アルファ強襲作戦

kumapom

第1話


 目の前に黒い宇宙空間が広がり、星々が光を放っている。

 傷だらけの宇宙移民船「トリフネ」が浮かんでいる。この宙域に来てから宇宙生物の攻撃に遭っているのだ。

 そして僕らを乗せた降下カーゴ船がトリフネから遠ざかって行く。向かう先は戦場だ。


 三日前のこと。移民船団の進行方向の巨大アステロイドに敵の巨大砲が見つかった。砲とは言っても、巨大な質量の何かを超高速で撃ち出す生物の一種である。アステロイドの地中深くに根を張っている。

 以前に一度出会ったことがある。

 その威力は凄まじく、一度トリフネをかすった時は船体の一部がもぎ取られた。あれをまともに食らったら、ひとたまりもないだろう。

 そして昨日、作戦が立てられた。排除命令である。


 ガーディアン部隊にも出撃命令が下った。

 僕の名はゼファ。ガーディアン部隊のパイロットだ。

 ガーディアンと言うのは頑丈な装甲を持つ人型機動兵器である。その装甲をいかして前線を維持する。


 ガーディアンは十人の小隊で構成される。フロント、セカンドバック、左右ウィングのポジションがある。


 リーダーはライオンのような性格の人である。フロントだ。勇猛果敢で動きに全く躊躇がない。常に小隊で一番の撃墜率だ。

 撃墜率で二番目はジェイド少尉である。セカンドバックだ。射撃の腕が滅法良い。なぜ二番目なのか謎である。

 そして僕を含めてその他は、左右どちらかのウィングを担当する。


 ブリーフィング室に集まった。

 リーダーを待っていると、ジェイド少尉が話しかけてきた。

「ゼファ君、この間四キロ先の敵を撃ち抜いたそうじゃないか?」

「あ、いえ!たまたまであります!」

「視力がいいんだねぇ」

「あ、いえ!どっちかと言うと悪いです!」

「……勘かい?」

「何というか……その……感じました!」

「……ほう、面白いねぇ」

 そう言って目を丸くして笑った。


「ブリーフィングを始める!」

 リーダーが入ってきた。全員姿勢を正す。

 作戦はこうだ。まず艦砲射撃でザコを一掃する。艦砲射撃で敵の砲を叩ければいいのだが、残念ながら威力が足りない。地中深くまでは威力が届かないのだ。

 その後ガーディアン部隊が降下。場所を確保。最後に工作部隊が爆薬を地中深く埋めて爆破。以上である。

「今回の作戦は困難が予想される」

 リーダーがそう言うと、一斉に注目が集まった。

「周囲の状況から、地中に敵のコロニーが埋まっている可能性がある。見えているのが全部とは限らん。注意しろ。とにかく爆薬を埋め込むまで頑張れ。以上だ」


 数分後、出撃の合図のサイレンが鳴った。射出場に向かう。

 ガーディアンに乗り込み、射出ポッドの中に入る。

 艦砲射撃の鈍い音と振動。

 そして館内でカウントダウンが始まる。

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……」

「行くぞ!」

 リーダーのがなり声とともにポッドが加速した。アステロイドに落ちていく。

 振動でポッドが揺れる。

 ガーディアンに支えられているとはいえ、なかなかのGだ。しかしここは耐えるしかない。

 地表までの距離を示す数字がクルクルと回って小さくなっていく。


 逆噴射が始まる。加速が止まり、ポッドはアステロイド表面に着陸する。

 扉が開く。中から外へ全員展開する。

 敵の砲の状態を確認する。やはりまだ動いている。


 リーダーは生き残りのイカ野郎どもを銃で蹴散らしていく。後についていく。


 セカンドバックのジェイド少尉が周りに向かって撃つ。

 そのうち気付いた。遥か彼方でも爆発が起きている。あんな遠くの敵が見えている?

 分かった。ジェイド少尉の撃墜率の低い訳が。レーダーの外だから、カウントされていないんだ。この人はやはり凄い。


(!?)


 一瞬ぞくっとイヤな予感がした。何だ?何かいる?どこに?


「十時方向に多数!キング来ます!」

 ジェイド少尉の通信が響く。キングと言うのは中でも固く強い奴だ。銃が効きにくい。

「俺が行く!」

 リーダーがポッドから槍を引き抜き突撃する。

 全員でリーダーを援護射撃する。ジェイド少尉が見事に周りのザコを撃ち抜いていく。


 その時だった。

 ジェイド少尉の足元が盛り上がり、少尉の機体が四散した。

 足元に何かが潜んでいたのだ。

 急いで銃を向け、足元のそれを銃で撃ち抜く。何かがキラキラと飛び散った。

 同時にリーダーの槍がキングを串刺しにした。


 幸い、ジェイド少尉機のコクピットは無事のようだった。


「新種だったか……しまったな」

 ジェイド少尉はそうつぶやいた。

「まだ爆弾は到着してないな。これで終わりとは思えん。ゼファ君?」

「はい!」

「君がセカンドバックにつきたまえ。目はあまり良くないようだが、どうやら何かを『感じる』っぽいんでね。リーダー?」

「ゼファ軍曹、リリーフだ。俺の背中を守れ」

「はいっ!」


 ジェイド少尉はポッドのコクピットに戻った。

 インフォメーションをチェックする。到着まであと二分。


 レーダーに敵影が映った。そしてまたイヤな予感。

「二時方向、レーダーに敵影!でも!足元に気をつけて下さい!」

 リーダーは地面を一瞥すると、槍で地面を次々と突き刺した。また何かがキラキラと飛び散った。

「まだいるか?」

 もう予感はしない。

「いえ、大丈夫だと思います!」

「じゃあ、あいつらをやるぞ!」

 そう言うとリーダーは敵に突撃し、縦横無尽に暴れまわった。援護射撃をしたが、忙しいことこの上無かった。


 そして数分後、敵を掃討していると、上空に噴射が見えた。

 ついに!工作部隊の特殊爆弾の到着である。

 工作部隊が爆弾を下ろして行く。

 爆弾はアームを展開し、ドリルで地中深くへと潜って行く。爆弾はどんどん見えなくなり、ついに完全に地中へと隠れた。


「よし、任務完了だ!全員ポッドに戻れ!離脱する!」

 ガーディアンのコクピットでカウントダウンが始まる。

「30……29……」

 急上昇するポッド。

「10……」

 急加速して上昇していく。

「3……2……1……」

 閃光。振動。

 背後で大爆発が起こった。


 ポッドは船に回収され、僕らは宇宙を漂う故郷へと戻った。

 作戦は終わった。これからも宇宙を行く移民船団には危険がつきまとうだろう。

 旅はまだ続くのだから。

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