vs,SJK
凰太郎
vs, モスマン
vs, モスマン Round.1
とある日曜日、深夜──
その日、ボクは
精神的に打たれ強くなったという意味じゃない。
そんな
「むう~~?」
寝ぼけ
「……夢?」
んなワケない。
自己発言だけど、んなワケない。
とりあえず指で弾いてみる。
「……硬い」
次第に覚醒してきた意識が、徐々に理不尽な現実を
「……え? え? ええぇぇぇ~~~~?」
ようやく事の重大さを認識!
すぐさまベッドから跳ね起き、ドタドタと
そこに映り出されるのは、当然、見るからに快活そうな少女──くどいようだけど、つまり〝
クリッとした瞳は曇り無く、真正直な気質を宿している。それにふっくらとした桃のような頬肉が
タンクトップブラにショートパンツという
慎ましくも貧しい
って、自賛的な自己描写している場合じゃないな。
うん、腕だよ! 腕!
肩口から指先まで見事なまでにメタリック!
「まるでサイバーアームじゃん!」
無論、ボクは改造手術を受けた覚えなんか無い。
十六歳という青春真っ直中の身空で、生身の身体を手放した覚えなんか無い。
「どゆ事? これって、どゆ事さ?」
感触はある。正常だ。
そうは実感しつつも、ますます混乱は
「けど、何か違うぞコレ? サイバーアームにしては、細部の違和感というか相違点というか?」
SF作品を参考にするなら、サイバーアームの各部位は主に筋肉や関節に
だけど、この
機械特有のロボット然とした武骨さが無い。
要するに一体成形で、しなやか過ぎるのだ。
どちらかと言えば、銀メッキを施したマネキンとか彫像を
「え……っと、これらの情報を統括するに?」
イヤな予感しかしないし、あまり再認識したくない。
けれど、そうとしか考えられない。
「コレ、ボクの腕ーーっ? ボクの生身が、そのまま鋼へと変質したのーーっ?」
驚愕の絶叫。
導き出された可能性は、ホント無情。
「ってか、何で関節曲がるかな? どんな材質構造?」
考えても解るはずがない。
だって〝ボク〟だもの。
勉強、大キライだもの。
「心当りは……あるな」
うん、ある。
ひとつだけ、思いっきり因果関係がありそうなのが。
どちらにせよ進展は学校へ行ってからだけど。
と、部屋の外に人の気配を感じた。
「……ん~、お姉ちゃ~ん! うるさいよ~?」
妹の〝ヒメカ〟だ。一歳年下。
「へ? ああ、ゴメンゴメン」
チラリと時計を見ると、まだ時刻は午前四時。
いくら月曜日の早朝とはいえ、登校時間にも起床時間にも早過ぎる。
「こんな朝方に何を騒いでるの~……?」
「あ……えっと、ね? ん……と」
適当な言い訳を探す。
とりあえずは入って来て欲しくない。
「徹ゲー! 徹ゲーしてた!」
「ゲーム? 徹夜で?」
「そうそう! クソゲーサイトでダウンロードしたんだけど、これが激ムズでさ? うるさかった? 起こして、ゴメンね?」
「そんなに難しいの?」
「うん、そうそう」
明るい抑揚を出すために笑顔を
「ジャンルは? 何?」
「あ、ジャンル? ジャンルね? えっと……」
変に喰いつくなよ。そこは。
「シミュレーション! うん、戦略シミュレーション!」
もう
自分が何を口走ってるかも
ってか、さっさと寝ろ!
お姉ちゃんが許すから、安らかに二度寝しろ!
「じゃあ──」
ふぇ? じゃあ……って?
「──ヒメカもやる」
しまったぁぁぁーーーーッ!
逆効果だったかーーーーッ!
何を眠気も吹っ飛んだ爽やかな宣誓してんのさ!
次なる展開を予見して、ボクはドタバタと扉をバリケードする! 自身の体を張ってバリケる!
「ねえ、開けて! ヒメカもやるってば!」
背中越しに伝わるドンドンと叩く振動の強い事。
ホラー映画の
「いや、自力でクリアしたいから!」
「無理だよ」
……引っ掛かる
「お姉ちゃん、そういうゲーム苦手じゃん」
何で、このジャンル言っちゃったかな。ボク。
「数字とか数式とか苦手じゃん。細かい思考とかもキライじゃん。頭使うの全般的にダメじゃん。だから、この間の小テストも二十四て……コホンコホン」
「いつ見たーーっ?」
隠してたのに!
誰の目にも触れないように
ってか、ボクの部屋を
「ま、それは
「ヒメカの方が全然得意だよ? ねえ?」
「大丈夫! 苦手、克服した!」
「じゃあ、二人でやればイージークリアだね」
どうして〝仲良し協力プレイ〟が大前提だ。この子。
「寝なよ! 学校に響くよ?」
「お姉ちゃんは?」
「ボクは平気! 大丈夫! 体力には自信があるから!」
「じゃあ、ヒメカも大丈夫」
ああ言えば、こう言う。
古今東西、妹ってのはこういうモンなのか?
まあ、人一倍好いてくれている点は、時として可愛いくもあるけど──今回ばかりは完全に裏目ってるし!
「寝なよ! いい子は速やかに寝なよ!」
「いや」
屈託なく「いや」じゃないだろ。
「寝なよ!」
「やだ」
「寝ろってば!」
「やだってば」
「寝ろってば寝ろ!」
「寝ないったら寝ない」
「寝ーーろーーーー!」
「寝ーーなーーいーーーー!」
「寝ぇぇぇろぉぉぉぉぉーーーーッ!」
「うるさーーーーい!」
寝室から、お母さんの怒声!
「アンタ達、いま何時だと思ってるのーーッ!」
ボクとヒメカの不毛な口防戦は、お母さんからの一喝で強制休戦となった。
ついでに言えば、ご近所
うん、ボクのせいじゃない。
全ては聞き分けないシスコンと──この鉄腕のせいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます