バカップルと信号待ちの私

ゆうけん

信号待ちで起きた出来事

 太陽は真上に位置し、高層ビル群を見下ろす。


 そんな休日の出来事。


 彼との待ち合わせは、表参道に最近オープンしたお洒落な喫茶店。

 今日は一生懸命メイクした。洋服も普段着ないような清楚で可愛らしい服装を目指したし、ハンドバックも洋服に合わせて買ってきた。


 彼は気が利く素敵な性格だから「今日はいつもと違うね」とか言ってくれるかも!

 ううん。別にそんなこと言わなくたって良いの。でも、もし言ってくれたら嬉しいなぁ。


 ネイルも控えめな色。大人なんだぞ!って感じを出せてたらいいな。


 付き合って間もないから、こんなにウキウキするんだって分かってる。

 まだ恋心な感情があるんだと思う。でも、これが愛情に少しずづ変化していくんだろう。


 猫のような軽い足取りで石畳の路地を歩く。


 人通りが多い歩道を進み、交差点で信号待ちになる。


 赤信号を何気なく見つめた。周囲に私と同じ信号待ちをする人の気配。自然な素振りで横目で確認すると二十代前半のカップル。まぁ、私と同じぐらいかな。


 男性の方は茶髪でロンゲ。まぁ、そこそこ似合っているし服装も性格に合わせたように明るい。腕を絡ませる彼女の方は亜麻色のストレートヘアで美白。本当、綺麗な肌で少し嫉妬してしまいそう。おしとやかな笑顔は同性の私が見ても素直に可愛いと思ってしまう。


 亜麻色の美白が彼に声を掛ける。

「ねぇ、ケンジ。見て。あの車カッコイイ。なんていうか知ってる?」

 彼女は車道で信号待ちをしている車を控えめに指さした。


 彼はチラリと車を確認すると、ドヤ顔で美白に向かって答える。

「あぁ、知ってる知ってる。ト・ヨ・タ」



(え?)

 私は車を二度見した。


 違う。そうじゃない。

 たしかにトヨタ自動車株式会社が製造した車に違いない。だが、彼女が聞きたかったのは、それではないはずだ。この角度からでは美白の顔は見えないが「?」マークを全開にした表情をしているだろう。


「さすがケンジ! 物知りね!」


 私の想像をぶち壊す答えが聞こえた。

 まぁ、二人が幸せならば、それはそれで良いのだろう。


「あのバイクなら知ってるよ」

 美白が指差した先には停車しているハーレーダビットソンがあった。


 アメリカンスタイルの代表バイク。未来から来た人型ロボットが、サングラスを掛けショットガンを片手で回しリロードする映画でお馴染みのバイクである。 


「ハーレーラビットさん!」


(誰だよ!可愛く言いやがって。だが、それは違う!)


 彼氏の方も「そうそう」みたいな返事で、つっこんでやれよ!もしかして知らんのか!?


 そうこう思っているうちに信号は青になる。


 無駄な疲労感を抱きながらも、私は目的地に到着した。


 お洒落な喫茶店のテラス席に、大好きな大好きな彼がいた。

 彼の笑顔を見た瞬間に信号待ちで起きた出来事なんて、すっかり吹っ飛んでしまう。モデル体系な小顔に清潔感ある短髪、スポーツマン特有の爽やかな笑顔。そのすべてが私に向けられている。そう感じると頭が真っ白になるぐらい幸せだ。




 ちょっと不安があるとすれば、彼はなことかしら。



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