短編魔導書から始まる塔攻略
結城 奏者
第一節 最悪の現状
ロールフレインク国。
それが世界で一番大きな国の名前。
けれど、今この国は絶望の淵に立たされていた。
地震と共に、国の外壁から姿を現した十二の塔。そしてその後、上空に出現した二本の時計の針……。
空挺団が上から観測した情報によると、それらは案の定『時計の形』をしているらしい。その後、塔には『一時の塔』『二時の塔』『三時の塔』というようにそれぞれ時間の名前が与えられた。
──そして三日経った頃、上空に出現した時計の針が一時間程、動き出した。
一時の塔に針が合わさると塔は崩壊し、国民たちは「このまま時が経てば塔はなくなるのでは?」と思ったのだが、崩壊から五分後。どこからか内臓を震わせるような鐘の音が国中に響き渡り、ランダムに国民十万人の心臓が停止し、死亡した。
本当にランダムだった。
貧しかったか裕福だったか、とか。
友達が多かったか少なかったか、とか。
安定した職に就いていたか就いていなかったか、とか。
健康だったのか不健康だったのか、とか。
そんなことは全く関係なく、本当にランダムで。
十万人という尊い命が、一瞬で失われてしまった。
死ぬことを恐れた国民は当然、国外へ逃げ出そうとする。それは王家の人間も例外ではなかった。
全国民が国外への逃走を試みたが、結果的に言うと……、逃げれなかった。
国の周り全てが濃霧に包まれており、進んでも進んでも先が見えないどころか、
いつの間にか、国の中に帰ってきてしまうのだ。
その後、国中の魔導士が結託して濃霧を晴らそうとしたが、あまりにも強固で未知の魔法が霧を生み出し続けており、晴らすこともできなかった。
ついに王様は傭兵や軍隊を国中から収集、塔を攻略する作戦を立案し、翌日実行に移した。
しかし塔内部は規格外の
本当の絶望の淵に立たされた国民たちは暴動を起こすもの、塔に挑戦しようと体を鍛えるもの、霧を晴らそうと魔法研究に勤しむもの、自ら命を絶つもの、となっていった。
──……そんな激動の日々の中。僕、レン・アイゼアは、いつもと変わらず図書館で読書をしていた。
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