丘の上の高校

飛鳥 祐矢

第1話 うーん

2番目の『お題』。どうしよう。

めずらしく、テンション高く、この『カクヨム』さんの、お題へのチャレンジに

ない頭をフル回転させていた。


いろいろ考えて、結局、自分の一番、得意なテリトリーしかないかなあと。


今から、もう数十年も前のこと、


中学校で、壮絶ないじめにあい、お先真っ暗だった、中学時代。


高校ではそんな思いはしたくない。

勉強は嫌いだったけれど、勉強しないと、今の状況から抜け出せない。

一念発起して

通信教育をはじめ、テキストの課題を、一夜漬けみたいにして、詰め込んで

その当時、県内で中間くらいの高校にターゲットを絞って

中学3年の残り半年間、今にして思えば、自分なりにはけっこう勉強をして

受験に備えた。


その高校は、丘の上にあり、急な勾配の坂を、毎日登るのはきつそうだなと思いながらも思いの中では、すでに受かっている自分の姿を思い描き、わくわくしていた。


発表当日。

どちらかというと、足取りが軽く、自分の中では、受かっている姿しか

思い浮かばなかった。


周りでは、すでに歓喜の声があがっていた。


その高校の放送部員らしい女子が、合格したであろう人たちに

インタビューをしている。

横目でみながら、心は、高鳴りを見せていた。


掲示された、白い張り紙に書かれた番号を順に目で追いながら、自分の番号を探す。


「・・・・・・」


何度も、見返す。番号が・・・

飛んでいた。


自分の番号の前後はあった。


何とも言えない感情がわきおこる。


その時

なんと、先ほどの女子が、インタビューを嬉々とした顔で

求めてきた。


「こんにちは~。

どうでしたか~♡」


なぜ、自分なのだろう・・


「自分、落ちたんで・・・」

なぜ、この一言を言わなくてはいけないのだろう。


「そ、そうですか」


インタビュアー、そそくさと、その場を後にした。


風が吹く。

丘の上から見渡すまちなみはきれいだった。


桜が咲いていたかどうかは覚えていない。

桜が咲いていたら、


もっとも、美しく。


もっとも、残酷。


終わった時間を、振り返らず、その場をあとにした。


丘の上の高校。


それから、いわゆる「滑り止め」

2番目の高校に受かることができた。


丘の下の高校。


悔しかった。

勉強をもっとしておけば、受かったのだろうか?


丘の上の高校に、もし、受かっていたら、その後の人生はどうなったのだろう。


こうやって、人生を重ね、振り返ると、それは、そういう運命だったのかもしれないなとも思う。


受験は、最大のイベント。


受かる人もいれば、当然落ちる人もいる。


落ちたことをばねにして、頑張る人もいる。


高校の先生は、入学時、丘の上の高校のことを引き合いに出し、悔しさをばねに

みたいなことを言われた記憶がある。


高校生活は、それなりに楽しかったのかなあ。


つらいことのほうが多くて、高校でもいじめっぽいのがあったし

上級生が逆上して、土下座して許しをこうたり

3年の時は、ほとんどクラスメートとの会話もなくて


それを考えると、落ちた後の人生は、「今」という視点から逆算すると

受かっていればなあ。


と思う。







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