『不自由』な世界

「我が自由を奪うつもりか!」


 かつてこの国に革命を引き起こした新王。

 その手には、足には枷がはめられている。


 その王の前にいるのは、国の現状を憂いたかつて、革命を共に起こした王の友。


「友よ。我らは間違えた。あの監獄は、あの不自由の象徴たる檻は必要だったのだ。」


「何を言うか!あれはただいたずらに自由を奪うものだった!あれのせいで民は自由に自分の考えを、!!誰も彼も思想を統制され、あの監獄に入れられたのはただ単にその思想にそぐわなかった者たちだった!国という枠に閉ざされたこの国に自由などどこにもなかったではないか!」


 罪人たちが見ていた、焦がれていた自由。

 しかしそれはただの幻だった。国という枠に押し込められ、その中で生きていただけのことだった。


 王は疑問だったのだ。こんなにも不自由なことがあるかと。


 国の枠にとらわれたこの民たちに、真なる自由を与えるため、王は剣を取り、以前の悪政を敷いていた王を殺したのだ。


「事実自由を手にしただろう!」


「…だが、結果的に国は荒れた。そこかしこで事件が起きる。自由という名の免罪符を手に、たくさんの人間が好き勝手する始末だ。俺の求めた自由はこんなものじゃない。これではただのだ。」


 王の友人はそう言うと、いまだわめく王に背を向ける。


「我らが王よ。これからは俺が国を治める。お前の処刑は明後日だ。…この国にこのような悪政を敷いた己を呪え。」


 その二日後、王は処刑され、新たな王が生まれた。


 その王は、以前のように監獄を設置し、罪を犯した者を檻の中に入れた。


 自由を訴える者たちは何度も何度も法の抜け道を見つけ、自由を振りかざしたが、その都度その穴は埋められていった。


 ほんの少しの自由のために、それまで以上に規律は厳しくなった。


 その国では、今でもまだ、自らの望む身勝手な自由のために剣を取るものがいるそうだ。

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