お稲荷様の神隠し
ソーヘー
2番目が帰ってこない
夏休みの最終日、裕太は友人らを家に招き入れて怪談話の会を開催していた。
「次はおまえだーっ‼︎」
「ひいっ‼︎いきなり怖いよ...裕太くん」
友人の美香は、裕太の怪談話に驚いて今にも泣きそうになっている。
「あんなの作り話だろ?どこが怖いんだ」
友人の翔馬は美香の反応を鼻で笑い、裕太の方へ向いた。
「まず設定に現実性がない。なんだよ?幽霊が人を食べるって」
「言われてみればそうだよね...現実味がないような」
「まだ俺ら小学生だぞ⁉︎実体験なんてあるかー‼︎」
友人二人にダメ出しをくらい、裕太は必死に反論している。そんな裕太の話を聞いてもう一人の友人、拓海がある提案をした。
「じゃあ今夜、僕らで肝試しに行こうよ」
拓海のその一言に裕太と翔馬は顔を見合わせた。
「それいいな‼︎肝試ししようぜ」
「俺らの夏休み最後の思い出にはなるかもな」
裕太と翔馬が賛同していると、美香は首を横に振りながら注意をした。
「駄目だよ...私達はまだ小学生なんだし、夜に外出するのは危険だよ」
「何言ってんだよ、そんなの大丈夫だって‼︎」
美香の注意を裕太は聞かずに話を進めた。
「肝試しの場所はどこにする?」
「そうだな、まずは場所決めからだ。どこにしよう?」
「神社なんてどうかな」
裕太と翔馬が考えていると、拓海はある場所を選択した。
「神社⁉︎いいねそれ‼︎なんか肝試しっぽいし」
「神社か...いいかもな、肝試しの定番だ」
裕太と翔馬が賛同していると、拓海は言葉をついだ。
「神社にするなら気をつけた方がいいよ、あの神社には色々な噂があるんだ。なんでも、肝試しで2番目に行った人がそのまま帰ってこなかったとか...」
「そんなの迷信に決まってるだろ、人が消えるなんてありえねぇ」
拓海の言葉を翔馬は否定した。そんな事はおかまいなしに裕太は話を進めた。
「今日の夜に稲荷神社に集合だ‼︎」
あっという間に日は沈み、辺りは暗闇になった。
「全員来たか?」
「うん...」
「おう」
「うん」
裕太は全員が来たのを確認すると、神社の前の階段に腰を下ろした。
「いいか?この肝試しはこの階段を上がって境内へと入る。そこで参拝してまたここへと戻ってくるんだ」
裕太の説明に一同は頷いた。
「順番はどうするんだ?」
翔馬は裕太に順番の確認をした。
「順番か、最初は俺でいいよな?」
裕太が順番を決めると、それに続いて翔馬も自分の順番を希望した。
「俺は最後がいい」
「じゃあ私は翔馬くんの前ね」
美香も自分の順番を希望すると、拓海はか細い声で呟いた。
「僕が2番目なんだね...」
裕太は階段の前に立つと、足を震わせながらも階段を駆け上がっていった。
「あいつ行ったぞ」
翔馬は裕太のライトが暗闇に消えるのを見て拓海の肩を叩いた。
「次だぞ拓海、準備しろ」
「うん、わかっている」
拓海のその目は、なにかを悟ったかのようにただ階段の奥の暗闇を見続けていた。
やがて、階段の奥からうっすら光が見えてきた。
「おーい‼︎戻ってきたぞー‼︎」
階段を下りて戻ってきた裕太はライトを拓海へと渡した。
「次は拓海の番だな」
ライトを受け取った拓海は階段をテクテクと上がっていった。
それから数十分が経っただろうか。拓海はまだ戻ってこない。
「あいつ何やってんだよ‼︎もうとっくに戻ってきてもおかしくないのに」
「俺がちょっと見に行ってくる‼︎」
そう言うと翔馬はライトも持たずに階段を駆け上がっていった。拓海が戻ってこない状況に、美香は拓海が昼に言っていた事をふと思い出していた。
「そういえば拓海くん...2番目がどうとかって」
「あんなの迷信だ‼︎俺は認めない‼︎」
すると、階段の奥から足音が聞こえてきた。
「拓海なのか‼︎」
裕太が拓海だと思ったその足音の正体は翔馬のだった。翔馬は青白い顔で裕太と美香に報告した。
「いなかったんだ...どこにも...暗闇であまり見えなかったけど、これははっきり分かる。拓海は消えたんだよ...この神社から」
翔馬の衝撃的な言葉に、裕太と美香は言葉を失った。
その後、拓海が行方不明になったまま数日が経過した。その間この事件には警察も動いたが、拓海が見つかることはなく失踪事件として扱われた。これは神隠しというやつだと思う。僕らはもうあの神社には近づかない。だってまだ肝試しは終わってないから...
美香と翔馬が終わるのを2番目の少年は今も待ち続けている。
お稲荷様の神隠し ソーヘー @soheisousou
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