勝負の行方は

「そこまで!!!」


燃え上がりそうなマグマの剣をいざ降り抜かんとしたとき、それは審判によって止められた。あまりにも不完全燃焼すぎる決着に不満げな表情をあらわにするがロレンとレナだったがユウゾウは違った。ある意味納得といった感じで観客たちに目を向けるように促した。


観客たちは汗をダラダラと掻きながらゼェハァーゼェハァーと呼吸を乱していた。ときに白目をむいて気絶する者や泡吹いている者すらいる。中には呼吸困難になり心臓マッサージを受ける者も多数見受けられた。


「ロレン、レナ、周りを考えろ。この熱波や気迫に耐えられるのはこの中じゃあ学園長か騎士団長クラスのものだぞ。俺たちの上下を決めるための試合ではないんだ。そのことを考えないのはまだまだ子どもだぞ。」


ユウゾウの言う通りだった。この試合はあくまでもデモンストレーションという形で行っているため観客に魅せる必要はないにしろ観客に死者が出ては元も子もないのである。観客たちが軟弱過ぎるとも言えなくはないがそれは違う。読者の皆様はご存じであろうがテレビを見るときは部屋を明るくしてからご覧ください。という注意事項の意味はご存じだろうか?


この意味は視覚からの圧倒的情報量によって気絶する。


それによく似た現象がこの闘技場内では起こっていた。


人間の第六感ともいわれる野生の氣、通称野生の勘。それを半強制的に目覚めさせられてしかもその容量がデカすぎるときた。さらに熱波、音波、衝撃波、光波。ありとあらゆる波状エネルギーが単体ですら脳の許容範囲ギリギリの範囲で行われる戦闘の視聴は観客を気絶させるには十分すぎた。


「はあ、じょうがないか。」


「ロレンも無茶するからだよ。」


「少し休憩かな。とりあえず闘技場を元に戻すかな。ファニ[魔憲・水龍]」


ハチャメチャになった闘技場に麗しき鱗を持ち何重にも重なった空気と水の虎模様の腕をもった水龍が滝のようなゴゴゴゴゴゴゴという音共に顕現した。そして水龍が煮え切ったマグマを固まらせていく。水龍は蒸発する気配すら見せずに逆に威勢を増していきながら地面を平らにしていく。


「最初からそれをやった方がデモンストレーションになったんじゃないのか?」


ユウゾウの言うことはもっともだがそれをしない理由は別にあった。


「ファニ、そのまま吸収しろ。」


ファニはグングン大きくなっていきやがて水龍を飲み込むが水龍は暴れだし中々吸収されようとしなかった。15分経ってようやく吸収された。


「なるほどな、独立した生きた魔法か。」


それが使わなかった理由。使用した魔法の後始末が面倒すぎるのだ。こうして一つ目のデモンストレーションは終わった。

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