アマチュア登録
次の日、ロレンは熱血応援団鶏が鳴く前に父に起こされていた。
「十の氣のバリアは破れたか?」
「うんうん、破れてないと思うよ。」
「特に変な夢とかも見なかったんだな。」
「うん。」
「よし、じゃあ昨日と同じような訓練をすると言いたいところだが。昼までは時刻豹の固有術を使うのはやめといたほうがいいからな。今日はちょっと街まで行くぞ。朝ごはんを食べたらすぐに行くからカバンとかの入れ物を準備しておけよ。」
「母さん達と一緒に行かないの?」
外出なんぞしたことのなかったロレンだがビアンカ達を起こさずに話しているところを見るに町に行くのはロレンと父だけではないかと予想していた。
「ああ、だからお姉ちゃん達には秘密な。母ちゃんには言ってあるから、食事のときに言うなよ。」
男の秘密の会話をするがごとくヒソヒソ声で言う父。
「なんで姉さん達と一緒じゃダメなの?」
「ビアンカがはしゃいで迷子になるからだ。」
ロレンはビアンカがはしゃいで迷子になることを想像した。
「うん、わかった。」
「じゃあ朝ごはんが食べ終わったら訓練って程で行くからな。」
朝食にて
本日の朝食はライ麦のパンと大麦とベーコン、たんぽぽの若葉の入ったミネストローネである。
「そういえばロレン。十の氣のバリアは取れたの?」
「うんうん、取れてないから十今も膝の上に乗せてるよ。」
ビアンカはテーブルの下を覗き込むとロレンの膝から十の尻尾が見えた。
「ふふ、ロレンは大変ね。」
母が小さな声で呟いた。
「なんで、母さん。」
母に質問するはビアンカ。
「十にファニにレナとモテモテじゃない。」
レナは変態度は少なくなったものの食事のときはロレンの隣を必ずキープしている。
「ロレン今日も訓練を頑張ってね。」
「うん。レナ姉さん。」
今日も楽しい1日が始まる。
朝食が終わりロレンは父と町に向かうため森に来ていた。
「じゃあロレン。千に乗れ。」
「うん。」
ロレンは千のモフモフで肌触りの良い背中に乗る。そしてロレンを包みこむようにして父が後ろに乗った。ちなみにファニと十はロレンの前に乗っている。
「じゃあ出発するぞ。」
ブォン
空気切り裂くほどに一気にとんでもない加速をした千。無論ロレンの顔はお見せできないような顔をしている。
「ぼほはふにぃゔゔごふょゔふゃて。(父さんスピード落として)」
「ロレン、何言ってるかはわからないがもっと飛ばすから気をつけろよ。」
そう言い父は千にもっと飛ばすよう指示した。
ロレンの苦難はまだまだ続く。
「ロレン着いたぞ。」
ロレンは息をゼェゼェ言わせながら千にしがみついていた。
「疲れたのか?少し飛ばし過ぎたか。」
やべえやっちまったとばかりに頭を抱える父。
「少し休んだら行くぞ。」
町の入り口には2人の女兵士とその相棒の馬たちが居た。馬には水のような鬣を生やしていた。
「此れは此れはユウゾウ殿。本日はどのようなご用件で。」
女兵士の1人が父に語りかける。ユウゾウは父の名前である。(作者の力不足によりそもそも名前を考えていなかった件。)
「今日は義息子の登録をしようと思ってな。」
父は自慢気にロレンを撫でながら言う。
「おお、そうでしたか。いやはや1ヶ月足らずで冒険者を志すとは。やはり、貴方様の兄上であられるユウイチ様と同じ《スライムの祝福》を持つ者同士。親は子に似ると言いますが親戚にも似るのですな。」
流石Rランク冒険者の育てた子だけはあると言った口調の兵士。
「そりゃあな。《スライムの祝福》を授かって親戚に自慢できる《スライムの祝福》を持つ奴がいちゃあ漢として燃えねえわけねえよな。」
「確かにそうでありますな。私としましては三女のベレーちゃんに次いで欲しかったでありますな。」
「そいつはしょうが無いさ。ベレーは俺のつける訓練に早々にリタイアしちまったからな。ロレンはやる気が違う。それにその相棒のファニも協力的だしな。」
ちなみに町にロレンの住民票を作る際にロレンは来たことがある。ロレンは覚えていないが。
そろそろロレンが話が長いと思い始めた頃。もう1人の女兵士が話しかけてきた。
「ねえ、僕。君は本当にそこにいるお父さんの訓練をつけてもらったの?」
「うんそうだよ。まだ一日だけだけどね。」
あら、ロレン君人見知りしないのね。
「それでもすごいよ。昔、君のお父さんに半刻だけ訓練をつけてもらったことがあるけれど。お姉....おばさん直ぐにバテちゃったよ。」
流石に子供と大人とでは訓練は違うとは思うが散々子供達が諦めたということを聞いた兵士だロレンのことを純粋にすごいと思ったのだろうロレンを褒める。
「うん、僕もそうなりそうだったから。もっと頑張ってファニを強くしたいんだ。」
「そっかじゃあ頑張ってね。お父さんのお話も終わった見たみたいだし訓練これからも頑張ってね。」
「うん、ありがとうお姉さん。」
口が上手いロレン君。
「いい子だね。わからないことがあったら私と同じ格好をした人に聞いてね。」
この世界の兵士はお巡りさんの役目をしているらしい。
「じゃあロレン行くぞ。」
「うん父さん。お姉さん、お馬さんバイバイ。」
ロレンは話した女兵士とその相棒の馬に手を振る。
「バイバーイ。」
「ヒヒーン。」
ロレン達は町に入っていく。ロレン達が居なくなってから父に話しかけていた兵士が 言う。
「オマエ、今月の給料、保険料と国税抜いて80パーセントカットな。」
「そんあ殺生な。」
いきなり手取り月収8割カットの死刑宣告を言い渡されたロレンに話しかけていた女兵士。
「貴様、幼い子供に手を出すとは万死に値する。よってその処分だ。イエスショタノータッチ。」
その心は少しばかり犯罪染みていた。
「そんな幾ら彼氏に逃げられたからって、私が小さな子に手を出すわけないじゃ無いですか。」
さらっと彼氏がいたアピールをする。
「貴様、私が彼氏いない歴イコール年齢で未だに彼氏どころか合コンで男の子に逃げられることに対する自慢か!」
この女兵士、肉食を超えてシロアリ並みに土に還るまで貪ろうとする本能の目であるために男の人に逃げられるのである。
ちなみに密かにロレンの父ユウゾウを狙っていたが母アンネにしかなびいておらず、アピールしても意味がないことに気づいていない。
「そんな、もうどうしようもないじゃ無いですか。」
そんなこんなで今日も色恋は人を変える。
町の中
ロレン達は冒険者ギルドに来ていた。
冒険者ギルドは石造りで町で一番目立つ建物だった。
「これからする訓練は冒険者になった方がしやすいからな。アマチュアだが登録していくぞ。」
「うん。」
冒険者ギルドに入っていくロレン達。
冒険者ギルドの中は外装と違い壁紙があり、骨組みに使われていた木が見え隠れしている吹き抜けのような作りで食事スペースが設けられており机はかなり大きめの長机である。
「よしロレン。あそこの人がいっぱい並んでいるところに行くぞ。」
「うん。」
ロレン達は並んで待つ。
待つこと10分後
「はい、次の方。おや、ユウゾウさん。またお子さんに無茶な訓練やらせに来たんですか?」
受付の女の人が父に向かって話しかける。
「おいおい人聞きの悪いこと言うなよ。俺は息子達に生き残って欲しいからつけているんだぜ。それは愛あっての教育だろ。」
「それは普通に愛のある教育とは言いません。鬼の躾です。坊や、お父さんの訓練が嫌になったらいつでも私たちに声を掛けてね。すぐに坊やのお母さんに連絡するから。」
やはり父の訓練は異常のやり方らしい。というかまたと言ったと言うことはこの父親、かなりの頻度で冒険者ギルドで訓練させているぞ。
「お姉さん、僕強くなりたいから嫌じゃないよ。」
「そっか、じゃあ登録するにあたっての説明をするよ。まず、ランク制度やプロ制度はアンネさんに聞かされているだろうから省くけど。登録するのに必要な物があって先ずは住んでいる国の住民票、これは君のお父さんが持っているから気にしないで。」
ロレンが父の方を振り向くと父が自分の住民票をヒラヒラさせていた。そしてロレンは受付の方に視線を戻す。
「後はお金、銅貨1枚でいいわ。」
チャリン
父がロレンに銅貨を渡す。
「はい、お姉さん。」
「うん、ありがとう。最後にこれを読んでサインしてもらえばもう冒険者よ。」
そう言い受付は紙を出してきた。しかしロレンには背が足りないので父に持ち上げてもらう。
冒険者ギルド以下これを甲とし契約者を以下乙と呼ぶ。
甲は乙が1年以上の接触がない場合、甲は乙との登録を破棄する。再度登録する場合は新人となる。
乙が甲に登録を何らかの事情により破棄したい場合は甲に申し込めば乙の登録を破棄する。再度登録する場合は破棄したランクとなる。
甲は乙同士の争いには干渉せず、国もとのルールのもとで対処する。
乙は甲の出す依頼者に殺傷及びそれに準ずる害を与えた場合、国のルールに則り処刑後、甲を永久追放とする。
乙は甲の出す報酬から2割を甲に収める。
甲は乙の功績によりランクを上げることがある此れは各甲のギルドマスターの裁量に準ずる。
甲は乙の依頼に対しての質問は答えなければならない。甲がこれを破った場合、甲は乙に損害賠償を払う。
最後に甲は乙が未知に対する探究心が絶えず未知を求め続ける者であり続けることを祈る。
冒険者ギルド
「読んだ?代筆は可能だけどお父さんに書いてもらう?」
「うんうん、自分で書く。父さん僕の名前を書いて!真似して書くから。」
「おう、すまないがメモ用紙とペンを貸してくれないか。」
「はいどうぞ。」
父は紙とペンを受け取るとサラサラと書いていく。
「ロレンっていうのはこう書くんだぞ。」
Loren(ローマ字で書いてるわけじゃないからね。イタリア語だよ。)
「うん、頑張って書く。」
ロレン初めて文字を書く。やはり文字を書くのは読むのとは違い難しいのか手間取っている。
「お姉さんできたよ。」
必死に書いた字は拙いながらも丁寧に書こうとした努力の見える字であった。
「うんありがとう、ちょっとまってね今カードを作るからちょっとまってね。終わったら呼ぶからあそこのテーブルで待っててね。」
「はーい。」
「じゃあ、ロレン結構かかるからまた十の氣を剥がせるか。テーブルに座りながらでいいからやってみろ。」
ロレンは再び十に氣を送ろうと試し見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます