腐令嬢、美談となる


 目が覚めると、私は自室のベッドに寝かされていた。


 側に付き添ってくれていたイシメリアに事情を聞けば、どうやら私はパーティーで倒れた後すぐに連れ帰られたらしい。



「ヴォリダ第四皇子殿下のお相手をなさっている間に、気を失ってしまわれたとのことです。ですが、誰もクラティラス様を責めはしませんわ。むしろ、よく頑張ったと多くの者が称賛していらっしゃったそうですわよ」



 イシメリアが聞いた話を又聞きしたところによると、私はワガママで自己中心的と悪評の高いヴォリダの皇女殿下にいわれのないことで責め立てられるも、一爵令嬢として気丈に振る舞っていたんだって。

 あの雑なクレーマー対応がえらい美談にされたのは、それだけカミノス様の日頃の行いが悪かったせいだろう。


 またペテルゲ様も私の珍妙行動及び奇天烈言動を、緊張が限界に達してしまったのだろうと優しく受け止め、気を悪くするどころか身内が迷惑をかけたせいだと、ひどく心を痛めてくださっていたという。


 何か本当に申し訳ない……限界突破したのは緊張じゃなくて萌えだったなんて、口が裂けても言えないや。



「イリオス殿下もご心配だったようで、パーティーを辞去されて屋敷までついてきてくださいましたわ。クラティラス様の目が覚めるまで側にいたいとおっしゃって、レヴァンタご夫妻とヴァリティタ様とご一緒にしばらく応接間で待機されておりましたが、ずっと悲痛な表情をなさっていて……本当に殿下は、クラティラス様のことを心から愛していらっしゃるのですね。私、感動して胸が熱くなりましたわ!」



 イシメリアが涙ぐみながら、夢見る乙女のような瞳で語る。


 うん……それは愛じゃなくて単にパーティーから逃げたかっただけだろうし、わざと死にそうな顔してたのはお兄様に変なこと言わせないようにしてただけと思うよ。結局お兄様の猛攻に耐えきれなくなって逃げ帰ったらしいけどね。


 だけど、イリオスがうまいこと言ってくれたのと余計なことは言わないでくれたおかげで、この度の失態は怒られずに済みそうだ。



 イリオス、グッジョブ!

 お礼に、奴好みのピュアい百合絵を描いてつかわそう。


 そうだ、『リリィユリィ』のリリィちゃんと『キュンプリ』の鏡水せいらのカプにしてみるかな。何たってこの二人は江宮の最推し&二番手推しだもんね。



 前世では二人の絵を描くことを条件に、ノート見せてもらったり勉強教えてもらったりしたっけ。細部までは覚えてないかもしれないけど、久々に挑戦してみようっと!

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