女の子だけど、女の子がすきです。

みずの

第1話 結婚話

従兄弟が結婚したこともあって、両親の間は結婚話で持ちきりだ。このことは、まだ18歳の私にとっても、苦痛でしかなかった。


結婚?……私には、無理でしかない。


母はアラサーの兄に、期待に満ちた目を向ける。


「隆もそろそろかしら」


兄は、スマホのゲームをしながら、煩そうに「結婚する相手がいない」と言う。それを聞いた父は、唐突に、かつ冗談混じりに、こう問いかけた。


「隆は、まさかLGBTのGじゃないよな?」


その瞬間、兄は眉間にシワを寄せて、不愉快そうな顔つきになる。「ちげーよ、変なこと言うなよ」と吐き捨てた兄の顔は、軽蔑に満ちていた。


ズキッ。胸に走る鈍い痛みは、心臓まで到達して、私をリビングから「逃げ出せ」と指示する。私は、手の震えをごまかしながら、それに従った。「夏実は、まだ先のことだな」「いや、案外直ぐかもしれないわよ」……両親の声が、遠ざかっていく。


私が、もし本当のことを言ったら……笑われたり、侮蔑されたり、するのかな。


だって、私は……。


「L」かもしれないんだよ。


心のなかで、呟いた声は、誰にも知られず消えていく。息苦しくて、消えてしまいたくて、気づいたら私は、布団のなかで泣いていた。

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