感情

ノア

(1)五月蝿い


朝、電車の中で男子高生が騒いでいる。


──あぁ、五月蝿い──


私はイヤホンを耳に刺した。

イヤホンから薄っぺらい御託を並べた

くだらない曲が流れる。


学校へ着くと、仮面を被った私の声と

大っ嫌いな友人達の笑い声が頭に響く。

聞いているだけで、喋っているだけで

頭が痛くなる。


そっと目線をスマホに移す。

開きっぱなしだったLINEの画面が映る。


──未読 80 ──


友人からの遊びの誘い、授業の連絡、

公式アカウントの意味のないメッセージ。

あぁ、五月蝿い、吐き気がする。

私はトークを開くことなくアプリを閉じた。



日が沈みかかった夕方。

五月蝿い人達が消え、1人になれた私は、

大好きな楽器を手に取る。

深く息を吸って、楽器に息を吹き込む。

薄っぺらく、中身のない音が響き渡る。

あぁ、やめて、そんな音聞きたくない。

現実世界で、唯一私の味方をしてくれる

楽器の音でさえ、今は騒音に聞こえる。



あぁ、五月蝿い五月蝿い五月蝿い。



いっそこんな世界滅んでしまえばいいのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る