人殺しのヤカタ。

真城夢歌

人殺しのヤカタ

 俺たち六人は、入った人は二度と帰っては来られないといわれる館にいた。

 今日、学校でその話を聞き、どうも胡散臭いと思った俺ー宮島ーは寺内の誘いにより、友人の寺内、川崎、池中、楠木、横川と共にその館を調べることにしたのだ。

 

 「準備はいいな。」

 俺の言葉に皆が静かにうなずいた。

 大きな扉を開けると、ギギギと音がした。とても古く、今にも壊れそうな館だ。

 俺らは、自分たちで持ってきた懐中電灯をつけると、俺と楠木は二階、横川と寺内は一階、川崎と池中は地下の三つに分かれて捜索することにした。

 軋む階段を上がり、まず一番近くにある書斎を調べた。

 本棚に並ぶ大量の本に囲まれ、もう何年も使われていなさそうな暖炉や社長のような机を楠木と俺で手分けして捜索した。

 「宮島、これ。」

そう言って見せてきたのは家族三人でピースをして映った古い写真だ。ここの家の持ち主だろうか。

 「こんなに幸せそうなのに、何かあったのかな。」

そう言って楠木は机の角を指した。血痕だ。誰かの血がこびりつき、赤く染まっている。

 俺は息をのむと、楠木の腕をつかむと書斎からでた。血痕を見ていたら気分が悪くなったの。

 

 「宮島!」

 一階からそう叫ぶ声が聞こえた。横川の声だ。

「お、なんか見つかったか?」

俺は呑気にそう返すと「いいから早く来てくれ」と寺内はいった。

 ただ事ではなさそうなので、俺は一気に階段を駆け下りた。

 寺内たちは泣きじゃくる池中の背中をさすりながら地下を指した。

 俺と楠木はゆっくり地下に降りてライトを照らした。

 そこにいたのは血みどろの臓器がぐちゃぐちゃに飛び出した状態になった川崎の姿だった。

 楠木は悲鳴を上げて一目散に階段を駆け上がり、一階へ戻った。俺もその後をついていき、池中に何があったのか聞きだすことにした。

 「池中、何があったんだ。」

 池中は首を横に振った後、言葉を詰まらせながら「わからない。」といった。

 「わたし、と瑞穂(川崎)で二手に分かれて、調べたの、ひっく、そしたら、瑞穂の悲鳴が、聞こえて、ひっく、駆け付けた時には、ひっく、もうこの状態、出。」

 俺たちは、すぐに警察と救急車を呼ぼうと一斉にスマホを取り出した。でもおかしかった。スマホは暗い画面のまま動くことはなかった。

 「ぼ、僕、ここから出て助けを呼んでくるよ。」

 そう言って寺内は玄関の方へとかけていった。その直後だった。寺内の悲鳴が聞こえた。

 そして、寺内の後を追った横川の悲鳴が聞こえた。

 俺たちは悲鳴のする方へかけると、血まみれの二人の姿があった。

 楠木と川崎は悲鳴を上げて泣いた。

 「なんで、なんで私たちがこんな目に合わなきゃいけないのよ!」

川崎は狂ったように叫びドアノブを回した。

「な、なんで!?なんであかないのよ!」

川崎は「助けて!」と泣きながら叫び、ドアをたたくが、一向にあく気配はなかった。窓からの脱出を試みるも、開くことも無ければ、壊れることもなかった。

 「もういや、怖い、怖いよ。助けて。」

 川崎は地下へ走った。

 「おい、一人になるのは危険だ!」

後を追おうとする俺の裾を楠木が引っ張った。

「危険だよ、宮島までいなくなったら私…。」

「でも。」と俺が言うと、「お願いいかないで。」と楠木はいった。

 俺は「わかった。」と言って楠木をちょっと離れた椅子に座らせた。


 「これからどうしようか。」俺がそう言うと、「早くここから抜け出したい。」と楠木は答えた。恐怖のあまり死んだような顔になって待っていた。無理もない、友達がいきなり三人も死んだら誰だってショックだ。

 俺は楠木の頭を軽くなでると、「大丈夫。」と一言だけ言った。

 池中が気になった。

 それは楠木も一緒だったようで、俺らは地下へと向かった。

 懐中電灯を向けると、そこにいたのは川崎ではなく、川崎と同じ状態にされた池中の姿があった。

 「いやあああああああ!」

 楠木は悲鳴を上げるとまたさっきのように階段を一気に上がった。

 追いかけようとした瞬間、何かが着られるような音がした。

 急いで後を追うと、首のない楠木の姿があった。

 そのすぐ横に人がいた。こいつがみんなを殺した犯人?右手には包丁が光る。そんな馬鹿な、ありえない。そう思っても現実を認めるわけには行けない状況だった。そこにいたのは二番目に死んだ血まみれ寺内の姿だった。

 「なん…で。」

 何もできずにただ突っ立ている俺を見てにっこりとわらった。

 

 「ここの家はね、僕が四歳の時まで住んでいたんだ。」

 寺内は俺のすぐ目の前まで来てそう語る。書斎で見つけた写真は、寺内とそのご両親だったのか。

 「それでね、四歳の時に僕の家に強盗が入ったんだ。僕はうまく隠れたけど両親は死んだんだ、目の前でね。」

 寺内は笑顔のまま手についた血をなめた。

 「その瞬間、僕は両親から飛び散り僕についた血を見て思ったんだ。なんて美しいんだって。血の味が忘れられなくてね。今も転校を転々と繰り返してはここに誘っているんだ」

 そういった瞬間僕の体に鋭い痛みが走った。なんで?寺内は俺の前にいる。背中を刺すのは不可能だ。

 俺はゆっくり後ろを向いた。

 

 俺には予想外の出来事が二つ起きた。

 一番目は、犯人は友人であった寺内だったこと。

 二番目は…

「く、楠木…?」

どさっと倒れこんだ。

 そう、楠木が寺内の共犯者だったことだ。

「彼女は僕のことを唯一わかってくれるんだ。今回は手違いで同じ学校に転校しちゃったんだけど。」

 そういえば、楠木も転校してきたんだっけ。

 「彼女と僕は同じ孤児院に入っていたんだ。彼女の両親も殺された。そして僕と同じ感情を持った。そして彼女と協力して自分たちの欲望を解消させることにしたんだ。」

そう言うと、寺内は包丁を構えてほほ笑んだ。

 「じゃあ、また来世でいいもの見せてね。」

そう言って包丁を俺に振り下ろし、意識が途絶えたのであった。


 「怖いよー、帰ろうよ。」

とある女子はそういった。

 「何言ってんだよ、すっごく興味深いじゃないですか。」

とある男子は、下がった眼鏡を上げながらそう言った。

 「もしかしてあなた方もこの館に入られるんですか?」

別方向から来た六人組の先頭にいた女子がそう僕らに聞いてきた。

 「そうですよ。良ければご一緒しますか。」

 僕はそう聞いた。

 彼女たちはこそこそ話始めると、また彼女は

 「女子六人では心細かったので良ければご一緒させて頂きます。楠木結といいます。」

 「僕は寺内そらです。」

 軽く自己紹介をした後、談笑しながら館にに入る。


 もうでられないとも知らずに。


 

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人殺しのヤカタ。 真城夢歌 @kaguya_hina

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