八年前

花月姫恋

平成23年3月11日

あの日は、下校途中だった。

当時、小学二年生だった私はいつものように一人で帰っていた。というのも、その七月に、一緒に帰っていた子が転校してしまって、女子は私一人。男子は、五六人で話すほど仲はよかったわけではない。それどころか、体格のいい男子と背が小さい男子がしょっちゅう喧嘩をしていたので関わらないようにしていた。


変わらない日常。普通に家に帰って、普通に過ごすだけ。そうあのときまではなにも変わらないと思っていた。


突然、強い揺れが襲ってきた。停まっていた車が運転していないのにひとりでに動く。近くの家の瓦も耐えきれないのか崩れ落ちる。私は、恐怖で泣き出してしまった。学校からなのかアナウンスのようなものが聞こえた気がしたが、怖くて聞くことができなかった。

「大丈夫だよ」

体格のいい男子が私を慰めてくれたが、それでも怖さは引くことがない。彼は、困ったような反応をしていた。


ここからはうろ覚えだが、どこからかおじさんがやって来た。きっと子供達を見かけたから助けようとしてくれたのだろう。揺れがおさまった時点で、近くの歩道橋まで行くよう指示してくれた。



歩道橋を登り終わると、子供会の方が心配で来てくれた。そこから先はそれぞれ家の方向に歩いたが、瓦が落ちている家が多くて歩きづらかったのを覚えている。



私の家は、福島県の県南で第一原発や津波の心配はなかった。


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