【KAC2】すれ違う冒険者達

@dekai3

tips:ある女騎士の内情

 私はいつも二番目だった。


 幼年学校のかけっこではいつも男子に負けて二番目だったし、身長も兄妹の中では一番上の兄上に次いでの二番目。初恋の相手も教師で既婚者だったので二番目。スタイルも姉上に色々と負けていて二番目で、次女なので当たり前だが父親から気にかけてもらえるのも二番目。


 これこそはと唯一自信を持っていた剣の腕も決勝で負けてしまって二番目。

 そこで次は『魔導使いになろう!』と一念発起して魔導学校へ通ったが、結局はどれだけ努力しても才能が足らずに二番目。

 寮での生活もどれだけ早起きしても二番目だったし、風呂の掃除も洗濯も必ず誰かが先に行っていて二番目だった。


 私は何をしても二番目で。どれだけ頑張っても一番目になる事は無かった。


 だから、私が魔王を倒すパーティーに選ばれた時はとても驚いた。

 神託を受けた勇者が先に選ばれていたのでここでも二番目なのかと自分の運命を呪ったが、流石に魔王を倒したパーティーともなれば世界一のパーティーとして認めてもらえるだろう。

 私一人が一番目というわけでは無いが、これは私が『永遠の二番目』じゃなくなるチャンスである。

 実家の家業も私の商才は一番下の兄上に次いでの二番目なので、父上もどうせ私を失っても痛くは無いだろうと判断してこの招待を受けた。


 悲しいことにパーティーでは私が最年少から二番目で、剣の腕も魔法の技術もこれまた二番目だった。立場も副リーダーという二番目だ。

 旅の最中でも常に二番手という立場に居て、正直な所、私なんかいなくてもなんとかなるのではないかと思ってしまう。

 だが、そんな私にもパーティーの仲間は優しく接してくれており、何をやっても二番目にしか成れない私の事を役立たずと言って放り出したりはしない。

 なので、せめて雑用だけでも役に立とうと様々な事にチャレンジはしているが、昨晩行ったキャンプの見張り番でさえも専門職の盗賊には敵わなかった。


 私は本当に役に立っているのだろうか。


 国王から直々に指名されたのでこのパーティーに居てもいいという大義名分はあるが、ここまで何も出来ないとなるととても肩身が狭い。

 やはり私のような二番目にしかなれない者が勇者と同じパーティーというのは体裁的によくないだろう。


 次の街に着いたら着いたらパーティーを抜ける相談をしようと思っている。

 あそこは私の母方の従兄弟が納める街だ。そこでならこんな中途半端な私でも就ける職があるはずだ。

 このパーティーならば私なんか居なくても魔王は倒せるだろう。

 『一番目になりたい』という私の都合にみんなを巻き込ませるのは忍びない。


 結局の所、私は二番目にしかなれない人間なんだ。

 私の冒険は、ここまでだったんだ。


 でも、もしもだ。パーティーの皆が、いや、リーダーである勇者だけでも私を認めてくれていたら、その時はもう一度一番目を目指して頑張ってみようと思う。

 私も女だ。自分より強い男が私を認めてくれれば嬉しく思うし、やる気も出る。

 少し我侭かもしれないが、これぐらいは夢見てもいいだろう。


 さあ、もう直ぐ夜が明ける。パーティーと合流して次の街へ向かって出発だ。

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