過去

朝の太陽を浴び死神の武闘会の回避に見事に成功したロレンとレナはあるお店に向かっていた。


装飾店マーベリア


王都の表通りに店を構える国内有数の貴婦人たちの御用達にするほど綺麗かつ流行に流されず毅然とした感性のみで行われる職人技はひとつとして同じものは作らないこだわりから生まれる新たな流行のひとつとなっている。


ロレンとレナがなぜそのようなところに行くのかというと二人の知り合いが経営している店舗であるからだ。


「楽しみだね。二人でデートするのなんて初めてだし今日はマッコリたちも気を利かせてくれたからいつも以上にロレンを視ていれられる。」


「そんなの俺だって一緒だぜレナ姉は俺の好きな人なんだからいつでも見てみたいものなんだからさ。そりゃあファニたちだって大切だけど家族としての大切さだ。レナとは家族としての大切さと恋する大切さがあるからいっぱいなんだぜ。」


「もう、ロレンのバカ。こんな人が多い表通りで言うなんて恥ずかしくなっちゃうじゃない。」


「おやおやあ、あんなに俺とべったりしたくてオープンだったレナ姉はどこに行ったのかな?」


「もう。」


レナは顔を赤くしてロレンをポンポンたたきながらもその腕に込められた力は弱弱しく可愛らしかった。レナは感情の制御が思ったよりもうまくないせいか性格がコロコロと変化しやすい。思春期特有の不安定さと言えば聞こえはいいのだがそれがかえって精神疾患などの重大な病気が見え隠れしている可能性があった。ロレンもそのことに気づいておりちょくちょくレナとの過去話をすることでレナが自分を見失わないようにコントロールしていた。


「ロレンが私のことを心配してくれているのはわかっている。私も私じゃなくなってきている気がするのもロレンは私が何者かであったかを知っていてそれを思いださっせたくないんでしょう。」


「あちゃーバレたか。でも半分正解で半分不正解、レナは何者でもないレナはレナ俺の恋人であり家族だ。レナが今、自分を見失いかけているのはかつて俺の中の人物が最恐挑むときに死ぬ間際に真っ先に思い出した人物。その残滓が俺を通してレナ姉に伝わったに過ぎない。だからレナはレナで間違いないんだぜ。


レナは首を振った。


「私は知っているよ。アプフェルシュトゥルーデル、今度作ってあげるね。」


「ふふふ、叶わないな。レナ。」


「今はまだレナのままでいい。でも時が来たらロレンもロレンの中の人と話をすること。そうしなさい。いいですかあなたはまだ囚われちます。わたしも人のことは言えませんがあなたいつだって無謀な蛮勇で最恐に突っ込んでいくのですからこちらに心配させないでくださいね。」


「それは言えてる。ロレンは、我が実弟ロッツォはいつだって自分の意思を曲げない子だから虐められても家族にハブられても尚立ち向かういい弟だったからな。」


そこには背が高くなったタニア・フォン・ガロリア、その姿があった。彼女はユウイチの紹介でマライア王国の職人のもとで鍛錬を積みマライア王国屈指の装飾店を立ち上げたのだった。

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