ピクニック

昼食を終えたロレン達はミーナと一緒に景色を見に行く約束のために村の広場に来ていた。


「おまたせビアンカちゃん、ラルちゃん、レナちゃん、ロレン君。」


「全然待ってないよ。ミーナお姉さん。」

絵に描いたような見事な女性への対応のロレン君。


「ええ、私達も今来たところよミーナ。」

ビアンカはロレンの言ったことに補足を加える。


「ミーナも準備は大丈夫?」

本日、ロレン達のお菓子及びレジャーシートの入った籠を持ったレナが言う。


「うん大丈夫。ママが作ってきてくれたのを持ってきたから。」


「じゃあ行こう。レッツラゴウ!!」


「レッツラゴウ!」


ビアンカとラルは、はしゃぎながら先導して出発した。


「最初は湖の方に行くよロレン君。」

行くルートを話すミーナ。


「湖の方には魚やザリガニがいるから適当な棒を竿にして釣るのもいいわね。」

ビアンカ、もはや男子。


(謎の声S:全然女らしい遊びをしていないぞビアンカ。まあ男女比1:3ならしょうがないのか。)


「湖では何が釣れるの?」


「主に迷走鮭が釣れるわね。後は虹メダカとかが泳いでいるわ。大きいものだとドジョウナマズとかが釣れるわよ。」

ビアンカが答える


「ロレン、釣りをするにはまずエサが必要になるからお菓子を食べるときはちゃんと手を綺麗にしてね。」

レナが注意する。


「レナちゃんの言う通りだね。エサにはミミズのようなワーム種とかオニチョロって言う昆虫種のモンスターを使うから手は洗っておかないといけないよ。」

ミーナが補足を入れる。


「ま、私は関係ないけどな。」

ラルが炎をチラつかせながら言う。


「うん。ところで釣ったお魚はどうするの?」


「釣ったお魚は私が締めて持ち帰るかスワンヌのご飯にする予定。」


「レナあなたいつから魚なんて締められるようになったのよ。」


「昨日お母さんの家事を手伝っているときに話したら干し魚にする奴で教えてもらった。」

自身満々に言うレナ。


「レナちゃんそんなことできるようになったんだ。凄いね。」


「いつかロレンに食べて貰いたいから。」

恋する乙女レナ、その仕草はとても6歳とは思えないほど可憐であった。


そうこうしているうちに湖に着いたようだ。


「うわぁ広いね。向こう岸が棒にしか見えないよ。」


ロレンは湖の広大さにはしゃいでいた。


「ロレン、あんまりはしゃぎ過ぎると湖に落ちるわよ。」


「そうだよロレン君。湖はかなり深いから落ちたら戻れないからね。」


「うんわかった。じゃあ周りの小川を見てくる。」

そう言いロレンはファニを連れてぶらつこうとする。


「それでも少し深いところもあるらしいから私も一緒に行くよロレン。」

レナが名乗り出てロレンと一緒に行くことになった。


「じゃあミーナ、私たちは釣りの準備をしましょう。」


「うん、あっちの方に真っ直ぐな枝のなる木があっちに行こう。」


「じゃあ私はのんびりすっかな。」

ラルが寝ようとする。


「何言ってんのラル?あなたも手伝うのよ。」


「えーやだ。」


「やだじゃないわよ。あなたがいないと釣り糸がこしらえないでしょう。」


「やれやれ、精霊使いの荒い主人だなビアンカは。」

ラルがぼやく。


「ん、なんか言った?」


「なんでもないさ。手伝ってやるよビアンカ。」


そう言いビアンカ達は竿作りに取り掛かった。



一方その頃ロレン達はというと


「レナ姉さんこれ何?」


ロレンが虫を手に持ってレナに質問する。


「それはオーガヤンマの幼体でやごっていうの。トンボ系のモンスターの幼体は総じてヤゴって言うからね。」


「へえそうなんだ。姉さんはなんでこれがオーガヤンマのヤゴってわかったの?」


「ほら背中に小さなトゲが四つあるでしょう。それがオーガヤンマの証拠。」


「じゃあファニが捕まえたのは?」


ファニの方を見ると触手を巻きつけて何か獲物を捕まえていた。


「アレはオタマジャクシカエルのオタマジャクシ。」


「オタマジャクシカエル?」


「カエルの子供のことをオタマジャクシって言うんだけど。オタマジャクシカエルはカエルになってもオタマジャクシ見たいに背びれが着いたままだからそんな名前になったらしいよ。ほら、ここにちょうど大人のオタマジャクシカエルと他の種類のカエルがいるから見比べてみよ。」


レナは指を指す方向に二匹のカエルがいた。片方は黒く尾びれがついていて、もう片方は緑色をした尾びれのついていないカエルだった。


「こんなカエルだから別名フォーエバーチルドレンって呼ばれているの。」


「そうなんだ。ずっと子供のままって意味だよね。」


レナが答える前にファニが丸印を出す。


「ファニ、私の役目を取らないで。」


そう言うとレナはファニの触手を掴みぐるぐると回す。


「レナ姉さん。ファニが可哀想だよ。」


「大丈夫。ファニくらいのスライムになれば結構丈夫だからこれくらいじゃあ身体はちぎれない。ファニ、ついでに釣り餌も取るよ。投げるから網状になって。」


そう言いレナはファニを投げた。


ファニはレナの指示通りに触手を網状にさせ釣り餌となる虫系モンスターを絡み取っていく。


「ちょっとファニ!なんでレナ姉さんの方がファニのできる技を知っているのさ。」


ファニは釣り餌をレナに渡すと触手でエクスクラメーションマークとクエスチョンマークを同時にだしどうすればいいかわからないと表現している。


「それは私がファニと研究している時にマッコリが気がついたから。」

マッコリがポンポンと跳ね、そうだと伝える。


「ファニ、今度はちゃんと僕たちだけのオリジナル技を作ろう!」


ファニは触手で丸印を作り了解の返事をする。


「ロレン。そろそろビアンカ達も準備をやり終わったと思うから戻るよ。」


ファニの取った釣り餌を麻袋に入れながらレナが声をかける。


「うん、今行くからちょっと待って!」


ロレン達はビアンカ達の元に行った。


ビアンカ達のところに行くとラルが草を燻していた


「ラルは何をやっているの?」


「ん、ロレン戻ってきたのか。見ての通り草を燻しているのさ。草を燻して繊維を編めば糸になるからな。」


「へえ、ラルってそんなことできたんだ。」


「あったりめえよ。こんなこと朝飯前さ。」


ラルは筋肉のない腕を捲り力こぶがある感じを醸し出す。


「ねえラル、ビアンカは?」


「ビアンカはそこで木を削っているぞ。」


ラルが指差す先には木の棒を石で削っているビアンカとミーナと同じく木の棒をクチバシで削っているスワンヌの姿があった。


「ビアンカ姉さん!」


「ロレン戻ってきたのね。小川は楽しかった?」


「うん楽しかった!」


「よかったねロレン君。じゃあもうちょっとで釣りができるから待っててね。」


「ビアンカ、ミーナこっちは終わったからロレン達に手伝わせていいか?」


「じゃあロレン、ラルの指示で釣り糸を作ってみなさい。」


「うん、ラル教えて。」


「そいじゃあこれを裂いてからこうグルグルと紡いでくれ。」


そう言いラルはお手本を見せる。ラルは草の繊維を裂き2本を紡いで糸にしていく。ラルがロレンに燻した草を渡すとファニが触手でつんつんとつついてきた。


「ファニ?」


ファニは触手で自分とロレンの持っている草と釣り針を指す。


「自分がやる?」


ファニは丸印を出す。


ロレンはファニに草と釣り針を渡すとファニは触手で器用に草の繊維を裂き、さらに触手を小さくささて草をラルのやった2本を紡ぐやり方ではなく5本で紡いでみるみるうちに糸を作成した。しかも途中に重りの石を先っぽにロレンの持ってきた釣り針までつけてある。


「ファニは糸を紡ぐのが上手い。やっぱりチーズを作るときから気づいたけど細かく丁寧に作業をしてるね。」

レナがファニを褒める。


「これで釣りができるわ。」

どうやらビアンカ達は竿を作り終わったらしい。


「はいロレン君。これに糸をくくりつければ完成だよ。」

そう言いミーナはスワンヌの作った竿をロレンに渡してきた。


「ありがとうミーナお姉さん、スワンヌ。」


「どういたしまして。」


ロレンは竿を受け取ると糸をくくりつけるように掘られた窪みに糸をぐるぐる巻きにして仕上げに固結びをしてくくりつける。


「ロレン、これ餌。なるべく先っぽにくくりつけて。」

そう言いレナが渡してきたのは先程捕まえた虫系モンスターの中でもワーム型のモンスターだった。


「じゃあ釣りをするわよ。」



こうして湖での釣りが始まった。

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