女の子だけど、女の子がすきです。
みずの
第1話 結婚話
従兄弟が結婚したこともあって、両親の間は結婚話で持ちきりだ。このことは、まだ18歳の私にとっても、苦痛でしかなかった。
結婚?……私には、無理でしかない。
母はアラサーの兄に、期待に満ちた目を向ける。
「隆もそろそろかしら」
兄は、スマホのゲームをしながら、煩そうに「結婚する相手がいない」と言う。それを聞いた父は、唐突に、かつ冗談混じりに、こう問いかけた。
「隆は、まさかLGBTのGじゃないよな?」
その瞬間、兄は眉間にシワを寄せて、不愉快そうな顔つきになる。「ちげーよ、変なこと言うなよ」と吐き捨てた兄の顔は、軽蔑に満ちていた。
ズキッ。胸に走る鈍い痛みは、心臓まで到達して、私をリビングから「逃げ出せ」と指示する。私は、手の震えをごまかしながら、それに従った。「夏実は、まだ先のことだな」「いや、案外直ぐかもしれないわよ」……両親の声が、遠ざかっていく。
私が、もし本当のことを言ったら……笑われたり、侮蔑されたり、するのかな。
だって、私は……。
「L」かもしれないんだよ。
心のなかで、呟いた声は、誰にも知られず消えていく。息苦しくて、消えてしまいたくて、気づいたら私は、布団のなかで泣いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます