの間にか盗賊?の二人組によるコントが繰り広げられてた。というか僕たち放置してていいのかな?
「仲いいわね~」
いつの間にかマシュが温かい目で二人を見ていた
「そうだね~」
僕も同じく盗賊(笑)を温かい目で見る
「おいこらお前ら温かい目線でこっちを見てくんじゃねぇ!」
「そうですよ僕までばかみたいじゃないですか」
「俺もばかじゃねぇよ!」
「うるさいです、耳もとでギャーギャー騒がないでください」
「お前が悪いんだろうが!もういい、とりあえずお前ら金目のものを置いていけ!」
あっ、本題に戻った
「そんなにお金に困ってるの?」
「俺達はなこの世界中の伝説のお宝を手に入れるためにな準備がいるんだ、そのための小遣い稼ぎさ」
「というのは表向きでご飯を買うのも辛い状況なので恵んでくれると嬉しいんですよね。まあ、その理由も三割くらいは間違ってませんが」
「おいこら、人がかっこいいセリフを言ってんのに台無しにすんなや」
「いやいや、嘘をつくのはよくありませんて。それに全然かっこよくないです」
なんだろう、この人達悪い人じゃなさそう。二人の盗賊の仲のよさそうな言い合いに僕はそう思った。
「そうよ、嘘はついちゃダメ!」
盗賊二人のコントにマシュも加わる
「うっせえいい子かお前は!というか地味に入ってくんな!」
「え~、だってみんなでお話ししたほうが楽しいじゃない」
(マシュって純粋だなぁ)
すでにマシュが打ち解けてる……。というかもうこの二人盗賊じゃないよね?いや、盗賊じゃないな(確信
「うっせえよ!これはお話しじゃねぇよ!れっきとした交渉だ!」
「いや、一方的な脅迫ですよ親分、交渉の意味調べて頭の中に入れてから使ってくださいよ」
相方のほうが頭いいのね
「俺の扱いひどすぎだろ」
「いや、思っていることを言ってるだけであってそんなつもりは」
フールは多少申し訳なさそうに言う
「だからそれをやめろっての!とりあえず金さえ置いていけばなにもせずに通してやるから」
おっと矛先がこちらにきた
「う~ん、じゃあ50000ゼルとかでいいですか?」
「えっ?まじで、そんなにくれんの?」
二人の顔が一変する
「いままでそれだけのお金を手に入れるならちょっと大金持ちの人から力ずくで奪いとるしかなかったのに自分からあげるなんて神みたいなこといってきた人あなたが初めてですよ!」
「いやだってお金に困ってるって言うから」
「ふ、ふん、我々の恐ろしさに屈したか。そこまで言うなら通してやろう」
なんかこれで通してくれるみたいなので先に進む
「いや、完全に可哀想な人を見る目ですよ、屈するどころかなめられてますよ親分」
「何!」
ギャーギャー
(なんか後ろで言ってる)
僕達はスルーして先に進んだ
「優って意外とお金持ちなのね」
「いや、そうでもないよ」
「50000ゼルっていったら小さな一軒家が買えるくらいの大金なのよ?実は優って貴族様だったりするの?」
「違うよ。ただちょっと今まで色々あった結果何故かこうなっただけだから」
「ふ~ん」
とっさに噓をつく。まぁ、あながち間違ってないのだけれども
(この世界の50000ゼルって前の世界の500円なんだよね。ワンコイン、銀貨が大金に変わる世界、まさかこんな大金持ちになるとは思ってなかったよ。つまり親の遺産が三千万、僕の銀行に二百万、他にもちょくちょくあるけどこれだけで計算してもいまの所持金って32億ゼルってことになるんだよね。自分でも驚きだよ。でも50000でもそんな大金なのか。次から気を付けよ)
そして町に着いた。
「ついたわ!ここがボックの町よ!」
転生した世界はまともじゃない K.K @kk64
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