夕日に溶ける灰色の髪
「サキー!ちょっと待ってよー!」
彼女はゆっくりと胸まである髪を揺らして振り返る。
「早くしないと、怒られちゃうんだもん!」
はやくはやく!と付け足して彼女は走る。どうやら、門限に遅れそうらしい。
夕焼けがゆっくりと彼女の髪を包み込んでいく。
「待ってってばー!」
後ろから友達のちさとが走ってくる。
それを感じた彼女はにっこり笑う。
「がんばってー!」
と声を出して、彼女は走る。
すると、向こうから誰かが歩いくるのが見えた。
どんどんとその距離が短くなっていく。歩いてくるのは男性だ。その顔には見覚えがあった。
彼の瞳の色は青色で、街の人々に不気味がられていた青年だった。
どんどんと距離は縮まっていく。彼のすぐ横を通り過ぎようとした時、彼女は立ち止まった。だか、彼はそれに気づかない。
「ねぇ、」
彼女は声をかけていた。自然に、それが当たり前のように。
それに気づいて、彼は彼女のほうを振り向いた。
「…。なに?」
綺麗な青色の瞳が彼女を見つめている。
彼女はごくりと息を呑む。
「今度、教会に来てくれますか。」
彼女の顔は少し赤く染まり、額からの汗が頬へと伝う。
「なんで?」
警戒したトーンで彼は彼女に聞いてきた。
「えと、それは、えと。」
焦った彼女は少し考えて、
「あなたと、私は、多分だけど、」
言葉が詰まりそうになりながら、彼女は続ける。
「仲良くなれると、思うから。」
彼女は彼の青色の目をじっと見つめた。
灰色の髪が夕日に溶けていく。
それが彼女と彼の初まりだった。
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