そうだ、クイズをしよう!
蒼宙
2番目よりも1番目
「先輩!今日こそ負かしに来ましたよ」
そう元気に言って我らがクイズ部の部室に入り込んできたのは一年の弓崎だ。
「なんだ、今日も来たのか……」
俺はいかにも面倒な声で返事をするが、
「なんだじゃないですよ。僕には高校生クイズへの挑戦がかかってるんです」
あいつは全くあきらめそうにもない。そもそもウチで扱っているようなクイズは高校生クイズには出てこないのだが。
「だから別にウチは高校生クイズに出る部活じゃないって言ってるだろ?」
「先生がここの部員かそれに勝つ人が出るのが好ましいって言ってるからですって」
まったく、先生にも困ったことだ。まあ、大方さぼってるからとか思ってついでにテコ入れしようとしてるだけな気もするが……。
「まあいい。おーい、花ちゃんいるかい?」
クイズの準備をさせようと後輩の部員を呼ぶが返事はない。
「あれ、花?いないの?」
部屋の奥にいるはずだから、と見に行くと
「自分でやってください先輩。もう何度目ですか?誰もいないので問題の読み上げは私がしますから」
ため息をつきながらそう返事をする花がいた
「そっけないなぁ」
「ここまで長引いたのは先輩の負けず嫌いのせいですからね?」
まあ、そういうことなら
「じゃあこれで頼もうかな」
そう言って花に手渡した問題は――
弓崎視点
「なんだか先輩すっごく悪い顔してないですか?」
いかにも何か企んでいそうな先輩に苦笑いしながら尋ねると
「え、そうか?」
……一瞬で元の顔に戻った?いやいやもういいか。ここで気持ちを切り替えておかないとまた勝てないし。
結局いままで21戦全敗のままで全然勝てそうにない。先輩はイヤイヤやっているようで結構楽しそうだけれども。早めに勝たないと大会には出られない。ここは頑張るしかない。そう気合を入れる。
「それじゃあ行きますよ、先輩、由樹くん。ルールはいつも通りの全25問で、ジャンルは日本のもの、お手付きはその問題の間の回答禁止、これでいいですね?」
「はい」
「おう」
先輩とほぼ同時に返事をする。
「第1問:日本における最も高い建ぞ――はい由樹くんどうぞ」
先に押したのはボクだ。ここはきっと
「東京スカイツリー」
「正解です。というかなんでこんなに簡単な問題が?」
「さすがだな弓崎。どんどん早くなってる」
先輩にも褒められる。でも気を抜いたりはしない
「さあさあ、次に行こうか」
先輩はそう急かす。それにしても最初の問題は簡単すぎるからきっと罠があるのかもしれない。慎重に回答しないと。
「それでは第2問――」
伊藤視点
「さて、ここまでで4対6で弓崎の勝ち越しだな?」
今日はいつにも増して弓崎が強い。なにか特訓でもしたのか?まあ、そろそろ傾向が変わるはずだから――
「はいそうです。あ、あと、ここから所謂ですがクイズになります」
「え?15問全部ですか?」
あ、驚いて……笑ってるぞこいつ。もしかして対策されてたのか?まずい、これは集中しないと。
「はい。そうです。では第11問:日本で最も大きな面積の島は本州ですが、5番目の河川は?」
ほぼタッチの差で弓崎が回答権を得る。
「沖縄本島」
「不正解です」
「えっ?あっ5番目か」
速攻で間違いに気づくのかよ……。でもこれで少しは余裕ができたか。
「では先輩、答えをどうぞ」
「あーっと、択捉島」
「正解です」
危ない、俺も気を付けないと変なミスをするかもしれない。ここは気を引き締めなければ。
弓崎視点
現在12対12で同点、次が最終問題になる。ここは絶対に落とすことができない。しっかりと気合を入れる。
「今、同点なので次を取ったほうが勝ちです。いいですか?」
ここで一呼吸置く花さん。ボクも最後の集中に入る。
「それでは 最終問題:日本で最も大きな流域面積を誇る河川は利根川ですが、二番目の河せ――」
ほぼタッチの差で先輩が回答権を得る。ここの答えはきっと
「石狩川」
やっぱりそうだ。ギリギリ先輩に押し負けてしまった。
「はい、正解です。と、いうわけで今回も先輩の勝ちですね。お疲れさまでした」
「先輩、そろそろいいんじゃないですか?由樹くんをウチに入れても。こう、何回も出題するのも疲れてきましたし。由樹くんもどうです?クイズ部」
「ふぇ?」
あ、変な声が出ちゃった。
「え?あ、あー、そうだな。そこまで熱意があるんだし、いいんじゃないか」
「まさか気付いてなかったんですか?」
「い、いや――」
そんな会話をする二人の声は耳に入らなかったけどその提案はうれしくて、でも
「いや、ボクも気づかなかったですし。それに、せっかくですから先輩に勝って入りたいですし。二番で入るより一番で入るほうがいいですから」
そう言おうとすると
「いや、今すぐ入部届書いてもらわないと困る。そろそろ3月だし人数は多くないと。新入生が入るとは限らないからな。ほら、書いてって」
と先輩にも勧められる。そこまで言うなら、と思い書き終えた入部届を渡すと、
「「あれ、女(の子)だった(の)?」」
ズボンをはいた足を見てそう言う先輩と花ちゃん。まあ、クラスも違うししょうがないか。
「はい。いや、ズボンなのはスカートがちょっと寒いからですね。特に冬場は。選べるようになってよかったです」
「もうなんか自分の目が信じられない」
と驚愕する先輩と
「ゆうきだと思ってたけどゆきだったか……うぅ,ごめんね由樹ちゃん。まあ、とりあえず歓迎するよ。ようこそ、クイズ部へ」
花ちゃん。
「あ、ちょっと花ちゃんそれ俺のセリフじゃ」
「先輩はちょっと謹慎しててください」
「いや、君だって間違えてたよね?」
「あははははは」
「笑うとこじゃないからね⁉由樹ちゃん」
なんだかクイズ部で、これから楽しく過ごせそうな気がする。
そうだ、クイズをしよう! 蒼宙 @sky_0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます