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 いつもそうだった。2番目の人生。

 いつからだろう、そうだ きっと生まれた時からだ、だって私は次女なんだから。

 小学校のかけっこではいつも大抵2着だった。少なくても1着になった記憶は無い、常に私の前には誰かが走っていた。追い抜こうと思えば追い抜けたのかもしれない、ただ追い抜こうとは思わなかった。

 中高のクラスの成績も大抵2番だった。トップになった事は無い、こればかりは2番になろうと思ってなれるものではないので実力なんだろう。

 おかあさんが作ったドーナツを選ぶ時も2番目に大きなドーナツを選んだ。

 食堂でもいつも2番目に食べたいものを注文した。

 それでよかった。それがよかった。だから2番目に好きな男を選んだ。その男には妻がいた。だから選んだ。2番目になれるから。なのに、なのに、なのに、なのに……

 男は妻を殺害した。離婚を断られて殺害した。離婚して私と結婚する為に妻に懇願して拒否されて殺害した。いい加減にして欲しい、これじゃあ私が1番になってしまうではないか、そんなの嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 どうにかしなければ、泣き崩れている男を放ったらかし額の割れた妻の亡骸の前で思案する。

 どう見ても死んでいる。死者は生き返らない。ゾンビってどうやって造るんだっけ、キョンシーでもいいや、ホルマリン漬けにしてリビングに飾る?とにかく1番は彼女なんだから退場は許さない。なんとしても2番の座は守り抜かねば。


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「 なぁんて話 どうよ 」

「 どうよじゃねぇよ 意味ワカメ オチが見えません ボツ ウチはオカルト誌なんすよ そっから話どうすんですか 」

「 いやいや ツクが紙面の穴埋め考えろって言うから徹夜で考えたんだぞ 」

「 ってコラ 変なとこ触るな いいから続き話せよ ダメ人間 」


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 2番目の男の2番目の女。このポジションを保持する為には現実的に考えて男に1番目の女を充てがうしかないだろう。妻の死体をお風呂場で処理しながら考える、しかしそれが正解?そんな無理矢理作った2番で私は満足出来る?でも満足するってこと自体が1番目の感情ならば満足してはいけないのかしら、ただ、それを言い出したら全てが破綻してしまうじゃない、今までの2番目でいたいという感情全てが矛盾してしまう、それが私の1番の望みならば私は2番目ではない。


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「 あのぉぅ ユウリ君 何を言っているのかなぁ 」

「 だぁからぁ 彼女の2番目でいたいという感情は彼女の1番の望みなわけだよ そもそものスタート地点から矛盾が生じてる その矛盾に彼女が気付いたんだよ 」

「 はあ なんか迷宮ってません 大丈夫なんですか 悩みがあるなら聞きますよ 」

「 下半身の悩みなら沢山あるぞ 」

「 でた ゴミ人間発言 そんでどうなるんすか 」


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 じゃあ2番って何?2番目である事が私の1番であったなら全てが間違っていた。そんなもの私は求めてなんか無い。純粋な2番。それは果たして存在するの?私はどうすればいいの?教えてパトラッシュ。


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「 ストッピ パトラッシュどっから出てきた いい加減にしないと食い千切りますよ 」


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 少なくともこの血まみれのお風呂場には私の求める答えなんて無い。あそこで変な声を出して泣き続けている男も答えなんて知らない。ならば全ての真理を知るものに聞くしかない。探さなければ、例えそれが地の底だろうが構わない、銀の鍵を用いて真理の扉を開くのだ。そこに私の求める答えがある。

 "ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん"


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「 何唐突にクトゥルフ神話になってんだよ 」

「 オカルト誌言うからしゃあないやん 」

「 もう 真面目にやって下さい 」

「 わかった マジメにやる 」

「 って そっちじゃないし 変態 」

「 いいじゃんか ツク 」

「 もう 私を2番目にしたら承知ませんよ 」




『 続報です 先日 世田谷区で起きた殺人事件の現場の屋根裏からもう一体の女性の遺体が発見されました 一人目の犠牲者である三田きららさんの夫である容疑者の三田圭一は依然意味不明な供述を繰り返しているとの事です 2番目の被害者の身元はまだわかっておりません 遺体は浴室で発見されたきららさん同様かなり損壊されており胸には大きな銀製の鍵のような物が挿し込まれていたという事です 以上 報道デスクでした 』

『 二人目の犠牲者ですか 』

『 早く身元が分かるといいですね 2番目の犠牲者の冥福をお祈りします 』

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