〔特別課捜査班！特子！〕『アリバイ崩しは「なぞなぞ」で』編

〔特別課捜査班！特子！〕『アリバイ崩しは「なぞなぞ」で』編

「ガチャ！」

特子「オッハヨウございま～す！」

私の名前は『志賀内特子（しがないとくこ）、なんやかんやあって、念願だった警視庁で働く事になった。（アルバイトだけど…）私の夢は、大好きな彼の腕に抱かれながら殉職すること。えへ。

その為に頑張って立派な警察官にならなくちゃ！

私が配属になった『特別課捜査班』は、ちょっと変わった個性的な人達が集まっている課だ。

カチョー「お前はいつも元気がいいな。悩みとかないんだろ？」

彼は『敬志 壮寛（けいし そうかん）』この班の課長だ。

56才、通称『カチョー』少し頭が薄くなってきてるが、なかなかダンディーなおじ様だ。なんと、元捜査１課の課長をしていた事もあるらしい。

ジミー「今日は少し悲しんでいるのか？」

彼の名前は『次見 大須樹（じけん だいすき）』通称『ジミー』35才、

いつも窓際で、空を見ながら、わざわざ折り曲げた電子煙草を吸ってるハードボイルド。課長代理の肩書きを持つ。

黒の上下スーツ、黒のネクタイに黒のハットは彼のトレードマークだ。

たぶん『あの人』を意識してるのだろうが、本人は一貫して否定している。

コウ「特さ～ん、コーヒー入れてもらえます？ミルク無しの砂糖マシマシマジで。」

望樹 太陽（のぞき たいよう）25才、この班の中で１番若い、ネット犯罪のスペシャリスト、通称『コウ』、課長補佐だ。

黄色い縁のメガネをかけ、長くもないのに髪を後ろに束ねている。

マイ「特ちゃん～、このイヤリングどう？ネットで見つけたの～。」

彼女？彼は『進舞入夏（しんまい いるか）』一見女性に見えるが、実はおネエだ。

警視庁初の女性課長誕生かと思われたが、カミングアウトによって、その快挙は失われた。

課長兼係長、39才。通称『マイ』私より綺麗なのがなんだかシャクだ。

ミル「特ちゃん～、昨日の『アレ』見た？まさかの『神回』じゃなかった？」

私以外では紅一点、本物の女性。彼女は『杏仁目 美留（あんにんめ みる）』さん、35才、正真正銘の警視庁初の女性課長になった人だ。どこの課なのかは知らないが…

この班では、『課長監査役』をしている。愛称は『ミル』さん。コスプレが趣味で、ジミーさんとは同期らしい。私の短髪癖っ毛とは違い、黒のロングストレートヘアーは私の憧れだ。

そんな仲間達に囲まれて、今日も慌ただしい１日が始まった。

特子「カチョー、まだ新聞派なんですか？いい加減スマホを買いましょうよ…」

ミル「無理よ特ちゃん、奥さんが買ってくれるわけないもの。ね～カチョー？」

特子「そ～なんですか？カチョー？」

カチョー「ば、バカいえ！なんでもかんでも機械に頼ってたら、老化が早まるんだよ。」

コウ「非科学的ですね。逆に指先を使う、スマホやケータイは、老化防止に良いとされているんですよ。」

マイ「まあ、カチョーの場合、家庭環境からの改善が必要ですけどね。」

カチョー「大きなお世話だ！」

特子「それで？カチョー、今日は何をすればいいんですか？」

カチョー「何もこうも、いつものように資料整理に決まっているだろうが。」

特子「え～！つまんない～！ブ～ブ～！現場に行きたいよ～！」

カチョー「バカかお前、アルバイトが現場に行けるわけないだろうが！」

マイ「でも、なんだかんだで、特ちゃん、いつも現場にいるよね。フフフ。」

カチョー「残念だが、今日は応援要請も何も無い、みんなで資料整理だ。」

特子「つまんないな～、私、いつ殉職出来るんだろ…」

コウ「じゃあ、特さん。『なぞなぞ』でもします？」

特子「なぞなぞ？」

コウ「はい。特さん得意のアニメと刑事ドラマ絡みで。」

特子「フッフッフッ、特子さんを舐めてもらっちゃ困るぜ。ド～ンと来い！」

コウ「それじゃ、いきますよ。

ここに強盗容疑の３人が居ます。被害者と容疑者は同じアパートにすんでいます。行時刻は午前１時～３時。どの人物が犯人かお答え下さい。」

特子「お！なかなかリアリティーがあるではないか。」

コウ「まず１番、時羽礼二（ときはれいじ）会社員、２４才、犯行時刻は酔って寝ていた。アリバイを証言する者はなし。

次に２番、山田三郎、（やまださぶろう）フリーター、２０才、犯行時刻は深夜アニメを見ていたと証言。こちらも１人の為、アリバイ証言者はなし。

最後に３番目、極悪強介（ごくあくきょうすけ）金融会社社員、３５才、ヘッドホンをして、ＤＶＤを見ていたと証言。もちろんアリバイ証言者は無し。

さあ！犯人はだ～れだ？」

特子「んん…けっこうムズいぞこの問題…

でもまあ、２番は犯人じゃ無いな。」

カチョー「お、おい、コウ…これって…」

コウ「まあまあ、カチョー。それで特さん、その根拠は？」

特子「だって、名前が普通過ぎるんだもん。それにアニメ好きに悪い人は居ない！もし、もしもこの人が犯人なら、私はこの人をコ○ス！

ってね。冗談ですよ～。１番の理由は２番目だってこと、なぞなぞの３卓問題において、２番が正解の確率は、限りなく低いって、何かに書いてあったような、無かったような…」

コウ「それじゃ、１番か３番て事ですね？」

特子「そ～なんだけどな～、決め手がね～、お願いコウちゃん、ヒントちょうだい～。」

コウ「しょうがないですね。大ヒントですよ。この３枚の紙に、それぞれの自供内容を書いています。それを元に犯人を特定してください。」

特子「おお～！なにやら本格的～！」

カチョー「お、おいコウ…大丈夫か…？」

マイ「まあまあ、カチョー、面白そうだから見てましょ。」

特子「ん～、はいはい…なるほどなるほど。ん…？」

カチョー「ど、どうした？特子？」

特子「フフフ、危ない危ない、コウちゃんの引っ掛けに騙されるところだったわ。」

ミル「引っ掛け？」

特子「そうでしょコウちゃん。２番の山田三郎が犯人なんでしょ？」

コウ「その理由は？」

特子「だってこの人だけ、つじつまが合わない事言っているもの。」

カチョー「つじつまが合わない？どういう事だ？『山田』はお前と同じぐらいのアニメオタクで、深夜アニメもほとんど録画して見てるくらいなんだぞ。犯行時刻に放送していたアニメもいつもと同じ時刻に始り最後まで見ていた。変わった事は無かった。供述したアニメの内容も本編と間違い無かった。と書いてあるだろ？」

特子「そう！それなんですよ！『変わった事は無かった』が『変わって』るんです。

確かに深夜アニメは膨大な数ですから録画して見ないといけなんだけど、あまりの多さに『オープニング』と『エンディング』はすっ飛ばして見るんです。

この犯行時刻のアニメ、私もリアルでみてましたけど、この日から『オープニング』の歌詞が２番に変わっていたんです。」

私と同じぐらいのアニメオタクなら、その事に気づかないはずがない！と、いうことは『山田』はその時刻に部屋には居なかった。急いでアリバイを作るため、録画しておいたアニメの本編だけを見たんです！

ど～です？コウちゃん！降参（こうちゃん）ですか？なんちゃって。」

コウ「だ、そうですよ。カチョー。」

カチョー「う、うん…ミル…」

ミル「わかってますよ。カチョー。一課にそれとなく教えるんでしょ。」

カチョー「くれぐれもそれとなくだぞ…それとな～くな…」

特子「あれ？ミルさんお出掛けですか？

それよりコウちゃん！正解なんでしょ！」

コウ「さすがです！特さん！大正解ですよ。」

特子「へっへっへっ～！なぞなぞマスターを舐めんじゃないわよ！

他には無いの？他には？」

コウ「欲しがりますね～、じゃあ、これなんか…」

そして数日後…

コウ「やっぱり『山田』が犯人だったみたいですね？」

カチョー「ああ、オープニングの事を問いただしたら、「あ！そう言えば新しい曲に変わってた。」と墓穴を掘ったらしい。

動機は騒音問題で、前々からトラブっていて、事件の日も音が大きいと文句を言ってきたらしいんだ。それでカッとなってな。」

マイ「『極悪』みたいにヘッドホンをすればいいのにね。」

ミル「まあ、ひとそれぞれ『こだわり』があるものなのよ。」

ジミー「ふふ、今回は出番が無かったな…」

「ガチャ！」

特子「おっはよう！ごっざいま～す！今日も１日元気に『なぞなぞ』しましょ～！！！」

カチョー「お前は仕事しろ～～～！！！！」

おしまい

コウ「次は、この『なぞなぞ』なんですけど…」

特子「どれどれ…」