つばめと菜の花
どうにもこうにもペペロンチーノ
ただいま
マンションのポストを開けると、中身が、ヴァッ、って、音を立てて滑り落ちた。
ヴァッ、て。
ピザ、ピザ、分譲マンション、分譲マンション、分譲マンション、ガス、水道、ピザ。ピザ。寿司。セール開催のお知らせ、電気、クレジット明細。「水道トラブルおまかせ」などと記されたマグネットに関しては、冷蔵庫に貼り付けたとたん生活臭がものすごいから敵対心すら抱いているがため、駐車場に向かって勢いよく投げつけてみたところ、誰かの日産マーチに貼りついた。
自分の家のはずなのに、私は毎回、帰宅という行為の違和感を拭うことができない。子供の頃「放課後はおれんち集合でスマブラやろうぜ」とかいう奴の玄関入った時のあのモワッとした排他感。あれ、よ。しかしながら、また朝がやってきて、そんな自宅から外に出るときもまた、似たような排他感に苛まれるのですよちょっと聞いてくださいよ。私が違和感なく帰宅できる場所はどこでしょう。ベストアンサーにはコイン千枚差し上げますから、ねえ。ねえ、ねえ、ねえ、ねえ。ねえああストロングゼロ飲も。
くそみたいなリア垢のインスタチェック。食べ物ばかり載せて楽しいか。食べるという行為を撮影によって妨げているにもかかわらず? すぐ向かいの席にもお皿がありますよね、皆様、せっかく生身の人間がお前ごときに貴重な時間を割いているのにスマホですかおめでてえなもういっそのこと逆にスマホと一緒に出掛けて友達タップしていたらいかがですかってまあ私が一緒に食事行く友達いないだけの僻みなんですけれどもねサーセン情緒不安定すぎて回転万華鏡。落ちゲー感覚でスワイプしながら無心でハートを押し続けていると、そのタップのひとつひとつが、きちんと鼓動している私そのもののように感じて、だから毎晩こうしてインスタ開いて、心臓マッサージみたくハートをリズミカルに押すのであった。なんのためになるのだろう。しらねえよそんなこと。でも生きていくためには、私には何となく必要な応急処置なのかもしれない。毎晩インスタでハートをタップして延命治療。ばっかみたいだな。
つばめと菜の花 どうにもこうにもペペロンチーノ @sin-cos-tan
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