わたしは2番目の妹でお兄ちゃんが最初の妹に恋をしたのでわたしは成りきろうと決めました

立花戦

思い出と今を

「どうして・・・俺より先に逝って

しまったんだ衣里歌えりか。」

松代呀維まつしろかい高校二年の春

は、絶望へと落とされる。

実妹の松代衣里歌が交通事故により

亡くなったのだ。

いつものように本屋で立ち読みを

していたら、父親が知らせてくれて

病院に駆けつけると、静かに目を閉じる

最愛の妹の姿があった。

最初は、眠っているだけだと強引に認識を

始める。が、この場所と両親の反応で

亡くなった・・・現実逃避を気づかずに

していた思考を現実に戻される。

「・・・お兄・・・ちゃん・・・・・」

「・・・瀬利せり。」

二女の妹の瀬利が俺より遅れて

駆け付ける。顔は真っ青でいつも明るさが

無かった。衣里歌は、長女で俺より

一年後に生まれ二女の瀬利は、衣里歌より

二年後で俺の三年後に生誕した。

ずっと、3人兄妹でいるのが当たり前だと

思った。そして、家族に秘密にしていたが

衣里歌と付き合っていた。

兄妹ではなく、恋人の意味で。

「お、お姉ちゃんは?」

問いは分かる。眠っているだけで

ドッキリとかなど無理に現実逃避をしたり

信じられないのだろう。

だが、下手な優しさは傷つく。

だから俺は、頭を横を振りその可能性を

否定する。

「・・・・・・」

「そ、そんな・・・お姉ちゃん!」

泣き叫びながら、衣里歌のベッドに駆ける。

「わあぁぁぁ!!」

突然の死別に、瀬利は泣き叫び続ける。

俺も叫びた方が、瀬利の前で出来なかった。

それから、3日が過ぎた。

「おはよう、お兄ちゃん。」

瀬利の明るさは、戻り挨拶。

「ああ、おはよう。」

最近イヤ、衣里歌が亡くなった後に

突然料理を作るようになった。

いや違うか。いつもは、衣里歌が

作っていた。三年前に告白され秘密の恋人に

なってから、作っていたのだ。

理由を訊くと俺のためだと、恥ずかしそうに

言ってくれた。・・・もう食べれないのか。

必然、誰かが作らないといけなくなり

本来は俺が作るべきだろうけど、

瀬利がわたしが作ると、声高に言う。

「今日は、残り物を使ったえーと、

カレー肉じゃが?」

「昨日のカレーを入れた肉じゃがか。」

「そ、そう!・・・やっぱりお姉ちゃんの

ように行かないな・・・。」

「・・・・・」

「ご、ごめんお兄ちゃん。」

「いや、平気だ。それより食べようぜ。

食べるのが楽しみだし。」

「うん。・・・うん、そうだね。」

いつもは、衣里歌が何か言うのを待って

しまう俺達。・・・そして、何度も認識

させてしまうのだ。まるで、第三者が

運命の神がそうさせるよう操作している

ようにしているようだ。

そして、瀬利は姉と同じ髪型にするように

なった。空と同じ色の群青色のツインテール

が、今はストレートロング。

それだけで衣里歌のように見えてしまう。

俺は、瀬利が心配で仕方なかった。

(いつものようにしているようで、

姉のような言葉や髪型。

俺の勘違いならいいけど、もし似ようと

しているなら、精神が危ういのかも

しれない。)

そして、食事を終え学校に向かうのだった。

放課後になると、一直線に帰る。

居間に行くと妹の瀬利が掃除をしていた。

「おかえり、お兄ちゃん。」

「ただいま。手伝うよ。」

実の妹が二人だったけど一人になった。

周りはそう憐憫な眼差しで言う。

衣里歌は、妹であるが恋人で瀬利は

普通に妹だ。普通と言っても俺や衣里歌には

かなり甘える所があったが・・・

今の瀬利はどこか無理をしている。

居間にテーブルを向かい通しで座り

夕食を食べながら話をする。

「瀬利・・・おいしいくなった。

この味噌汁とか。」

ちがう。いざ言おうと決意したら

別の言葉が出る。妹の瀬利は、微笑む。

前のような太陽のような笑顔でなく

衣里歌のように笑おうとしているように

見える。

「フフ、ありがとうお兄ちゃん。」

「・・・ああ。」

涙腺が限界まで到達しそうだった。

衣里歌は亡くなって大きな穴があるお互い。

その大きな穴で、姉のようになろうとする

瀬利を見ていると辛い。

(だから、見ているだけなのか俺は。

イヤ、ダメだ。勘違いしたらなんて

些細なことなんだ。もし俺の考えが

そうだとしたら、きっと甘えたいに

違いないし、衣里歌もそうするだろう。

だから俺は・・・)

「瀬利。衣里歌の・・・・・姉のように

振る舞っていないか?」

「えっ、ど、どうしたの急に?」

「勘違いならいい。けどもしそうなら、

やめてくれ。」

「・・・お姉ちゃんが嫌いなの

お兄ちゃんは?」

「違う!どちかっというと好きだ。

大好きだった・・・けど

なれないんだ。いくら同じでも言葉が姿が・・・・・俺は衣里歌のすべては

知らないけど、それでも

衣里歌を知っているんだ!」

「お兄ちゃん、なにをいって・・・。」

「衣里歌は、衣里歌しかできないし

代わりなんて誰も務めるなんてできない。

逆に瀬利・・・瀬利も代わりはいないし、

俺は瀬利といたいんだ。」

瀬利が衣里歌なろうとするならそれも

瀬利。だからそれを伝える。

そして瀬利は衣里歌ではなく自分を

よく見てほしい。

「・・・お兄ちゃん。

ありがとう・・・わたし無理をしていた。」

涙をこぼしながら、嗚咽する声をなんとか

伝えようとするのを俺は黙って待つ。

「わたし、お姉ちゃんが好きだった。」

「・・・知っているよ。」

「・・・でも、それと嫉妬していた。

わたしは・・・お兄ちゃんが好きだった。」

嫉妬という言葉と好き言葉だけだと

兄として意味として受け取っていただろう。

だけど、声が顔が意志が伝わる。

恋をしているのだと。

「・・・知らなかった。」

「お兄ちゃん鈍感だからね。・・・

だから、お姉ちゃんが告白したんだよ。

わたしは、二番目の妹だからきっと

お兄ちゃんはわたしを好きにならない。」

「そ、それは・・・そう。

俺はおそらく2度と好きにはならない。

好きなのは衣里歌の一人だから。」

「・・・そんなお兄ちゃんが

好きだからわたしは・・・・・

うっ、うわあぁぁぁぁ!!」

慟哭。封印していた今までの悲痛を

解放する。

俺はただ、頭を撫でるしかできなかった。

それからの瀬利は姉の影を追うような

ことはしなくなった。

あれから、1ヶ月が過ぎ瀬利が作り出した

夕食を二人だけの時間に慣れてきたころ

妹は言う。カーテンは閉まり

午後八時のテレビからバラエティ特有の

ユルさを向かい会うようにしているとき

だった。

「お兄ちゃん無理しなくていいんだよ。」

「んっ?なにが。」

「お兄ちゃんあれから、

無理しているよね。」

「・・・・・。」

まるで、あの事のような俺のような

セリフを使う瀬利に少しだけ驚いた。

「わたしだって、妹だから分かるよ。

1ヶ月前のお兄ちゃんと同じ

ロジックだよ。そして一番分かると

思うから・・・落ち着いたから、わたし

気づけたの。お兄ちゃんが

泣いている所や叫んでいるところを

見ていないから。」

「瀬利・・・それは何かの

気のせいとかじゃないか?」

頑なでも認めるわけにはいかない。

そうすれば、取り繕うことが2度と出来そうになさそうだから。

「わたしは、知っているよ。

お兄ちゃんとお姉ちゃんが付き合って

いるのを・・・カップルの二人を。」

「・・・瀬利・・・それは・・・」

前に聞いた。きっと鈍感だってまだ、

知らないって思ったのだろう。

「お兄ちゃんだから、今の落ち着けた

わたしだから言える・・・

わたしはお兄ちゃんを助けたい。

だから、吐き出して・・・その苦しみを。」

そんなことを言ったら本当に

どうしたらいいか分からなくなる。

「俺は・・・大好きだったんだ

衣里歌が世界一に幸せにして

結婚は大変だろうけど・・・・・

乗り切れる自信はあった。」

「・・・うん。」

「でも、しっかりした別れもなく

別れて・・・・・2度と会えなくなって

・・・ぐっ!」

「・・・・・うん。」

「自殺して追おうと考えた・・・けど

それをしたら瀬利も同じことを

きっとするだろうし、なりより衣里歌が

悲しむから・・・うぅっ。」

「・・・うん。」

「あぁぁぁぁぁー!!」

俺は溜まっていた悲しみをすべて吐き出す。

「お兄ちゃん・・・わたしがいるよ。」

瀬利は立ち上がり俺に優しく包み込む。

そして、俺は妹にその優しさに甘える。

三週間が経ち俺と瀬利は衣里歌の

墓の前に立つ。

「お姉ちゃん・・・わたしとお兄ちゃんは

なんとか乗り切れたよ。

だから、見ていてねぇ。」

手を合わせ目を開く。

次は俺の番かな。

「会いに来たよ衣里歌・・・

そしてごめん!2度と衣里歌

以外の女性に好きになる勝手に俺がした

約束をやぶる!」

「お兄ちゃん?」

「俺は瀬利が大好きになってしまった。

我ながらシスコン過ぎって

嫌いになりそうだけど、

瀬利の切実な気持ちを答えたいと

思う!」

「お兄ちゃん・・・わたしのために

無理をしなくても。」

「ちがう瀬利。俺のためにしてくれた

事が好きになったんだ。

・・・だけど、衣里歌にはスゴく

わるいことを・・・」

「そうだね。スゴく怒っていると思う。

けど、わたしには分かる。

お姉ちゃんなら許してくれる。

だって、優しいお姉ちゃんで

お兄ちゃんやわたしを大事に想う

お姉ちゃんなら。」

「・・・・瀬利。」

いつのまにか成長したな瀬利は。

「お兄ちゃん大好きだよ。」

「ああ、俺もだ!」

俺達は、手を繋ぐ帰路に着く。

これから、兄妹として困難があるだろう。

でも、乗り切れた。

説明が複雑で世界一に好きになった

想いと願いがあれば。




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