教えてユウイチ先生
部屋に戻ったロレン達はユウイチからの説明を受けていた。父も一緒だ。
「さて、気になっていると思うが業魔についてだ。」
その言葉にロレンとビアンカは今までにないくらい目をキラキラさせる。もっともビアンカのはロレンのような未来を目指す材料という意味ではなく、新しいオモチャを見つけたような感覚だが。
「業魔とは先程のユウゾウを見た通りスライムしか出来ないものでは無い。」
「でもなんで父さんは教えてくれなかったの?」
ビアンカが父に質問する。
「そりゃあロレンがルタを倒した後に習得したからな。」
「それにユウゾウは感覚派だからな。説明がロクに出来ない。」
「そっか。」
ビアンカはすぐに納得する。
「じゃあ説明するぞ。業魔とは簡単に言えばモンスターの魔力そのものを《世界の祝福》を使い己が半生に変換したものだ。」
「?」
難し過ぎてわからないロレン達。
「魔力というのは物質、物の最小をさらに小さくした粒と棒、そして波の性質を持って生まれたエネルギーだ。故に全てのエネルギーに変換することが出来る。物質もまたエネルギーから出来る物。要は魔力は全てを操るエネルギーということ。理解できたかな?」
「うーん、多分。」
ロレンは大方は納得がいったらしい。
「全然わからない。」
ビアンカは全くわからないらしい。
「私もあんまりわからないかな。」
ビアンカほどでは無いがミーナもよく理解できていないようだ。
「半生ってことは自分の生き方に必要なものに相棒を変化させるってこと?」
レナはどこか真面目な雰囲気を出しユウイチに質問する。
「よく気づいた。その通りだ。」
パチパチと称賛の拍手をする。
「それは簡単だと思うかもしれないが実は君達の年齢では簡単では無い。ユウゾウですら自分の生き方を証明するのに今の今まで出来ていなかった。」
「ああ、ロレンがルタに立ち向かう意志を見てやっとこさ自分が望む生き方を見つけた。」
父は目を細め長年の夢を叶えたかのように話す。
「俺の場合はユウゾウと違って裏技だからな。」
「裏技?」
「知らなくてもいいことだ。」
「じゃあ業魔は出来ないの?」
「自分が何なりたいか。そして相棒のモンスターがどうしたいかを知ればできる。」
「うーんわかんない。」
ロレンはイマイチ理屈の感覚が理解できないらしい。
「ねえねえロレン君じゃあさ、あの桜のことについてまず聞いて見ようよ。チェシルはあの桜の近くの湖に居たんだし何か関係あるかもしれないよ。」
「桜?」
「あのベレーさんの描いた銀木犀と桜の絵の場所のこと。」
「ああ、スライムが手入れしてた不思議な桜と銀木犀のことか。チェシルがそれだったのか。」
重要っぽいことを話すユウイチ。
「チェシル、そうなの?」
ロレンがチェシルに聞く。
するとチェシルは触手を伸ばして水を吐き出した。
「チェシル?」
「湖から水を汲んで桜の世話をしていたのか。」
ユウイチがチェシルの意図を察した。
「百聞一見に如かず見てみるのがいい。ご飯を食べてから行くとしようか。」
◆◆◆
「みんなユウイチ義兄さんの授業はどうだった?」
母が既に昼食の準備を終え、ロレン達に感想を聞いてきた。
「楽しかった!」
「うんロレンと同じで楽しかった。」
レナもロレンに同意しビアンカ達も頷く。
「それは良かった。じゃあお昼にするけどミーナちゃんのスワンヌは確か虫系モンスターならなんでもよかったわよね。」
「はい、アンネさんありがとうございます。」
(謎の声S:ミーナって確か7歳だよな。ビアンカみたいな危なっかしいのがいるとしっかり者になるのかな?)
本日の昼食はクレソンとドクダミを下茹でしワインビネガー(白)を垂らしたものに熱血応援団鶏の鶏胸肉を蒸したものだ。主食は雑穀パンだ。
「ロレンお肉は硬すぎとかでは無い?」
「うん大丈夫。」
母は子供の顎の力をなるべく丈夫にしたいが為に内蔵の類を出していたときがありその際にロレンの顎を痛めてしまったことを気にしていた。そのため今回は鶏胸肉をフォークで刺してから蒸したのだ。いつもは包丁で筋を切るくらいのことはしているのだが今日は念には念を入れた工夫をしていた。
「そう良かった。」
重曹などにつける手段もあるが顎をなるべく使わせなければ意味が無い。硬いものが噛むということはそれだけ集中力やよく噛む習慣をつけることに繋がり栄養の吸収を助けることにも繋がる。
「アンネさんの料理お母さんのよりも美味しい!」
「それはね。ミーナちゃんのお母さんの料理の方が美味しいからそう思うの。」
「え?」
「ふふふ、ミーナちゃんのお母さんの料理は実はミーナちゃんが飽きないように工夫しているのよ。私だってビアンカやロレンが飽きないように工夫はしているけどミーナちゃんが飽きないようには工夫はしていないの。好きなものばっかり食べても飽きてしまうし、何より美味しく無くなったしまうわ。だから料理を考えて作る私達は家族みんなが飽きないようにそれでいて好きな味でも違った味を作っているのよ。」
「うーん?」
ミーナは哲学的なことを言われてどうすればいいかわからない。
「飽きない味は美味くないと思っても実は一番美味しい味だったりするのよ。そんな飽きない味を食べるからこそ飽きてしまう味を美味しく食べれるの。」
「わからないかな。」
「あらそう、でもミーナちゃんが旦那さんを持つ頃には解ると思うわ。」
まさに良き
「ねえ母さんって業魔できる?」
ロレンはふと思ってしまった。母は自分から見ても生き方というものを父以上に理解している。だからこそレナの言った推測からすれば母が一番業魔を習得できたのでは無いだろうかと。
「使えないわね。でも家族のみんなに何かあれば使えるようになるかもね。けどお母さんにそんなことさせないでよねロレン。」
そういいロレンを撫で始める母。
「うん。」
ロレンも頷く。
ナデナデ
何故かファニとチェシル、そしてマッコリまでもが触手を伸ばしてロレンを撫で始めた。
「マッコリ、主人を差し置いてなんて羨ましいことを。」
そういいマッコリを引き剥がすレナであったがマッコリの触手は伸びるは伸びるは一向に離そうとしない。
「あれチェシルもできるようになったの?」
チェシルはもう一つ触手を出しユウイチを指差す。
「ああロレン君が話しているうちに少々触手のコツを教えてあげたのさ。」
ユウイチは触手の指導をしたと話す。
(謎の声S:なんかロレンがファニ達の主人なのに育てている人がコロコロ変わっている気がしてままならない。てかペットを拾った子が結局親に世話を任すのに近いのか?)
謎の声Sの話は放って置くがこの作品の主人公ロレンはそんな触手の指導を受けた相棒達を撫で返していく。
ナデナデ
「チェシル、マッコリありがとう。僕の為を思って触手も練習してくれたんだよね。」
そんなロレンの言葉に感激したのかチェシルとマッコリはロレンの身体を這いずりまわり、身体の至るところに吸い付きハートマークの後を残していく。終いには触手で両頬を掴み自分の身体を持ち上げまるでキスするように身体を近づけてきた。
「コラァァァァ!」
誰かが凄く大きな声を出した。そしてファニがチェシルとマッコリをはたき落とす。
「コラァ!チェシル、マッコリ!主人の最初の相棒を差し置いてナニやってんのかしら。」
今確かにファニの方から聞こえた声。
「主人の初めては私が貰うの!!」
「ファニ、ロレンの初めては私のものだよ。」
レナは気がついていた。ユウイチが既に触手を使えるファニに何も教えないはずがないと。
そしてユウイチは読み通りサムズアップをしていた。この出会ってまだ半日も立っていないと言うのにどうやって教えているのだろうか。
「ファニ?」
「そうだよ主人。私喋れるようになったよ。」
ファニは身体を震わせ女性の声で話している。
「主人、頑張って主人と同じになるから私と番になって!」
ファニは触手をめいっぱい使ってハートマークを作り告白してきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます