第1話『問題児・紅』
俺の名は薙紫(なぎし)紅(くれない)。
至って普通の小学五年生だ!
という自己紹介がしたかったけど、しかし俺は至って普通の小学五年生ではない。
なんだか色々と普通じゃない。
その色々は追い追い説明するとして、とにかく俺は普通じゃなかった。
それはもう、日常に支障を来すレベルで。
「あれ?余っちゃったか。じゃあ紅くんは先生としようか」
小学校の道徳の時間。
人数が偶数のクラスで、ペアを作る…休みも遅刻もいない。という条件の中で、俺は、余っていた。わかるだろうか。
俺を避けたいが為に3人ペアになった奴らがいるってことが。そして、俺の胸の痛みが。
普通じゃないだろう?
まあ小学生というのは些細な理由でも人を差別するものだ。だからそれは、いい。
問題なのは、些細な理由ではないというところだ。あんまり緊張せずに聞いてほしい…その理由を話すことにしよう。そしてそれは普通じゃないポイントその2でもある。
俺はある魔法を持っている。
おっと、ページを閉じないで聞いてほしい。
魔法といっても、誰もが想像するような素敵なものではない。火や水を出したりなんて出来ないし、それ以前に俺はそれを使えない。
どういうことかというと、その魔法は、
呪いなのだ。
生まれた時からある、呪い。
負荷能力と言って、主人を傷つけるだけの能力だ。そして俺の場合、それを逆に利用したりなんてことも出来ない。
とにかく。それのせいで、俺はクラスで『なんとなく嫌な雰囲気の奴』という立ち位置になり、仲間に入れてもらえないのだ。
そう信じたい。
「じゃあ、ペアの人と話し合おう!紙にまとめられたら提出して、出来た人から休憩!」
そうそう、道徳の授業だった。
俺は教卓と机を合わせて話し合う。
「紅くん。どう思った?」
「……」
先生が聞いてくる。
今日紹介されたストーリーについてどう思ったかを。ストーリーは要約するとこういう内容だった。
ある魚の国がありました。
魚の国の王様は娘に、結婚相手の候補を2人紹介しました。
顔がいいフグ。お金持ちの鯛。
どちらにするかと言われた娘。しかし娘には既に別に心に決めた魚がいて、王様はそれを認めてくれました、ハッピーエンド。
「…紅くん、この時の王様はどんな気持ちだったと思う?」
「…………」
「紅くん…?」
因みに先生も俺を嫌がっているようだった。
俺は問題児、らしい。
だから俺はわざと、嫌がらせのようなことを言うのだった。
「先生、イケメンや金持ちは悪ですか」
「え、いや、違うよ」
「違いますよね。でも、顔が良いから他は悪くあってほしいなとか、金があるから他は無かったらいいなとか、そういう持たざる者の願望が文章から見えすいてるんですけど」
「いや、そんなことはないよ…」
「そして、姫が選んだ魚の良いところはなんでした?」
「優しいところだね」
「でしょう。つまりこれは作者なんですよ。作者がこの選ばれた魚なんです。
きっと優しさだけが取り柄なんでしょうね…でも現実はイケメンや金持ちの方が結婚相手に選ばれますよね。」
「……」
「非現実的なんですよ先生、だから王様はこう思ったでしょう。
ああ、どこで育て方を間違ってしまった!」
多分こういう態度が、事態を悪化させているのだろう。自覚してる。
そして授業は終わり、放課後が訪れた。
俺は孤独に、家に帰っていった。
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