しっとりミルククッキー
かなめ
しっとりミルククッキー
その日は、公園での待ち合わせだった。
「りーちゃん!ごめん待った?」
「ダイジョウブだよー?会うの楽しみだったから瀬里が早く来すぎた……ゆーちゃん、どうかしたの?」
「柚は大丈夫。りーちゃんが格好よかっただけだよ」
「?スカート汚れるよ?」
ゆーちゃん、せっかくキレイなお洋服着てるのに瀬里のお返事でその場に崩れ落ちた。だから瀬里はゆーちゃんに手を差し出したのだけど、一向に握られない。
どうしたのかな?
「立とう?」
「うん。格好いいなあ……ありがとう」
今日はずっとこんな感じなのかなあ。
出会ってから色々あったけど、最近のゆーちゃんは瀬里のこと【格好いい】ってよく言う。よく分からない。なんでかな?
バサリと羽根の音。
『いつもすまんな、瀬里』
「あ、フクちゃん!こんにちは、お元気ですか?」
『勿論だ。あやつは元気か?』
「シロくんのこと?昨日病院の日だったから、ちょっぴり落ち込んでました」
ゆーちゃんと、フクちゃんは、瀬里の大事なお友だち。フクちゃんは真っ白の羽根がとても魅力的ですっごく綺麗な梟だった。
そしてフクちゃんはシロくんを助けてくれた梟だった。雨の中探しにくかったハズなのにすぐに見つけてくれた。
ゆーちゃんは、さみしくてかなしくて、でも必死に鳴いてたシロくんをひとりでも探したかった瀬里を助けてくれたヒト。
あ、ゆーちゃん、やっと立ち上がってくれた。
「ああ、そろそろフクちゃんも定期検診のハガキくるんじゃ」
『我には必要ない』
キリッとした態度でフクちゃんは答えた。だけど、シロくんに病院が必要ならフクちゃんにも必要だと瀬里は思うのです。
もしかしたら。
「……フクちゃんも病院の日こわいの?」
『怖くないぞ怖くなんかないからな!我に怖いものなどあるものか』
「そう言うことにしといてあげます」
『そうしてくれ、柚』
「あ、瀬里、今日はおやつ持ってきたので食べますか?」
『我の分は!!』
「もちろんあるよ!」
『でかした!』
晴れてたので座っても怒られない芝生に移動した。フクちゃんが、目立つので、できるだけ目立たなさそうな場所に座る。
「瀬里、クッキー焼いたの」
「もしかして、焼きたて?」
「うん。まだ温かいよ」
「柚はホットミルク持ってきたよ」
「はい、フクちゃんの分。一杯あるから一杯食べてね」
『ん。瀬里は器用だな。柚はこの間、マフィンが炭になってた』
「炭に……あれ?でもこないだのは美味しかったよ?」
「練習したからね。あと、りーちゃんに美味しいもの食べてもらいたかったから」
実は瀬里も一杯練習して頑張って美味しいクッキーが作れるようになった。だからみんな一緒なんだなあって瀬里は思う。
『柚のが年上だと言うのに、瀬里のが姉のようだ』
「えー。ゆーちゃんお姉さんだよ!瀬里、ホントだったら二番目が良かったんだもん。でも下は増やせるけど上は無理ってよく分かんないことママとパパに言われた」
「りーちゃん……!」
「だからゆーちゃんが良かったら瀬里のお姉さんになって?」
「もちろんだよ!柚でいいならお姉ちゃんになるよ!りーちゃんのお姉ちゃんなりたい!」
『あー、柚。ミルクを所望する』
「くっ!感動に浸らせてよ」
そう言いつつもちゃんと浅いカップにミルクをいれてフクちゃんの前に置いていた。
「フクちゃん。クッキーね、ミルクに浸して食べても美味しいよ!」
『なんと!ではやろうか』
そんなある日のおやつタイム。
しっとりミルククッキー かなめ @eleanor
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます