朝が弱い

 私は朝が弱い。

 どれくらい弱いかと言うと、就職活動中のエントリーシートにあるその他の欄にでかい字で書くほど弱い。

 ある会社の面接では、ずばりそこに食いつかれた。

 田舎育ちの私を見た人事担当の人は鶏が起こしてくれるのではないのかと冗談を言った。それに対して、田舎の鶏は4時頃鳴くので困ってると返して笑いと内定をとった自分を今でも褒めてやりたいと思う。

 または、まだ入社したての研修中だというのに昼まで寝て、同僚に電話で起こされるという失敗をしたこともある。よく、会社は許してくれたものだと感謝している。


 朝が弱いという症状が出る理由はたくさんあると思う。

 よく言われるのが低血圧、睡眠の質が悪い、頻尿、寒さに弱いなどだろう。

 私の場合、低血圧ではないし、頻尿でもない、寒さには弱いが夏でも朝は弱い。睡眠の質については睡眠外来でも検査してもらったが、問題はなかった。

 夜更かしというものがある。誰でも夜更かしすれば、朝は辛いだろう。私も夜更かしするタイプではあるが、早く寝たとしても朝は辛く感じる。


 そうすると、なぜ朝が弱いのだろうと度々考えることがある。この文章を書こうと思った理由も、もう一度考察してみようと思ったからである。


 子供の頃を思い出す。夏休み毎日ラジオ体操に参加して皆勤賞だったし、早朝のアニメが楽しみで早起きしていた。なので、子供の頃は朝が弱いことはなかったのだろう。

 中学生、高校生あたりを思い出す。部活に入っていた私は朝練を毎日行っていたし、朝練の前にランニングをすることもあった。高校は自転車で30分かかるところだったので、それなりに早起きしなくてはならない。それでも、休むということはなかった。朝辛かったという思い出もあるが、特別他の人と比べて弱いわけではないだろう。

 では、大学のことを思い出す。大学は中学や高校のように1日いっぱい授業があるわけではない。よって、1限目が無い場合などは、朝ゆっくりできる。そうすると、朝に授業が無い日の前日などは夜更かしをしてしまうこともある。

 3交代制の仕事を考えてもらうといいかもしれない。早朝の始業のときは前日早く寝るだろうし、昼番だった場合は遅くまで起きて、昼前まで寝てるという人も多いと思う。

 仕事の場合はそれが計画的に行われる。しかし、大学という緩い空間では責任というものが無い。単位は重要だが、それは自分だけの問題である。

 そうして夜更かしのようなイレギュラーが頻繁に行われ、朝起きる時間が遅くなると、だんだん朝は早く起きるものではないという錯覚に陥る。自分自身で朝が弱いと定義づけて朝起きない理由をつくってしまうのではなかろうか。


 私の場合、もうひとつ理由があった。大学までは電車通学だったのだが、1限目がある日はだいたい満員電車だった。経験がある人も多いと思うが、満員電車に乗ると気分が異常に悪くなって吐き気がしたり倒れそうになったりすることがある。私は比較的そうなりやすかったので、1限の講義に出るのが非常に嫌だった。

 大学は子供と大人の間のような場所である。しっかりした人はもう社会を意識して、講義の時間がどうであれ、生活リズムを崩さないだろう。いわゆる学生気分が抜けないという人は毎日飲んだくれて、昼まで寝てるかもしれない。今思えば、私の場合、後者に近かったのかもしれない。


 だが、言い訳をさせてほしい。

 大学では4年生(4回生)になると、ゼミや研究室と呼ばれるものに入る。

 ゼミに入るとだいたい研究を行うわけだが、私は理系だったので実験を行っていた。その実験が24時間かかるもので、1時間に1回はサンプルをとらないといけないものだった。そうするともちろん寝る時間は不定期である。

 だんだん、いつ寝ていて、いつ起きているのかわからなくなり、自律神経失調症のようになったこともある。このことが、最大の原因なのではないかと考えている。それ以来、朝が弱いなと実感したと記憶もしている。


 夜が好きだということも理由かもしれない。というか、一人が好きだという理由である。朝起きて活動するということは、たいてい誰かと連絡をとったり会ったりすることになるだろう。

 しかし、夜が更けてくると完全に自分だけの時間となる。夜更かし友達はいるだろうが、その人達は自分と価値観を同じくしていることが多いので障害にはならない。


 朝が弱いことは社会生活にとっては大変マイナスである。治していきたいと思いつつも小説を書いたりして夜更かししている自分にはもう朝起きるという概念はなくなってしまったのかもしれない。

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